私は先ず、新卒として三井観光開発株式会社に入社し、その事業所である複数ホテルに勤務し、とりわけ、南紀白浜の白良荘グランドホテルでの勤務の際には、当地の歴史文化や自然環境に興味を持つようになり、やがて、そこで得られた経験を明晰化、整理することを望むようになり、そして当地にある大学の大学院修士課程に進学し、地域学を専攻しました。この当時は、それまでの人生で最も書籍を多く読んだ時期であり、また、その前後において、内面の何かが変化したように感じられました。修士課程を修了しますと、今度は開業した実家での勤務が出来るように、歯科技工士となるべく、都内の歯科技工専門学校に進みました。こちらの専門学校は、さまざまな材料を用い、自らの手により、各種、歯科補綴装置の作成を学ぶ場所であり、それまでの人文的な思考とは異なる、より身体性に基づいた理解が求められました。そして、こちらも卒業して、歯科技工士免許を取得しましたが、以前に「今後は歯科技工士も大学院に進まなければ…』とのご意見に接し、また私の方も、人文系ではないが、こちらも、さらに研究したいと考えるようになり、歯科技工士の進学先として妥当と云える歯科生体材料学分野の大学院博士課程に進学しました。
当初、この分野での諸研究は大変興味深く感じられ、私の方も、それなりに研鑽努力をして、実際に学会で優秀発表賞を何度か受賞させて頂きました。しかし、2010年暮れに指導教員である師匠が退職され、その後、嫌なことも少なからずありましたが、周囲の方々からのご支援もあり、紆余曲折の経緯を経て、どうにか学位取得にまで至ることが出来ました。
こうした複数研究分野(地域学・歯科生体材料学)を横断するなかで、私は一つの研究分野での言語体系(ボキャブラリー)に依拠しない考え方を無意識のうちに育ててきたのではないかと思われます。思考の幅や深さは、運用可能なボキャブラリーの量と密接に関連します。そして、一つの言語体系のなかで考える方々は、その言語体系、すなわち分野を超える批判力や、その先の創造性を持ち得ることは困難であると考えます。換言しますと、ある言語体系を批判し、それを乗り越える為には、異なった言語体系を知る必要があるのではないかと云うことです。
そこから、自らの紆余曲折を経た経緯を振返ってみますと、人文系と歯系、抽象と具象と云った異なるボキャブラリーを要する分野に身を置き、その都度で考えを整理したり、結節させたりしながら、遅々としたものではあるかもしれませんが、自分なりに理解を深めてきました。社会人時代のホテルフロントでの勤務経験は、地域の歴史や文化に対する興味関心を惹起させ、その後、地域学を学ぶ経験では、さまざまな構造を考える枠組みを認識し、さらにその後、歯科技工および歯科理工学での学びからは、さまざまな試料作製や機器を用いる実験により、具体的な現象を理解する態度を育てました。また、これらは異なった分野である一方、深層では互いに結節、補完し合うものであると云えます。また、冒頭で述べました、当ブログの投稿記事数と関連すると思われることは、実験のために作製した、さまざまな条件での試料数が合計で10000を超え、さらに、予備実験段階のものをも含めると、おそらく20000を超えていたと思われることです。そして、この程度の試料を作成してきたことは、前述の投稿ブログ記事数とも関連があるように思われ、また、具体的な事例を積み重ねて全体像に迫るという帰納的なアプローチを好むと云う、自らの傾向を示しているのではないかと思われるのです。実験に用いる試料の作製と、ブログ記事の作成は、一見しますと、全く異なる営みであるかもしれませんが、それらの背景にあるスタンスは意外なほどに共通しているのではないかと思われます。
こうした複数の分野・言語体系に身を置く経験とは、原初的な科学の態度や精神と云い得る「物から出て物へ返す」つまり、経験と観察を重視しながら、異なる複数分野の言語体系を自在に横断する態度とも通じるものがあるように思われるのです。さらに、そこから、東洋の伝統的な思考法がそうであったように、私は人文系、歯系といった複数の分野を、異なったものとしてではなく、あるいは「いい加減」とも評し得るのかもしれませんが、互いに往来可能なものとして捉えているのではなかかと思われるのです。
そこから、現在感じている憂鬱さや疲労感とは、複数分野を往還してきた者が、一つの区切りに至った際に覚える種類のものであるとも思われるのです。とはいえ、これはおそらく、恒常的なものではなく、当ブログを含めた、これまでの経験が統合されつつある兆候であるようにも思われるのですが、さて、実際のところはどうなのでしょうか?いずれにしましても、今しばらくは基本的に休止しますが、今後、また回復してきましたら、次はどの方向に進むのかは不明ではありますが、また焦らずに、遅々とした更新頻度ではあれ、当ブログをさきに進めたいと考えています。そして、今回もここまで読んでいただき、どうもありがとうございます。
ISBN978-4-263-46420-5
*鶴木クリニックでのオペ見学につきましても承ります。
連絡先につきましては以下の通りとなっています。
メールアドレス: clinic@tsuruki.org
電話番号:047-334-0030
どうぞよろしくお願い申し上げます。