2021年7月10日土曜日

20210710 昨日投稿の引用記事の閲覧具合から思ったこと「国家の背景」

まずはじめに、このたびの大雨により、被害を被った九州・中国・四国各地域での被害が出来るだけ少なく、そしてまた同地域での各種生活インフラの出来るだけ早期の復旧を祈念いたします。

さて、昨日投稿の書籍からの引用記事は、タイムリーであったためか、思いのほか多くの方々に読んで頂けました。日頃あまり耳にする機会のない国であっても、その国家元首が国外から侵入してきた武装グループにより自宅にて殺害されるということは、現代においても驚くべきことであり、その背景についてもう少し知りたいと思うことは特に不自然ではないと考えます。

その意味において、海外の動画も気軽に視聴できる動画サイトとは、やはり、便利なものであり、20年ほど前と比べますと隔世の感があると云えます。ともあれ、そうしたことから、さきに述べたハイチの歴史的背景概要も割と気軽に知ることが出来るのですが、それと昨日の引用書籍の記述を加味して考えてみますと、ある程度の期間、植民地であった国や地域などは、その後、困難な歴史上の途を歩むことが多いのではないかと思われました。

さらにもう少し具体的に考えてみますと、それは植民地時代の宗主国の統治の仕方などからも少なからぬ影響を受けるのではないかと思われます。そして、そうした視座から考えますと、このカリブ海に浮かぶエスパニョーラ島の西部を領有するハイチ共和国は、当地に入植したフランス人によって奴隷としてアフリカ大陸から連れてこられた黒人達が18世紀末頃に反乱を起こし、19世紀初頭にはラテン・アメリカ、カリブ海地域にて初めて設立された黒人主権による独立国となった歴史があるのですが、独立後は、周囲の白人統治の国家、植民地国との不仲、国内政治の不安定などから、国家運営は上手く行かず、20世紀初頭、アメリカ合衆国による数十年にわたる統治の後、現地人元首による統治が行われたが、その統治は決して民主的とは云えないものであり、その後、更に政治は腐敗し、世襲二代目の元首が国内の反発から国外へ逃亡し、新たな元首が立てられたが、そこからの政治も、かねてよりの政情の不安定を緩和するものではなく、そして昨今の事件に至ったといったといった粗い経緯があります。

こうした歴史の概要を眺めてみますと、今更ながら、白人による植民地が当り前であった時代に、先ずは、その地の先住民を根こそぎにされて、さらに、奴隷として連れて来られた人々に対しての長年にわたる搾取(それ以外何と表現すればよいのでしょうか?)が行われ、そしてこうした数世代にわたる搾取によって精神的にも疲弊した人々を国民として多く抱えた国が、現在において上手く運営されることは、やはり極めて困難ではないかと思われるのです・・。

そして、ここまで書いていて、先日読了しました松本仁一著「カラシニコフ」Ⅰ内の記述が思い出されましたので、以下に引用します。

pp.168-170

『フォーサイスのいう「失敗した国家」とは、国づくりができていない国、政府に国家建設の意思がなく、統治の機能が働いていない国のことだ。彼はソマリアを例にあげた。

「われわれヨーロッパ人が、アフリカ地図の上に勝手に線を引いただけなのだ。「ここはエチオピアでもないし、ケニアでもない。ソマリアとでも呼ぶか。そう、首都はモガディシオがいいだろう」といった調子でね」

国境線は西欧植民地勢力の力関係で決まった。住んでいる人々には意味のないものだった。1960年、植民地勢力はソマリアから引き揚げる。しかし、英領、イタリア領時代の国境線はそのまま残ってしまった。

意味のない線の中で、一つの国の国民であるという意識を持ったり、自分たちの国をつくらなければならないという意欲を持ったりすることは難しいことだった。人々は国家や政府に無関心になる。それをいいことに、新しい指導者は暴力で人々を抑圧し、利権をむさぼった。ソマリアのバーレ元大統領、赤道ギニアのマシアス元大統領、ヌゲマ現大統領・・・。

銃を手にしたものが、利権の集中する首都とその周辺を支配する。統治が国のすみずみまで行き渡ることはない。

「独立後ソマリアにあったのは部族や軍閥だけだった。そのうちのひとつが国と呼ばれ、国連で議席を持った。実際にはそこに国家などないにもかかわらず。」

小説「戦争の犬たち」のテーマのひとつが「失敗した国家はわずかな武力でかんたんに崩壊する」ということであるなら、大統領官邸を奪い取ればそれで十分だったわけだ。「失敗した国家」のほとんどでは武力のみに支えられた独裁支配が続き、政府に国づくりの意欲がない。利権争いや少数派の不満から、紛争が頻発する。社会はますます安全でなくなり、住民は生命の危険にさらされることになる。』

さて、アフリカとカリブ海の島といった地域の相違はありますが、その一方で相通じる部分もまた、あるのではないかと思われます。そしてまた、そこから近現代の我が国の経緯を考えてみますと、どういったものが見えてくるのでしょうか・・。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!


日本赤十字看護大学 さいたま看護学部 


一般社団法人大学支援機構



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ISBN978-4-263-46420-5

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