2024年7月26日金曜日

20240725 本日の慶應義塾史展示館での企画展示室の拝観から想起されたこと

 以前、当ブログにて述べたことがありますが、祖父母が住んでいた伊東市の家に主がいなくなって以降、そこに時々、伯父が行って泊りがけで草刈りなど庭の手入れなどをしていました。そして丁度同じ頃、私は和歌山から実家に戻り、歯科技工専門学校に通っていました。そうした状況もあり、夏季に伯父から「庭の手入れの手助けに来てほしい」との要望を受けて行ったことが何度かありました。実際、庭とは云ってもそこまで広くはありませんが、気候温暖な伊豆であると植物、樹木などの生育の具合も良いのでしょうか、盛夏の日中での庭の手入れは、頭と首にタオルを巻いて、防災用ヘルメットを被り、エンジン式の芝刈り機を用いて庭一面に生えた雑草を刈ったり、あるいは樹に登り余分な枝を払ったりなどで、それなりに時間を要する作業となり、雑談混じりではありましたが、日中は始終作業をしていました。やがて日が暮れてくると「そろそろ今日は終わろうか?」となり、18:00頃には作業を終えて道具を片付け、そして自動車で近くのスーパーマーケットまで夕食の買い出しに出かけました。そして戻ってから交替で入浴をして、買ってきた食材を卓上に並べ、伯父は好物のお酒を飲みながら、夕食(多くは地の魚の刺身)を食べつつ様々な話をされるのです。また、その際にテレビを点けていることが多く、時々、それを話題にして話を展開されることもあり、それらも興味深いものが多かったです。そうしたなか、敗戦記念日周辺での特集の一環であるのか、人間魚雷「回天」を題材とした横山秀夫原作、佐々部清監督による映画「出口のない海」が放映されており、二人とも、そうした題材には興味があることから、飲食をしつつではあれ意識を向けて鑑賞していますと、しばしば伯父が学生・院生時代に先輩や指導教員からお聞きしたと思しき戦時中の大学での話をされるのですが、それも興味深いものが多く、私の方は既にごく少量の飲酒により良い気分になっており、時には頷き、また時には不遜とも云える態度で疑問をぶつけていましたが、伯父もまた酔って良い気分になり、あるいは日中の肉体労働による達成感のためであったのか、鷹揚に受け答えをされていました。やがて映画も終盤に近づき、主要な登場人物である学徒出身の回天搭乗員たちが出撃による戦死、あるいは事故死などといった場面が続くようになると、二人とも言葉が少なくなり、やがて映画が終り、有名女性歌手によるエンディングテーマが流れてくると、伯父はティッシュペーパーで鼻をかみ「お酒を飲んでまた汗をかいちゃったからお風呂に入ってくるよ・・」と云って立ち上がり、タオルなどを取ってから、おもむろに私に「いやあ、悲しい映画だったね・・。しかし、当時、私がどこかの学生だったら特攻に志願していたかな?」と尋ねてきました。私は数秒間をおいて「・・ええ、伯父さんが当時の大学生でしたら、多分志願していたと思います。」と返事をすると「やっぱりそうかね・・。」と云って、もう一度ティッシュで鼻をかみ、こちらをちょっと見てから、風呂場の方に行きました。こちらを見た時の伯父の両目は少し赤くなっており、泣かれていたのかと思われましたが、態度や声色だけでは判然とはしませんでした。しかし、現在になり思い返し考えてみますと、あの時伯父は、やはり、少し泣かれていたのではないかと思われます。そしてまた、そのことは「弱さ」とも評されるような不名誉なことではないと私は考えます。
今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます!
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