まず、歯科治療において用いられる材料は、大きく分けて4種に分類されます。それは有機材料、無機材料、金属材料、そして複合材料です。古くからそれぞれの材料は、特定の役割を果たしてきました。たとえば、紀元前の精錬・冶金技術が未熟であった時代では金は化学的に安定して加工しやすく、また比較的得易いことから、歯の修復に材料として多く用いられましたが、現代では貴金属価格高騰のため使用が減少しています。
前述のように18世紀の西欧においては、新大陸から齎された砂糖により虫歯が急増しましたが、当時は虫歯と砂糖との因果関係すら理解されておらず、歯科治療は主に抜歯でした。当時、この抜歯を専門とする「歯抜き師」という職業があり、これは前世期(17世紀初頭)のミゲル・デ・セルバンテスによる文学作品「ドン・キホーテ」にも登場しています。これがやがて、口腔内全般を扱う「歯の治療者」という職業へと変貌を遂げ、これが現代の西欧文化における歯科医師の起源となります。
さて、先述の18世紀はまた、西欧にて磁器の製造技術が確立した時代でもありました。ドイツの錬金術師ヨハン・ベトガーが磁器製造に成功して、これが歯科材料にも応用されました。また、英国のウェッジ・ウッド社も、磁器の製造技術を応用して陶歯を製造して、その美しさで人気を博しました。この陶磁器製造技術による陶歯は、入れ歯にも使われ、それは当時の基準では、美しさと機能性を兼ね備えたものでしたが、技術的には不完全なものでした。たとえば、アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンが用いたとされる入れ歯はバネで上下を繋ぎ、咬筋を用い食いしばらないと外れてしまうようなものであったとされています。
一方、我が国では、もっと早くから入れ歯が用いられていました。現存するものから、15世紀末から16世紀初頭にかけて、柘植(つげ)を材料とした木製の入れ歯が作られ、職人たちによって手作業で精巧に彫られてたことが分かっています。この技術には、我が国古来の彫刻や仏像制作と共通する部分が少なからずありました。とはいえ、19世紀後半から、明治新政府の文明開化、欧化政策により西洋の歯科医療が導入されると、さきに述べた我が国古来の木製入れ歯作成技術は衰退してしまいました。
近代に入ると、歯科材料の研究開発はますます進み、有機材料(レジンなど)や無機材料(セラミックスなど)、そして複合材料が広く使用されるようになりました。特にセラミックスは、天然歯に近い色調や耐久性を持ち、現在でも審美性が求められる治療においては主流の材料と云えます。また、現代の歯科医療では、3Dスキャン技術などのコンピューターを用いた所謂「デジタル歯科」が普及して、それにより精度の高い補綴装置の製造が可能となっています。
こうして、歯科材料は古代から現代に至るまで、その時代の技術と社会背景とに応じて進化発展してきました。歯科医療とは、よく云われるように「自然科学とアートが融合した分野」であり、そこでの材料の選択とは、機能性のみならず、審美性や個々の患者さんの要望に応じて変化し続けていると云えます。そして、その中でも特に(現代の美的感覚において)審美性が高い材料と云えるセラミックスは、古来からの磁器技術を応用して進化発展を遂げてきたものであることから、今後もさらに洗練されていくものと考えます。
*ChatGPTによる添削後
歯科材料の発展の歴史は、人々の生活様式やそれを支える技術の進化と密接に関連しています。古来より用いられてきた歯科材料は、当時の社会的・技術的背景に強く影響を受けていました。特に18世紀の西欧では、砂糖の普及により虫歯が急増し、これが歯科治療の需要を高め、歯科材料の進化を促したといえます。
まず、歯科治療において使用される材料は、大きく分けて有機材料、無機材料、金属材料、複合材料の4種類に分類されます。それぞれの材料は古くから特定の役割を果たしてきました。たとえば、紀元前の精錬・冶金技術が未熟だった時代には、金が化学的に安定して加工しやすく、比較的得やすいことから歯の修復材料として多く使用されました。しかし、現代では貴金属価格の高騰により、使用が減少しています。
前述のように、18世紀の西欧では新大陸から齎された砂糖の普及により虫歯が急増しましたが、当時は虫歯と砂糖との因果関係すら理解されておらず、歯科治療の主流は抜歯でした。この時代には抜歯を専門とする「歯抜き師」という職業が存在しており、ミゲル・デ・セルバンテスの文学作品『ドン・キホーテ』にもその存在が描かれています。その後、「歯抜き師」は口腔内全般を扱う「歯の治療者」へと発展し、これが現代の西欧文化における歯科医師の起源となりました。
また、18世紀は西欧において磁器の製造技術が確立した時代でもありました。ドイツの錬金術師ヨハン・ベトガーが磁器製造に成功し、その技術が歯科材料にも応用されました。さらに、英国のウェッジウッド社は磁器製造技術を応用して陶歯を製造し、その美しさで人気を博しました。この陶歯は入れ歯にも使用され、当時の基準では美しさと機能性を兼ね備えたものでしたが、技術的には不完全でした。たとえば、アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンが使用したとされる入れ歯は、バネで上下を繋ぎ、咬筋を使って食いしばらないと外れてしまうような構造だったと伝えられています。
一方、我が国ではさらに早い時期から入れ歯が使用されていました。現存するものから、15世紀末から16世紀初頭にかけて、柘植(つげ)を材料とした木製の入れ歯が作られ、職人たちによって精巧に彫られていたことが分かっています。この技術には我が国古来の彫刻や仏像制作との共通点が少なからずありました。しかし、19世紀後半になると、明治新政府の文明開化や欧化政策により西洋の歯科医療が導入され、我が国古来の木製入れ歯技術は衰退しました。
近代に入ると、歯科材料の研究開発が進み、有機材料(レジンなど)、無機材料(セラミックスなど)、複合材料が広く使用されるようになりました。特にセラミックスは天然歯に近い色調と耐久性を備えており、現在でも審美性が求められる治療において主流の材料といえます。さらに、現代の歯科医療では3Dスキャン技術などのデジタル技術が普及し、これにより精度の高い補綴装置の製造が可能になっています。
このように、歯科材料は古代から現代に至るまで、その時代の技術や社会背景に応じて進化・発展してきました。歯科医療は「自然科学とアートが融合した分野」といわれるように、材料の選択には機能性だけでなく、審美性や患者の要望が考慮されます。その中でも特に審美性に優れるセラミックスは、古来からの磁器技術を応用して進化を遂げてきた材料であり、今後もさらなる洗練が期待されます。
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祝新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5
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