また、あとで聞いてみたところによると、このWという場所は、和食に必要不可欠な醤油、かつおぶし発祥の地とのことであり、これはおそらく、その気候風土が強く影響しているのではないかと思われるのだが、さて、どうだろうか?
さて、醤油、かつおぶしの間で共通の要素は「発酵食品」であるということである。そして、この発酵食品という視点で、再度Wのことを検討してみると「梅干し」は県内のM町にて、かねてから有名であり、さらに先日食べた「なれずし」もまた、当地域が生んだ発酵食品である。
そのように考えてみると、Wという地域は、さまざまな発酵食品を生み出すのに適した気候風土であるのではないかと思われてきた。そこで、中華そば店からの帰路で兄に訊ねてみると「・・うーんと、今日行ってきたところのもっと内陸部に行くと、熊野本宮大社そしてさらに紀伊半島を東側に抜けると熊野新宮、那智大社があって、それらを総称して熊野三山と云うことは知っていると思うけれど、これは神仏習合といって、神道と仏教、双方から信仰の対象になる神様で「権現様」と云われるけれども、この熊野三山の主祭神とされているのが家都御子神(けつみこのかみ)という神様で、その正体は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と考えられているんだ。
それで記紀に載っている神話で、素戔嗚尊が体中のさまざまな部位の毛を抜いて、それらを地面に植えると、さまざまな種類の樹木になり、さらに、それら樹木の用途について説明したのだけれど、この素戔嗚尊こと家都御子神(けつみこのかみ)は、この神話に基づいて言い換えると毛津御子神(けつみこのかみ)であり、さらに、このWは、その古称であるK国からも分かる通り、樹木が多い地域であるのだが、おそらく、大昔にあって樹木は、さまざまな生活資材の材料となる資源としてだけでなく、あるいは狩猟採集時代からの名残とも云えるのか、多分に食料の供給源としても認識されていたのではないかと思うんだ・・。それで、水稲耕作が大陸から徐々に齎され、社会に定着してくると、その稲の苗もまた、さきの樹木同様、食料を齎す植物として認識されて、そして素戔嗚尊こと家都御子神・毛津御子神(けつみこのかみ)の神格に吸収されていったのではないかと思うんだ・・。
そのためか、現在では素戔嗚尊こと家都御子神(けつみこのかみ)は、樹木の神様というよりも、食べ物の神様として広く知れ渡っているらしいんだ・・。それに、これは蛇足だけれども、日本では神様のことを一柱と「はしら」って呼称するけれど、その意味からも、古代以来、樹木が豊富な地域であるK国、Wは、また同様に神様の数も多いのではないかと思うんだ・・(笑)。」との返事であった。
この返答は、私の質問に正面から返答したものとは云えなかったが、それでも、その質問に対して、ある種、抽象的な返答であったようには思われた・・。しかし、首都圏育ちの兄が普通に「この地域は神様の数も多いのかもしれない・・(笑)。」などと、云うこと自体に私は多少違和感を感じたが、しかし他方で、異郷にしばらく住んでみると、何かしら新たに見えてくるものがあり、それに浸り・感染(?)すると、そのようなことを普通に云えるようになるのかもしれない・・。
また、たしかに我が国では古来から神のことを「柱」として呼称してきたが、これは我が国の原初的な宗教観がなおも息づいていると云えるK国、Wのさまざまな文化を検討する際に一つの参考となるように思われた・・。そして、その全ての土台となるものは、やはり地域の自然環境であり、これが木の実や稲の実りをもたらし、また、人々に自然の薫り豊かな大気を提供してきたのだ。おそらく、この大気こそが、この地域が時折生み出す規格外れの人物の根源にあるのだはないかと思われた・・。そこでまた兄にそのことを訊ねてみると「もうすぐ家に着くから、そこで続きは話そう。」とのことであり、車外を見てみると、たしかに、あとわずかで兄のアパートに到着するところであった。
車をアパートの駐車場に停めると、後部座席の荷物を取り、すっかり寒くなった中を急ぎ、3階の兄の部屋に向かった。本日は長時間不在でいたためか、室内も冷え込んでおり、吐く息も白くなっていた。兄は靴を脱いで早々に暖房のスイッチを入れ、さらにリビングルームに置いてあるオイルヒーターのスイッチも入れた。そして10分ほど経つと漸う部屋は次第に暖かくなり、手洗い、顔洗い、うがいを済ませた我々は、落ち着いてリビングのソファでくつろぐことが出来る状態にまでなっていた。そうして兄は台所に立ち、湯を沸かして、ドリップバッグのコーヒーを二つ淹れ始めた。ちなみに私の家では昔から、どうしたわけかコーヒーはブラック一辺倒であり、砂糖やミルクを入れて飲んだ記憶がない。
私の方は、テレビを点けてみたものの、あまり面白いと思われる番組がなかったことから、当り障りのない報道番組にチャンネルを定めてから音量を下げた。
*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
祝新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5
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