2024年8月14日水曜日

20240813 太平洋戦争を題材とした諸作品から思ったこと

 おかげさまで、昨日投稿分の記事は、投稿翌日としては比較的多くの方々に読んで頂けました。これを読んでくださった皆さま、どうもありがとうございます。また、そうした事情から気を良くして、本日もオリジナルにて記事作成を試みることにしました・・。そして、その題材は、昨日の投稿記事にて述べた加藤周一著「日本文学史序説」にしようと考えていましたが、今は8月15日の敗戦記念日に近いということもあり、太平洋戦争を題材として扱った各種書籍や映画などを題材としていきます。

 一言で太平洋戦争と云っても、1941~1945と四年近くも続き、また、その戦域も北はアリョーシャン列島から南はジャワやニューギニアまでと広大であり、さまざまな戦局で数多くの様相があったものと考えます。さて、そうした中で私が先ず挙げたいのは、大岡昇平による「俘虜記」です。

 こちらの作品は著者ご自身の従軍経験に基づくものであり、戦況も厳しくなった1944年春にフィリピンに送られ、その後、ルソン島の南に位置するミンドロ島の守備任務に就いて、しばらく経った12月に同島に米軍が大挙押し寄せました。それに対し、駐屯していた日本軍は敗退するのですが、その際、大岡昇平は体調を崩しており、撤退する部隊からはぐれ、単独で行動をとっていたなかで米軍の捕虜となりました。その後は、体調の回復とともに、診療所棟から一般の捕虜収容所に移され、そこでの、さまざまな出来事や生活の描写に、現代の我が国の社会にも通底する「何か」が少なからず描かれているのと思われるのです・・。そしてまた、その当作品から看取される現在にも通じると思しき要素とは、全て、いや殆どの場合、たとえ、それを認識したとしても、容易に改良・改変などは出来ないと思われることから、当作品は、読み進めるに伴い、徐々に暗鬱とした気分になってくるようなところがあると云えます・・。

 しかしそれでも、その容赦のない率直な描写には、読み手を惹き込ませるものがあり、それでもやはり、最後まで「救い」といったものはありません・・。また、同じくフィリピン戦域に従軍していた山本七平による旧日本軍を題材とした諸著作からもまた、さきの大岡昇平とは異なるものの、我が国社会において広く認められる、さまざまな性質について言及しており、これもまた、読み進めていますと、さきの「俘虜記」と同様、暗鬱とした気分になってきます・・。

 いや、おそらく、太平洋戦争末期の我が国を題材とした著作・作品で、読んでいて楽しくなるようなものは稀有であるのだと思われますが、その視座から、他の著作を検討してみますと、ジョン・ト―ランドによる「大日本帝国の興亡」全五巻のうち、真ん中の三巻目からは、南太平洋のガダルカナル島での戦況の推移、そして玉砕に続き、さらに日本本土に近いサイパン島の玉砕で巻を終えるのですが、さらに先の四巻目から最終五巻終盤にまで至ると、さらに悲惨な描写が続き、眉間に皺が入り、自然体で読み進めることが困難になってきます・・。しかし、たとえ、そうであったとしても、こうした史実を扱った著作や記述を読み、当時のさまざまな様相を知ることは、我々日本人にとって(きわめて)重要なことであり、あるいは、戦後79年となり、当事者世代の方々がもう既に殆どご存命でなくなったことから、さきのような「陰惨にして重要な記憶」が社会で共有することが困難になっていることを背景として、昨今の世界各地での争いや緊張の高まりが生じているのではないかとも思われるのです・・。そこで我々後発の世代が、こうした世界規模での潮流に対抗するためには、たとえ当事者世代の生の記憶でなくとも、かつて、こうした悲惨な歴史・史実があったことを忘れないようにする、ほぼ無意識化、ルーチン化された活動があるのではないかと思われます。そしてまた、おそらく、そうした所為を個々の義務感のみに訴えても、継続することは困難であろうと思われることから、そうしたことを、より本能に近い領域で駆動出来るような、ある種変った方々が社会に一定数いることが、思いのほかに重要ではないかと思われる次第です。そして、今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます!

一般社団法人大学支援機構


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ISBN978-4-263-46420-5

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