pp.170-172より抜粋
ISBN-10 : 4022615753
ISBN-13 : 978-4022615756
旧ソ連は1974年、口径5.4ミリのカラシニコフ「AK74」を開発した。NATO(北大西洋条約機構)が口径を小さくしたのにあわせた動きだ。銃の基本構造はまったく変わらない。しかし弾丸が軽くなり、兵士一人がより多くの弾丸を携行できるようになった。日本の自衛隊の銃も、「豊和64式」は7.6ミリ口径で「89式」は5.6ミリだ。
AK47とAK74の違いは口径の大きさなのである。AK74の弾丸は一個3.4グラムと、AK47の半分以下だ。これまで200発しか携行できなかったとすれば、倍の400発持てるようになるのである。「自動小銃のスプレー的使用」の時代に適応した改良だった。
口径が小さくなった分、敵に与える打撃が落ちたという意見がある。心臓や頭部に当たらないかぎり、相手は死なないからだ。
しかし茨城県にある自衛隊武器学校で、幹部の一人は、今の戦争では小口径の方が効果的なのだといった。
「口径の大きい弾丸は力が強く、即死の率が高い。逆に腹部などに当たると貫通してしまって大きな損害にはならない。小さい弾丸は力が弱いため即死率は低い。軽いため腹部などに入っても貫通せず、体内で回転して周囲の臓器をずたずたに破壊する。当然、痛みはひどい」
撃たれた味方兵士が死んでしまった場合、部隊は戦闘行動を続けることができる。遺体はあとで収容すればいい。しかし重傷を負ったら後送しなければならない。一人を後送するのに、かついだり抱えたりで三人ほどの同僚の手がかかる。一個分隊を約十人として、一人が負傷したら、本人をづくめて四人が戦線から離脱することになる。戦闘能力は半分近くに落ちてしまう。
痛みで泣き叫ぶので、周りの兵士は気になって放っておくことができない。かならず後送することになる。「弾丸が小さいというのは、本当は残酷なことなのです。」とその自衛隊幹部はいった。