このことは、これまでに何度か当ブログにおいても述べてきましたが、私の場合、強くそうしたことを感じたのは2001年に北海道から南紀白浜へ転勤になった時のことでした。4月の南紀白浜は、翌月初旬には海開きを控え、もう既に陽光は眩しく温暖な陽気となっています。また、街の所々には温泉の湯気が立ち上り、そして海と空が何とも蒼いのです。
しかしながら、コトバでは上記のように表現しましたが、そうした情景には、あくまでも、大気の匂い、薫りのようなものが付随しており、それが我々の精神に対して何らかの作用を及ぼすのではないかと思われるのです・・。
そして、そうした精神への作用が、若いうちであれば、我々の価値観の変化に及ぶことも度々あるのではないかとも思われます。
私は首都圏にて育ちましたが、その後、さきに述べたように北海道、南紀白浜そして和歌山市、市川市、鹿児島市と住んできましたが、やはり西日本いや西南日本はじめての経験が和歌山、南紀白浜であったことは、大変大きかったように思われます。彼の地の四季を通じて変化する大気の薫りやら、目に触れる南方的な植生の樹々植物は、河東碧梧桐ではないが、本当に「木蓮が蘇鉄の側に咲く所」であり、そうした環境の中でしばらく暮らしていますと、それまでの首都圏の文化全般が最先端で正しいと半ば無意識にて考えていたことが、本当であるのか、よくわからなくなってくるのです。
おそらく、こうした感覚はしばらく住んでいると生じてくるもの思われますが、そのままの状態でしたら、やはり落ち着かないことから、苦しいものもあるのでしょうが、とはいえ、勝手ではあれ、その地域に対して、そうした思いを抱くこと自体は特に問題ではなく、むしろ、良いことであると思われます。そして、その在住の過程で、自然に、自分なりの落ち着くための言説といったものを編んでいくのではないかと思われるのです・・。
つまり、本来、人が生まれ育った場所とは異なった地域に住み、そしてその地域からの影響を受けるということは、総じて短い期間による変化ではなく、本当に漸進的なものであり、その効果とは、数日、一週間程度滞在の観光によるものとは、本質的に異なるのではないかと思われるのですが、さて、実際のところはどうなのでしょうか?
今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
順天堂大学保健医療学部
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ISBN978-4-263-46420-5
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