2020年11月14日土曜日

202011114【架空の話】・其の45

この市電こと路面電車からは何やらエキゾチック(異国情緒)あるいはノスタルジック(懐旧的)な感覚が惹起せられ、現在となっては慣れてしまったものの、それでも私は路面電車が走る西日本の街が何となく好きである。

T文館通り駅に着いたのは午後6時40分過ぎであり、金曜日ということもあり、繁華街らしく賑わっていた。私はBに「じゃあ荷物だけ置きたいから、ちょっと**ホテルに寄ってチェック・インだけしてきてもも良いか?」と訊ねると「ああ、**ホテルは道を渡ってすぐそこだから、問題ないよ。」とのことであり、一先ずホテルに向かうことにした。以前、編入試験の際に宿泊したホテルよりも若干安かったため今回は**ホテルに予約をしたが、着いてみると、たしかにつくりは前の宿泊ホテルよりも若干古く感じられたものの、掃除が行きわたっているのか全体的に清潔な感じがした。そしてフロントにてチェック・インを済ませ鍵を受け取ると、部屋は7階とのことであった。エレベーターにて部屋に行こうとすると、Bが「地元のこうしたビジネス・ホテルの客室には、これまで行ったことがないから、ちょっと部屋を見せてよ。」と云ってきた。断る理由もないことから「うん」とだけ云って、エレベーター前の立ち位置を少しだけずらした。やがてエレベーターが着き、7階のボタンを押すと、最上階は9階であるらしく「今回はまたやけに上階に部屋をとってくれたな」と独り言のように云うと、Bは「うわ!何だか地元のビジネス・ホテルに入るって面白い感覚だな・・。」と、さきほど銀行からの電話を受けていた態度とは異なり、多少年齢不相応とも云える感じで、はしゃぎ気味であったが、特に気にはならなかった。自分も同じ環境にいれば、はしゃぐような真似はしないという保証はどこにもないからだ・・。

ともあれ、じきに7階に着いて薄暗い廊下を歩き部屋に向かっていると、Bが「ああ、こっち側の部屋だとT文館側じゃないから、あまり景色は良くはないと思うよ。」とのことであったが、まあ、今回の場合、部屋からの眺望すら気にしていなかったことから「まあ、今回は普通に宿泊できれば良いから・・」と控えめに云うと「うん、まあ、たしかにそうだけれどね。」と私につられたのか、静かな調子で返事をしてきた。

部屋に着きドアを開けると、すぐにルームキー・ホルダーを差し込む穴が壁に設置してあり、そこにホルダーを挿入すると自動的に室内照明が点灯するようになっており、私はこれまでにも経験したことがあったが、Bの方は「へえ、こりゃすごいな・・。」と感心していた。

やがて荷物を客室に置き、またすぐに部屋から出ると、となりでBがスマホの操作をはじめ、そして、そのままでエレベーターに乗り、降りてからすぐに電話をかけはじめた。すぐに繋がったようであり、何やら二言三言先方と話してから「それじゃあ、大体5分後に、着くようにしますので、よろしくお願いします。」と云って話を終えた。そして私に「うん、予約は出来たから、ここからは1、2分でお店に着くから、ちょっとトイレに行ってくる。」と言い残して、そそくさとフロントロビー横のトイレの方に行った。」しばし待っているとBが戻ってきて「どうもありがとう。じゃあ行こうか。」と正面玄関からホテルを後にしてT文館の繁華街の方に向かって歩き、そこを過ぎた交差点を渡ると、また飲食店が並んでいたが、その中の一つのお店に入ると、店内から鳥を焼く薫りと会話の声が聞こえてきた。どうやら繁盛しているお店のようであり、Bによると「このお店は本店は霧島の方にあり、こちらのお店も最近開店したのだけれど、なかなかの評判なんだよ。」とのことであった。また、気のせいかもしれないが、たしかに店内の鳥を焼く薫りは、それまで首都圏で慣れてきた焼き鳥の匂いと、同じ鶏ではあれ少し違うように感じられた。その後、このお店は、さきの霧島本店にも何度か足を運ぶことになったが、当初の感覚は、少しオーバーな表現ではあったかもしれないが、あながち間違いでもなかったように思われる・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!






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