ラベル 架空の話 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 架空の話 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年4月5日火曜日

20220404【架空の話】・其の91 【モザイクのピースとなるもの】【東京訪問篇⑪】

CH院長「ああ、どうぞ、いえ、今日は別に白衣着用まではしなくて大丈夫です。企業の方々も時折、訪問されて院内のご案内することがありますが、その時も皆さんスーツ姿のままですので・・。

ええ、そのままスリッパでお進みください。そう、そして、こちらがスタッフの休憩室兼ミーティングルームです。丁度、今は休憩しているスタッフがあまりいませんので、普段どのような感じであるか分かり難いかもしれませんが・・。そして、あそこの休憩室奥のキッチンには、いつも、ご飯と味噌汁が用意してありまして、当院のスタッフであれば誰でも自由に食べることが出来ます。お!今日の味噌汁の具は油揚げとわかめか・・うん、これは美味しそうだな・・。と、このような感じになっていまして、あとは、こちらにあるのが数日前に患者さんが箱で送ってきてくれた蜜柑ですが、これもいい具合に減ってきましたね・・。そういえば、こないだTO先生の御実家から送って頂いた熊本産のデコポンは美味しかったですね、あれは本当にすぐになくなってしまった・・。いや、別に催促しているわけではないから気にしないでくださいね・・(笑)。いや、当院は常勤、非常勤合わせたスタッフが総勢で50名以上いまして、しかも、若手が圧倒的に多いことから、こういったご飯と味噌汁のような簡単なものであっても、結構、喜ばれるのです。まあ、これも、数年前の医員や研修医の会話からヒントを得てやってみた試みではあるのですが、もうすっかり定着しましたね・・。

あ、食べ物の話をしていて思い出しましたが、先生がお勤めのK医療専門職大学には、たしか管理栄養学科があったと思いますが、同じ運営組織(「医療専門職大学運営機構」)の全国にある医療専門職大学も、そちらと同様の学科編制になっているのですが?」

すると、CH先生の傍らにいたE先生は「ええ、本学を含め全国の「医療専門職大学運営機構」によって設置された医療専門職大学は、概ね似通った学科編制となっていまして、全ての医専大には看護学科は設置されていますし、その他PT、OTさんの学科も概ね設置されていると思います・・。ただ、我々のような歯科系と管理栄養学科については、若干異なるようでして、たとえばKの北隣の熊本医専大では管理栄養学科はなかったはずです。九州地方では、一番大きな福岡に、管理栄養士養成課程が設置された大学が既にいくつかありまして、また熊本にも既に2大学ありましたので、新たな医専大での管理栄養学科の設置は見送られたといった話を以前に聞いたことがあります。」と返答した。すると、それを受けてCH先生は「ははあ、やはり、こうした資格系の大学では、どこでも設置される学科について、そうした周辺事情が考慮されるものなのですね・・。それで、たしか中国地方、岡山県にも医専大が設置されていて、管理栄養学科もあると聞いていますが、これについては、これまでに何か話を聞かれたことはありますか?」と続けて訊ねてこられた。

E先生は数秒間、視線を上に向けてから「はい、岡山の医専大につきましては、この地では、以前からPT、OTさんを養成する専門職大学が設置されていたことから、新設医専大ではさきの話の、まさに例外となりますが看護学科と口腔保健学科と管理栄養学科といった三学科の編成になったと伝え聞いています・・。」と、少し自信なさげに応えると、CH院長は「ええ、それはもちろん仰る通りであるのですが、先日、新聞を読んでいましたら、面白いことが書いてありましてね、それは・・突然、話が大きく変わるのですが、いや、実は後で繋がるのですけれども・・両先生は、専門が国際関係論でありつつ文学全般にも精しいST先生は御存知ですか?」と、また我々に訊ねられた。すると、E先生が私の方をチラッと見て、返答を促すような視線をされたことから、これについては私が返事をする流れとなった。CH先生が話題にされたST氏は、人文系では中堅若手(それでも既に40代後半ではあるが)の著名な研究者として通っており、また、これまでに、その著作も数冊読んだことがあり、ここでのCH院長からの質問、そして、そこに至るまでの会話の文脈から考えると、あくまでも想像ではあるが、双方が結び付くと思われる要素が思いついたため、私は以下のような返答をした。

今回もまた、ここまで興味を持って読んで頂き、どうもありがとうございます。
次回☟
https://jtsuruki.blogspot.com/2022/04/2022040992.html
順天堂大学保健医療学部


一般社団法人大学支援機構


~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

*鶴木クリニックでのオペ見学につきましても承ります。

連絡先につきましては以下の通りとなっています。

メールアドレス: clinic@tsuruki.org

電話番号:047-334-0030 

どうぞよろしくお願い申し上げます。












2021年7月18日日曜日

20210718【架空の話】・其の64

ヨーロッパ文化専攻修士課程を修了した私は、学士編入試験を経てK医療専門職大学の口腔保健工学科の第二学年の学生となったわけであるが、これは周囲の主に現役で入学した学生さん達と比べると、明らかに浮いた存在であり、それは卒業まで変わらなかった。私としても、こちらから歩み寄った方が良かったとは思うのだが、恥ずかしかったのか、そのままであった。

また他方で3年生に進級後しばらく経ってからはE先生からの誘いにより、K大学での実験に参加することとなり、それとアルバイトとの両方により、歩み寄るにも、あまり時間に余裕がなかったのだとも云える。それでも試験前にはノートを貸してくれたり、一緒に勉強をしたりして、どうにか医専大での3年間は無事に過ごし、歯科技工士国家試験に臨むことが出来た。

当時、国内では東京と広島に国立大学法人による四年制の歯科技工士養成課程が設置され、その他の同四年制課程は、公設民営の専門職大学にて、ここ九州では熊本とK、中四国では岡山と徳島、近畿・関西地域では滋賀と和歌山、中部東海地域では静岡、北陸地域では石川、関東甲信越地域では、千葉、新潟そして群馬、東北では宮城、そして北海道にあり、全国で合計15大学あった。

このうち国立大学法人である2大学以外の13専門職大学は全て、設置後から数年しか経ておらず、その継続的な運営も危ぶまれていたが、いざ開学して蓋を開けてみると、立地する地域により若干の偏差はあったものの、総じて受験者数は多く、好調な滑り出しであり、その後も受験者数は現在に至るまで全体的に微増傾向を示しているとのことである。

入学後、そうした事情に詳しい学内知人の述べるところによると、立地する地域にかねてから存在する公立の医療系大学への受験を希望する層が、設置学科そして学費などの類似点から、少なからず医専大の受験に流入してきているとのことであった。

とはいえ、それは医療系大学の花形と云っても良い看護学科などについてのハナシであり、私が在籍する口腔保健工学科などは、その中で最も目立たない学科であり、総じて、どの医療専門職大学においても、他学科と比べると人気が乏しい傾向があった。

これはひとえに、歯科技工士という医療専門職の職分があまり広く知られていないからと云え、また、その中でも特に大きいと思われるのは、実際の臨床現場に出て活動している歯科技工士の姿を見ることが極めて少ないということである。

しかしながら、私はこうした事情があることにより、Kに縁のある開業歯科医師の先生から声を掛けて頂き、そして入学に至ったわけであるが、そこからの3年間はさきに述べた事情によってか、とても短く感じられた。また、あまり娯楽らしい娯楽もなく、わずかに娯楽と云えば休日のアパートで寝そべりつつ読書をしたり、あるいは近くのツタヤにてDVDで映画作品をレンタルして観るといったものであった。

実家からの連絡は月に一度ある程度であり、また、Wにいる兄や延岡勤務となったBからの連絡もまた、概ね同様の頻度であり、個人的な感覚としては、初めての一人暮らしのわりにはホーム・シックにもならなかったと云える。あるいはまた、そのようになれる時間もなかったと云えるのかもしれない・・。

ともあれ、そのような調子にて、どうにか国家試験そして卒業に至ったわけだが、たしかにその間に歯科についての勉強はかつてないほどにしたと云える・・。入学当初は人に何本の歯が生えており、また、それら全てに固有の名称や、さまざまな形状的特徴があることを何一つ知らなかった私としては、それなりの進歩と云え、また、それ以上に手先をよく使ったといった記憶がある。これはほぼ修行と云って良いほどに使ったのではないだろうか・・。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!

順天堂大学保健医療学部

日本赤十字看護大学 さいたま看護学部 



一般社団法人大学支援機構



~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

*鶴木クリニックでのオペ見学につきましても承ります。

連絡先につきましては以下の通りとなっています。

メールアドレス: clinic@tsuruki.org

電話番号:047-334-0030 

どうぞよろしくお願い申し上げます。













2021年1月13日水曜日

20210113【架空の話】・其の63

 口腔保健工学科への編入後は、これまで全く接することのなかった科目群の学習をすることになったわけだが、これはたしかに大変であり、また、以前と比べ、明らかに体に無理がきかなくなっていることが分かり、そこから、自然と毎日少しづつ勉強をする癖がつき始めたとも云える。

また入学直後に申請した奨学金は、どうにか一種にて採用されたが、それだけでは生活はままならず、こちらでも週に2日ほど夜勤の警備員のアルバイトに就いた。これは、市内の個人経営の病院であり、急患などの突発的な出来事がなければ、そこまで体力を消耗するものではなく、仮眠をとったり、机に向かって勉強をする時間もあった。

そこまで多く顔を合わせ、長く話す機会はなかったが、当直勤務のドクターや看護師さんの中には、私が机に向かい教科書、ノートを開いて勉強しているのを見て、それが解剖学といった彼等がかつて勉強した科目である場合は「分からないことはないかい?」と訊ねてきてくださったり、あるいは飲物やパンを差し入れしてくださる方もいた。

はじめのうちは、よく分からなかったが、少し経ってから、大分前の幼い頃に児童館か床屋で読んだ記憶がある松本零士による「男おいどん」というマンガをそこから何故だか思い出させた・・。

この夜警のアルバイトは医専大の卒業後もしばらく続け、その後進んだK大学大学院医歯学総合研究科にてTAやRA、そして母校での非常勤講師のアルバイトにも就き、また、実験のため深夜に研究室に行く必要性も生じてきたことから、辞めることにした。

そういえば、入学当初の頃は、人間には歯が何本あるかも知らず、また、それぞれの歯に固有の名称があることも知らなかったが、それを学ぶにつれて、それが概ねどの人種でも同様であり、また、その形態や機能などについても同様であることには何故だか興奮し、これまでの人文社会科学系にて学んできた内容とは、どうも異なる次元にあるものを学んでいるといった実感を持つに至った。

それは端的には、物理的な意味での普遍性であり、また、そうした性質(普遍性)があることにより、異なる言語で書かれた論文などの文献も、そこまで労せずに理解することが出来るのだと悟った。

つまり、医療分野の学問がすぐれているという根源には、人体という実質を伴う普遍的なものを対象としていることがあり、そこでの新たな知見は、たとえ全人類ではないにしても、より多くの人々に対して有効であると云えるのである。

その点、殆どの人文社会科学分野の学問は、こうは行かないと云える・・。しかしながら、それだからこそ、人文社会科学の学問には価値があるとも云えるのだが、その価値とは、さきの医療分野における普遍性から生じる価値とは異なるものであるのだ・・。

そしてまた、貨幣経済の基礎を成す価値の基準と相対的に見て、より親和性があると云えるのが「人体」という普遍性が基層にある医療分野のそれであり、多くの人々はそちらの方をより重要視することであろう・・。

くわえてそれは、概ね16世紀以降に西欧諸国が世界の覇権を握るに至るまでの歴史的背景にある主要な思想とも云えるのかもしれない・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!





一般社団法人大学支援機構

~書籍のご案内~

ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!












2021年1月11日月曜日

20210111【架空の話】・其の62

あとは教授とE先生を交えた雑談のようになり、とりあえず今回の研究室訪問の目的は達せられた。

この雑談はその後約1時間ほど続き、主に教授がご自身のことについて語ってくださった。どうやら元来話好きの性分であるらしく、さまざまな方面にハナシが飛んだが、さすがに長年、学生相手の講義をされてきたためか、そのハナシには惹き付ける何かがあるように感じられた。

ハナシによると、このS教授は、歯学部の教授でありながら歯科医師ではなく、背景となる学問分野は工学であり、専攻は窯業つまりセラミックスとのことであった。また、これはあとになって知ったことだが、この歯科理工学研究室とは、全ての歯科大学・歯学部にある、まさに歯科医学分野の研究室でありながら、その教員は歯科医師でないことが多く、ここ最近では多少事情が変わってきているとも聞くが、当時は半数程度がS教授のような工学分野出身者や、さきにご挨拶した先生のように歯科技工士を背景とする方もいた。

教授は、もともと関西圏にあるH県の都市Kのご出身であるが、高校卒業後は大学進学のため東海地方のA県の都市Nに行き、そこで大学院修士課程まで修了され、その後、著名な歯科医療総合メーカーであるG社に入社され東京配属となった。当時は景気も良く、各歯科大学・歯学部共に割合多く備品を購入されていたようで、電気炉や鋳造機など納入機器の操作説明担当者として、しばらく滞在した都心部にある某老舗歯科大学で、当時、歯科理工学教室主任教授であったK先生に気に入られ、G社から引き抜かれて、助手として勤務することになったとのことであった。

その後、歯科大学でも熱心に研究を続け、歯学博士の学位を取得され、さらに続けてNにある母校の大学にて工学の論文博士の学位も取得されたとのことであった。

こうした博士号を二つ取得されている方を世間ではダブル・ドクターと云うようであるが、私にとっては、このS教授が、初めて見るそうした方であり、あるいは、さきに感じた精悍さも、そこに由来しているのかもしれない・・。

そういえば、面談の終盤、不図、S教授が私に「君は、今の医専大を出て歯科技工士になれたら、次はどうするつもりなのかね?」と訊ねてきた。私は突然のことで「・・ええと、普通に就職活動をして条件の良い技工所か何処かに勤めたいと考えています・・。」と少々慌て気味にて返事をすると「・・・そうか、実はうちの教室の先生方もここ3・4年で続けて定年退職されて、そうしたら今、医専大にいるウチの教室OBの連中をこっちに教員として呼び戻したいと考えておるのだが、そうすると今度は医専大の方のポストが空いてしまうからのお・・。」と云われた。それを聞いて「ひょっとしたら医専大のポストに入れるかもしれない!」と少しだけ目が見開いたが、あまり気にしないような調子で「・・そうしますと、またS先生の教室OBにて医専大のポストを充当することになるのでしょうか?」と訊ねてみると、教授は少し黙ってから「・・うむ、しかし、このEが2年前に修了してから、ウチの研究室には正規の院生はおらんのだ・・。」と、E先生の方を少し見て云った。それを聞いた私もまた少し間をおいて「あの・・もし来年度、私が無事に医専大を卒業して歯科技工士になれましたら、そちらの研究室に院生として入ることは可能でしょうか?」と、おそるおそる訊ねてみると、教授は「うむ、まあ、それは無事に受ければ可能かもしれないな・・。しかし、それでウチに来てくれるのであれば、歯科理工学の学生実習なども上手く回せるようになるかもしれんぞ・・。」と少し回りくどいような返答をされた。

ともあれ、この最後の方のやりとりは、当時の私にとって、サッと未来に光明が見えた瞬間であったことから、強く印象に残っている。おそらく、あの時もまた、一つの人生の分岐点であったのだと思われる・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*











2021年1月9日土曜日

20210109【架空の話】・其の61 【其の59の続き】

ドアを開けた先は、日本の城門構造でよくある桝形様にパーテーションが置かれ、そこには学会発表に用いたと思しき英文ポスターが貼られ、その奥の様子までは窺うことは出来ない構造になっていた。

入室されたE先生と教授との会話は、こちらまで少し聞こえたものの、その内容までは分からなかったが、一分も経たないうちにE先生がドアを開き、室内から「では、教授から許可が出たので、入室してください。」と云われ、また室内に戻られた。

私は、開いたままになっていたドアの前に立ち、さきほどのE先生のような声で「K医療専門職大学口腔保健工学科3年の**と申します。入ってよろしいでしょうか!?」と述べると、E先生の声で「入室してください。」と少し形式ばったような声色の返事が来て、この時不図、二年前の編入試験の光景が思い出された。

入室してすぐのパーテーションによる桝形から出ると、壁一面の詰まった本棚と、その他の壁に貼られた英文の学会ポスターから、いかにも研究室といった印象を受けたが、それはかつてはよく訪れた人文社会科学分野の指導教員の研究室とは若干趣が異なり、分野外と判断されるようなモノはあまり置いていないように見受けられた。

また、部屋の奥にはPCが据えられた執務机があり、手前側には応接用を兼ねたと思しき大きなテーブルが置かれ、その上には学会誌やホチキス留めされた論文と思しき資料、歯科の専門雑誌などが無造作に置かれ、そのテーブル周りに置かれた椅子には教授とE先生が座り、そしてもう一つ空の椅子があった。

私は自然とその椅子の横に立ち、ほぼ正面に座っている教授に「はじめまして、K医療専門職大学口腔保健工学科3年の**と申します。」と、先ほどと同じセリフを述べてから丁寧にお辞儀をした。すると教授は私に「おお、E先生から聞いとると思うが、私が歯科理工学教室のSです。どうぞそちらにお掛けなさい。」と着席を促された。それに対し「では失礼します。」と、はす向かいに座っているE先生に対しても目礼をしてから椅子に腰掛け、持参のリュックを脇に置いた。

教授は父や遠い親戚の院長よりいくらか年配のように見受けられたが、肌艶は大変よくて精悍な感じであり、もう少し髪の毛が多くあれば40代半ばでも通じるような一種不思議な容貌であった。

するとE先生が「教授、こちらが先日お話しした当学科3年の**君でして、彼は医専大入学以前に文系の大学院修士課程を修了しておりまして、なかなか変わっているのです。」と会話の口火を切ると、教授が「ほお、そうですか・・それで、どこの大学で何を専攻したのですか?」と訊ねてきたことから「はい、A大学でヨーロッパ文化専攻を卒業し、同大学の大学院修士課程でジョゼフ・コンラッドという作家の作品についての研究で学位を取得させて頂きました。」と返事をすると「ほお、旧制私立の高等学校の流れを汲むとこやな・・そうか・・それで、そのコンラッドという作家の作品は原書で読んだんやな。」と、さらに訊ねて来られた。私は「ええ、一応あまり長くない作品については原書にて通読しましたが、原書では読んでいない作品も少なからずあります・・。」と、少し恐縮気味に返事をすると「ああ、そこはあまり気にせんでええから・・。」と云って、ホチキス留めしてある英論文と思しきものをこちらに手渡し「そこに書かれている実験の概要は分かりますか?」と、重ねて訊ねてきた。手渡された論文のタイトルを見てみると、大体は理解出来たことから「はい・・ええと、これはさまざまな条件下での歯科用合金と陶器との接着について実験を行ったものであると思います・・。」と返事をすると、教授はE先生の方をわずかに頷きながら一瞥し、すぐに私に向かい直して「そうです。この陶器というのは歯科用陶材のことであり、これと歯科用合金との接着強さについて研究したものなんだが、これらの接着を作製時の操作として必要なのは、どんな補綴物かもちろん分かりますね?」とまた訊ねて来た。私は「ええ、まだ実習で作製したことはりませんが、陶材焼付鋳造冠であると思います。」と答えると教授は「まさしくその通りです。しかし、おそらく既に知っていると思いますが、近年の貴金属価格の上昇によって、たとえ保険診療外であっても、この鋳造冠を作製すること自体が困難になってきているのです。そこで、この価格が高騰している合金に代わる比較的安価な材料として、セラミックスであるジルコニアが良いのではないかと最近考えられているのだが、それを用いての実験をはじめる前に、先ず自前で既存の歯科用合金を用いて、さきの論文に書かれているような実験のデータを出し、それらを検証をしてみたいと考えているのです・・。そこで、手近な研究室関係者に訊ねてみたところ、皆それぞれ実験テーマの方向が違ったり、忙しかったりで、なかなか見つからなかったのですが、つい先日、そこのE先生が君のことを話して、それで今日に至ったわけです。」とその背景までを話してくださった。

私はそれを聞きつつ心中にて「しかし、まだ私は歯科用陶材を用いた実習を受けていないが大丈夫なのだろうか・・?」と疑問に思ったが、E先生はこうした事情を御存知であることからか、すぐに後を継いで「口腔保健工学科では陶材焼付鋳造冠の作製実習は未だ行っていませんが、先代のK教授門下OBで、K市にて開業されているO先生が、ご自身で補綴物をよく作製され、陶材焼付鋳造冠も作製されるとお聞きしていますので、週末の一日、私がアルバイトに行く車に**君を乗せ、O先生の診療所でおろして、一日かけて作製法をO先生から教えて頂き、夕刻頃、アルバイトを終えた私が再びO先生のもとに**君を拾いに行くというのが良いのではないかと考えています。」と、既に教授には話していたのか、教授に向かっての口調であったが、私の方を向いて提案して来られた。

それについては、私はどうしようもなく、肯定するのであれば、その流れ全てに乗ることが賢明と考え「はい、分かりました。また日程等につきましては、後日調整して頂ければと思います。」と返事をして、あとは教授とE先生を交えた雑談のようになり、とりあえず今回の研究室訪問の目的は達せられた。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*























2021年1月5日火曜日

20210105【架空の話】・其の60 【其の55の続き】

こうして出会う自然に身に着いた職業的とも云える几帳面さもまた、当時の私にとっては、さきの「とり天」と同様、新鮮なものに感じられた。

さて、こうして思いがけず院長と昼食をご一緒させて頂くことになったが、その献立は思いのほかに質素であり、メインのとり天、そして、ごま塩がかかり、梅干しがのった雑穀入りのご飯と、切り干し大根の煮物、そして削り節が添えられた輪切りのオクラ、それにインスタントのわかめの味噌汁と、温かいお茶といったものであった。

それでも院長は実に美味しそうに弁当を食べつつ、鹿児島はオクラの名産地であることや、とり天につけるポン酢がこだわりの一品であり、学会の支部会にて訪問した博多にある水炊き専門店の特製であることや、もう一つの調味料であるゆず胡椒は、大分県の名産であり、その製造元は作家の野上弥生子の実家であることなどを話してくれた。

このポン酢は私もご相伴にあずかったが、たしかにスーパーに置いてある一般的な市販のポン酢とは、明らかに味の奥行きや、鼻に抜ける柑橘と醤油の合さった食欲を増進するあの独特の薫りなどが異なり、これであれば、淡泊な味わいの「ささみ」のとり天も、美味しく食べられること請け合いであろうと思われた。

とり天は本来「ささみ」だけでなく「もも」や「むね」を用いるのであるが、院長は健康のためとのことで「ささみ」のみで注文しているとのことであった。

とはいえ、それはまだどうにか若者に属する私にとっても十分に味わい深いものであり、あるいは、用いる鶏肉自体の質が異なるのではないかとすら思われた。ちなみにさきのポン酢については、後年、私も博多訪問の折、中洲川端まで出向き、準備中であったお店を訪ね、頼み込んで購入させて頂いたといった後日談がある・・。

近年では多少事情も異なったと云えるかもしれないが、概して関東に比べ西日本の方がポン酢を用いる食文化は発展しているように思われる。また、基本が塩味といえる醤油に果物(柑橘)由来の酸味をかけ合わせて新たな味を創造(止揚)しようとする傾向は、何となく東アジア南方にその起源があるのではないかとも思われた。

まあ、もともと柑橘は、あまり寒いところでは実らないといった植生的な事情もあるのだが・・。

ともあれ、このため、さきに述べた献立からは少し想像できないほどの口福を頂き、食後のお茶を飲んでいると院長が「ときに君は、さきほど話した五代前の我々の共通のご先祖のお墓が「南洲墓地」にあるのを知っているかね?」と訊ねてきた。

私が父から聞いたのは、五代前のご先祖だけがねむる墓でなく、いわば一族の墓であり、その墓については、これまで聞いたことがなかったことから「いいえ、それは知りませんでした・・。それが「南洲墓地」・・というところにあるのですか?」と訊ね返すと「ああ、そうだったのか・・。うん、まあ、それもそうかもしれないな・・。と云って、傍らにあったメモパッドを開いて、思い付いたように、コートハンガーに掛けてある白衣の胸ポケットから、ペリカンの万年筆を取って来て、それを用いて何やら書き始めた。手元を見ていると、どうやら墓域を示したものであるらしく、墓地入口と南洲墓が書かれ、そして、そこを基点として墓のある位置を示したものであると思われた。

書き終わると「これで墓のある大体の場所は分かると思うから、あとは地域の勉強だと思ってご自分で探してみなさい。そして花でも手向けてあげると、泉下のご先祖「***さあ」も喜んでくれるかもしれない。」と云って、年の割には人懐っこく、そしてイタズラっぽい笑顔で、そのメモ紙を私に手渡した。

さて、この経験および、その後の経験も踏まえて思うことは、Kの男性、いや女性も実はそうであるのかもしれないが、こうした見様によれば重いようなことを、敢えて笑顔で冗談のようにして云う傾向があることで、あるいはこれは、本当に辛い歴史を持ち、そして、その記憶を持ち続けようとする人たちの、涙で記憶を曇らせないための或る種の知恵であるのかもしれない・・。

とはいえ、そのようなことを彼等・彼女等に云ってみたところで、これまた冗談にされることは請け合いであるとから、それは、これまで口にしたことはない・・(笑)。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




一般社団法人大学支援機構

~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*
















2021年1月3日日曜日

20210103【架空の話】・其の59

やがて背後から「おお、***君、もう来ていたのか!良かった、良かった!」と聞き慣れた声で云われたので振り返ると、そこにはこちらに向かって歩きながら白衣を着つつあるE先生がいた。

私はE先生に挨拶して、持参のリュックから大学指定の淡青の白衣(作業衣)を取り出し、E先生に倣ってそれを着た。これでようやく、それらしく見えるようになったと思われたが、如何せん初めての場所であることから、その時の私はオドオドしていたに違いない・・・

やがて、E先生が「じゃあ、もうすぐ時間だからとりあえず中に入ろうか。」と云い、ガラス造りのドアを開け、入って行った。この建物は斜面上になった土地の上に建てられたらしく我々が入った出入り口は2階であり、また、そこは、さきの歯科診療棟の2階と繋がっていた。そして研究棟の2階には学部事務室や技工室があり、他には普段はあまり使われないという学部長室などもあり、これはE先生が案内しつつ教えてくださった。

また、技工室への挨拶の際には、仕事が一段落したと思しき技工士さん達に紹介してくださった。「ああ、ハナシはE先生から聞いているよ。何か必要な材料があったら遠慮なく云ってね。」と明るく仰って頂き少し安心したが、その技工室はまさに「現場」といった緊張感があり、作成途中の補綴装置や石膏模型が整然とではあれ、至る所に置かれており、大学での実習室とは大分違った趣がそこにはあったと云える。

技工士さん達は総勢三人とのことであったが、そのうちの一人は、義歯のレーズ研磨のため同階にある研磨室に行っているとのことであり不在であった。そのため挨拶は後日ということになり、学部事務室向いにある階段にて歯科理工学教室のある五階まで行くことにした。

ちなみにE先生は、階段を一段飛ばしで上がっていくという特徴というか癖があるのだが、それはここでも同様であった。

五階に着くと、そのまま、すぐ目の前にある教室に入った。そこには教室の教員と思しき方がPCに向かい仕事をされているようであったが、我々が入ってくるのを認めると「はい、どなたですか?」に続いて「ああ、E君かね・・。今日は実験に来る日だったかな?」と訊ねてきたため「いえ、今日は例の実験を手伝ってくれる医専大の学生さんを挨拶のために連れて来ました。」と返事をすると「・・ああ、こないだの朝のミーティングで出たハナシだね。ふーん。」と淡青の白衣(作業衣)を着た、緊張気味の私に視線を向けた。私は「どうも***と申します。この度はお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。」とぎこちない感じで挨拶をすると「うん、こちらこそどうぞよろしく。何か分からないことがあれば聞いてくださいね。私は##と云います。」と返事が来た。この方は教室の助教の先生とのことであったが、年齢は60に届いている様子であり、その容貌には、何となく川端康成を思わせるものがあった。

続いて、その隣りのパーテーションで区切られた部屋に連れられて行くと、そこにも何やらPCで作業を行っている先生と思しき方がいて、E先生が声を掛けると「おおE君か!ハナシは聞いているよ。例の医専大の学生さんを連れてきたのかね。よろしく!私も歯科技工士なんだよ。」とのことであり、この先生にも挨拶をすると「うん、何か困ったことが云ってきなさい。しかし、E君が勤め先の学生をここに連れて来るなんてE君も出世したものだな・・ええ(笑)。」と悪意のない感じで冗談をE先生に云うと「いえ、あの実験は歯科技工士の手が必要とのことでして、それで、この**君に白羽の矢を立てたわけでして・・。」と、E先生は少し緊張しつつのおどけ気味で返した。どうやら、この先生とE先生は、さきの##先生よりもくだけた中であることがここで推察された。さて、この%%先生もまた、年齢は60過ぎであるように見受けられたが、同時に筋骨隆々としたスポーツマンタイプでもあり、この時もTシャツ姿であった。また、後で聞いたところによるとテニス部の顧問を務められているとのことであり、時々は学生さんに交ざりプレーをするとのことであった。

また、教室には教授以外にもう一人教員がおられるが、その日は既に退勤しているとのことであった。そこで廊下に出て、本日のメインとも云える教授に挨拶すべく、さらに奥にある個室の教授室の前に立つと、先を行くE先生が振り返って「じゃあ、初めに私が教授室に入って、案内して良いか訊ねて、それで教授からオッケーが出たら名前を云って入室してください。」と言い残してから、前を向き直し、少しだけ開いている教授室のドアをノックして「先生、Eです。入ってよろしいでしょうか!?」と、先ほどとは異なる大きな声で訊ねると、すぐに「おお、入れえ!」と、これまた大きな声で返事が来た。E先生はこちらをチラッと見てから、ドアを開け教授室に入って行った。ドアを開けた先は、日本の城門構造でよくある桝形のようにパーテーションが置かれ、そこには学会発表に用いたと思しき英文ポスターが貼られており、その奥の様子までは伺うことは出来なかった。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!






一般社団法人大学支援機構

~書籍のご案内~

ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*














2021年1月2日土曜日

20210101【架空の話】・其の58 【1450記事】

また、教授に挨拶をするとのことで当大学指定の作業着である薄いブルーの白衣(日本語が少しおかしいですが・・)を持参し、K大学学内にて着用することになった。(ちなみに、E先生より、この予定の伝達を聞いた時、何故だかシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」冒頭部が思い出された。)

訪問日当日は、大学での課業を終え帰宅し、比較的キレイな作業着(白衣)を持参して、家から出てすぐの坂をのぼりK大学に向かった。坂をのぼりきらないうちから、前方に病院施設と思しき建物が目に入ってきて、なおものぼり続けると、建物に「K大学病院」と表示されているのが目に入ってきた。

私の在籍する口腔保健工学科は3年生の後期に入ってからも実習や見学にてK大学に訪問することはなく、うろ覚えの年度予定表によると、4年生に上がってから、ようやくそうした行事があるとのことであった。それに対して口腔保健学科は3年生後期、つまり丁度この時期には病院実習が始まっていた。またそれは他の医学系学科全般においても概ね同様であった。そこから、以前にも述べた通り、口腔保健工学科つまり歯科技工士の養成においては、実際の臨床現場にて患者さんに相対するよりも、ラボなど作業現場の方が重視されるという現実を垣間見ることが出来るようにも思われた・・。

とはいえ、それは特に改善を要するべきところではなく、また、歯科医療分野においては、その性質上、そうしたいわば「縁の下の何とやら」が必要であるのだと思われる。

さて、坂をのぼりきり、右斜め前に大学病院の全容が目に入ってくると、敷地内の更に先にある歯学部棟を目指し歩き続けた。10月の夕刻近くとはいえ、南国とも云えるkでは、しばらく歩くと汗ばんできて、また、丁度私の歩いている道側に当地域ではポピュラーなスーパーマーケットが目に入ってきたことから、そこで何か飲物を購入しようと入ってみると、そこには、おそらくはK大学の学生さんと思しき方々が割合多くいて、店内はにぎやかであった。

私はペットボトルのお茶を購入し、さらにグーグルマップの示す歯学部棟の方に行くため、横断歩道を渡り薄茶色の建物に近づくと、そこには歯科診療棟と表示されており、そのさらに奥には歯学部棟と思しき建物が続いていた。

私はこの奥に見える歯学部棟に行こうと、左手に見える駐車場沿いに構内を進むと、その先には4面のテニスコートがあり、そこでは学生さん達が、元気な声を出し部活動に励んでいた。やがて右手にも駐車場が見えてきて、そしてグラウンドと歯学部棟の出入り口と思われる場所も目に入ってきた。

それら建物全容は、私の在籍する専門職大学と比べ、建造された年代は大分前であるが、それでも遥かに立派であり、まさに「昔ながらの大学」といった感じを受けた。そういえば、かれこれ私は既に1年以上、専門職大学に在籍しているが、そこでの実習や課業が思いのほかに多忙であることからか、以前の文系での大学生活を徐々に忘れてきているような印象があり、それは偶に連絡がある延岡にいるBや、指導教員の存在によってもあまり活性化されるといったことはないように思われた・・。

さて、歯学部棟に着いてみると、時刻は待ち合わせ時刻の約10分前の17:20頃であり、一人で先に棟内に入るのも気がひけることから、出入り口付近でペットボトルのお茶を飲みつつ、待つことにした。とはいえ、出入りする白衣姿の教職員と思しき方々からの少し怪訝そうな視線には少し恐縮し、敢えて視線をあらぬ方に置こうとつとめた・・。

やがて背後から「おお、***君、来ていたのか!良かった、良かった!」と聞き慣れた声で云われたので振り返ると、そこにはこちらに向かって歩きながら白衣を着つつあるE先生がいた。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*








2020年12月28日月曜日

20201228【架空の話】・其の57

その後の「飲み方」は特に荒れることもなく盛り上がり、私も以前と比べ、少しは周囲の方々と打ち解けたような感じを受けたが、それはまた、次の月曜日になってみないと分からないといったところであろう・・。

やがて翌週になり、再び普通の大学生活がはじまったが、それらの課業にて専門基礎科目と分類されるものがあり、おそらくそれらは、歯科医療分野に直接は関与しない、医療系科目全般を指すものと思われるが、元来、人文社会科学分野あがりの私としては、そうした科目の講義は、はじめて聞く知見が多く、概ね興味を持って聞くことが出来たのではないかと思う。また、それら科目の講義を行うのは、当大学にも近いK大学医学部あるいは歯学部の若手教員か、研究畑に進もうとする同大学の院生達であった。

概して彼等は、そこまで教え方が上手いというわけではなかったが、他方で何と云うか、若く勢いのある研究者の熱気のようなものがあり、それらがあまり慣れていない講義への未熟さを補って(多少)余りがある、といった感じを受けた。また、これは以前の大学院修士課程での指導教員についても同様のことが云えるのではないかと思われる。

さて、私が在籍する口腔保健工学科にて養成する歯科技工士とは、国家資格による医療専門職ではあるものの、実際に患者さんを相手にすることは他の医療専門職と比べると少ないといえ、さらに歯科技工所などでの勤務となると、自分の作製した補綴装置を使用する患者さんに相対することはかなり稀であるとのことであった。

その点、もう一つの歯科医療分野である口腔保健学科にて養成する歯科衛生士は、歯科臨床の大きな担い手であり、いわば医療分野における看護師の役割を果たしていると云える。それだけに学科の学生数も多く、一学年で40名と、口腔保健工学科の二倍以上であった。とはいえ、それもまた看護学科に比べると半分以下であり、こちらは一学年で定員100名となっていた。

こうした学科構成からも、お分かり頂けると思われるが、口腔保健工学科は当大学で最も小規模な学科であり、その存在感もまた、あまり大きなものとは云えなかった。また、当学科の専任教員は概ね、さきのK大学の歯学部からの出向組であり、私が入学前に夜のT文館で遭遇したE先生もその類型であったと云える。

そういえば、このE先生は、元々、K市のご出身であるものの、東京の中心部にある大学に進み、そこを卒業され、1年の臨床研修期間の後、帰郷し、そしてK大学大学院に進まれたとのことであった。そのため、私としては東京の話題で盛り上がることで出来る数少ない方であり、また、E先生の方も教員ではあるものの、比較的年齢も近く、さらには私が学科で少し浮いている存在であることも知ってか知らずか、よく気さくに話しかけてきてくださった。

このE先生は私の入学と入れ違いにて大学院を修了されていることは以前にも述べたが、その後も継続的にK大学歯学部の歯科理工学教室には出入りしており、私が3年生に上がり、半年ほど経った頃、おもむろに「ウチの学科長とK大の歯科理工学教室の先生方には許可は貰っているのだけれども、今度、実験で試料を作りたいのだけれど***君、手伝ってくれるか?もし、大丈夫だったら火曜と木曜日の夜にK大の実験室と技工室で作ることになるけれども・・いや、バイト代は出ないけれども、夕食くらいはご馳走するよ・・。それと学会に入ってくれればペーパーに名前を載せてもらうよ。」とのことであった。一応、私も分野違いではあれ、そうした世界を経験していたことから「これは面白いかもしれない・・。」とすぐに思い、その申し出を受けさせて頂くことにした。ともあれ、そうなると一度、K大の歯科理工学研究室へ挨拶に行く必要があることから、E先生が日程調整をして頂き、10月初旬某日の金曜夕方に訪問することになった。また、教授に挨拶をするとのことで、大学指定の作業着である薄いブルーの白衣(日本語が少しおかしいですが・・)を持参しK大学の学内で着用することになった。(ちなみに、E先生より、この予定の伝達を聞いた時、何故だかシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」冒頭部が思い出された。)

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*



















2020年12月21日月曜日

20201221【架空の話】・其の56

こうして、その様子を傍から眺めてみると、彼等彼女等はいかにも若く、どうも高校生の様にも見えるのであった。

一般的に大学2年生は十九歳もしくは二十歳(はたち)であることから、参加メンバーには未成年も少なからずいたと云えるのだが、そのあたりは、最近はシッカリとしているらしく二十歳になっている者のみ、お酒を注文することを許されていた。とはいえ実際に「飲み方」が始まると多少ルーズになってしまうらしく、会の終わり頃になると、どうしたわけか二十歳に達していないと思しき学生達も、顔を赤くして上機嫌な様子になっていた(出来上がっていた。)。

こうした本来であれば禁じられた飲酒をしてしまうのは、概ね男子学生であり、女子学生の方は、少なくともこうした場所では、飲酒を伴わないような陽気さで盛り上がっていたように見受けられた。

私の在籍する口腔保健工学科は、一学年で私を入れて十八名であり、そのうち半分が女子学生であった。また、私以外の男子学生は現役か一浪であり、つまり、その中では私が突出した年長者であった。

とはいうものの、私には頼るべきツテなどなかったことから、以前にも述べたように学科内では何となく浮いてしまい、また、それを改善すべく私の方も「友達作り」を積極的に行わなかったためか、ここでは、最後まで友達らしい友達は出来ずに終わった。

飲み屋さんに入り、出席を確認し、飲み物を注文してしばらくすると、つきだしと、はじめの飲み物が運ばれて来た。それらが皆に行きわたると、さきほど私への対応を行ってくださった女子学生が立ち上がり「皆さん、小テストやレポートや実習などでお疲れとは思いますが、今日は今年度から新たに口腔保健工学科に編入された***さんにもご参加をしてもらい、全員参加にて、このような会を開くことが出来ました。今後も皆で力を合わせて頑張り、講義や実習をパスして行きましょう。」といった主旨の挨拶をされて乾杯となった。

会が始まると、しばらくは平和な感じでの飲食となったが、やがて、同期の男子学生の中でも割とヤンチャな感じの三人組がこちらに来て、私に話し掛け、ビールを注ぎ合ったりした。そこまでは何事もなく、まあ穏やかなやりとりであったが、どうしたわけか話題が私の服装のことになり、三人組のうちの一人が少し酔っている様子にて「***さんは、たしか東京から来たんだよね。・・入学した頃から見ていると、着ている服装の好みが結構俺と被っているから、前から話してみたかったんだ・。それで、そこに置いてある帽子なんてなかなか良いよね・・。ちょっと被らせてよ。」といった感じで訊ねてきたため、傍らのブーニーハットを渡すと、それを受け取り被って、他の二人に「これ、どう?」と云った感じに視線で訊ねていた。すると他の一人が突如、その帽子を頭から奪い取り、自分で被ってみて、そしてすぐに、それを座っている床に叩き付けた。その突然の動作に私は驚いたが、しかし同時に、彼らからは特に底意のある悪気のようなものは感じられなかった。もし、そうしたものがあったのだとすれば、それは自らのものとは異なる文化に接した時の本能的な警戒感や違和感のようなものであったように思われる。

それでも、この動作には周囲の注意を引いたようであり、その場が少しの間固まっていた(苦笑)。

しかし、それも酔った上での行動と認識されたようであり、また徐々に「飲み方」の空気は、和やかなものに戻って行った。またその後、Kでの在住期間に、何度かこれに類するような出来事に遭遇したが、それは決して悪い意味でなく、当地域での感情発露の仕方の一つなのであろうと思われた。

その後の「飲み方」は特に荒れることもなく盛り上がり、私も以前と比べて少しは周囲の方々と打ち解けたような感じを受けたが、それはまた翌週の月曜日になってみないと分からないところであろう・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*