2026年5月14日木曜日

20260514「フィルターとしての私」と知性

 我々は日々、会話、SNS、PC・スマホ、テレビ、書籍など膨大な情報に接して生きています。これらから得られる情報は、意識をしなければ、そのまま通り過ぎていきます。こうして、ただ情報を得ている状態は、いわば情報の「消費」に留まっている状態であると云えます。そして、そこには知性はあまり関与していません。では、知性が情報に関与するとは、どういうことでしょうか?それは、端的に、ある情報に触れた時に「私はこれをどう認識するのか?」と云う、能動的な問いが自然に生じる状態であると考えます。そして、ここで重要であるのか「フィルターとしての私」です。我々は皆、普段、同じ世界を見ているようでいながら、実際には異なるものを見ています。ある人は数字に目を向け、ある人は歴史的な背景を読み取り、またある人は感覚に注目しています。こうした差異は、単に知識量の違いではなく、それぞれの人が積み重ねてきた経験や思索の蓄積によって形成された「ものの見方の癖」によるものと云えます。つまり、読んだ本、出会った人、繰り返してきた習慣や鍛錬が、幾層にも重なり、その人独自ののフィルターを形成するのです。そうした意味から知性とは、まず、この自分なりのフィルターを持ち、そして、それを通して世界に「引っかかり」を見出すことから始まるのだと考えます。そして次に、その引っかかりを「解釈」へと進める段階があります。ここでの解釈とは、ただ意味を付与することではなく、与えられた事実に対して問いを深めていく営為であると云えます。具体例を挙げますと「地方大学の多くで受験生が減少している」という情報に接したとき、「少子化だから仕方がない」と結論づけて終わるのは、さきの情報の消費にすぎません。しかし「何故、少子化とはいえ地方大学から先に受験生の深刻な減少が生じるのか?」そして「地方で大学が減少すると、どのような変化が社会に生じるのか?」といった問いを重ねていきますと、そこから、また新たな意味の連関が惹起されます。これは、バラバラの情報を単に並べるのではなく、それらを結びつけて、自分しか見えないような構造を見出す作業であると云えます。換言しますと、点と点を結び付け、自分なりの星座を見出すような営みと云えるのではないでしょうか?そして最後に、その解釈を「言語化する」という段階に至ります。そして、この段階、過程こそが知性の核心であると云えます。なぜならば、我々は言語化にしない限り、自らが何を考えているのか精確に把握することが出来ないからです。頭の中で「理解したつもり」になっている状態は、しばしば曖昧なまま放置されています。それを口語なり文語なり言語化してはじめて、その論理の飛躍や前提の曖昧さなどが露わになります。そして、この時に初めて、自らの思考が試され、磨かれるのだと考えます。言語化することは、単に他者に伝えるための行為ではなく、自らの考えを明晰化するための不可欠な過程なのです。さらに重要であるのは、自分の言葉で言語化することは責任が伴うという点です。既存の正解をなぞるだけであれば、安全であり、批判を受けることも少ないです。しかし、そこには「自分」が存在しません。一方で、自分のフィルターを通して解釈を言語化することは、「私はこのように世界を見ている」と表明することです。それは誤りを含む可能性もありますが、そのリスクを引き受けた言葉だけが、他者にとって新たな視点となり得ます。ここにおいて、知性とは単なる能力ではなく、一つの態度、あるいは覚悟となります。以上のことを踏まえますと、知性とは「ただ情報を蓄積すること」ではなく、「世界を一度自分の中で咀嚼し、再構成して表現する力」であると整理することが出来るのではないでしょうか?料理にたとえますと、材料を集めることが知性ではなくて、それをどのように調理し、どのような料理にするかに本質があると考えます。同じ材料であっても、料理人によって全く異なる料理が生まれるように、同じ世界を前にしても、人によりその意味は異なります。その差こそが知性の相違であると考えます。そして、この営みは一度きりのものではなく、反復により鍛えられていきます。考え、言語化し、表現して、また考え直す。この循環を繰り返すことにより、フィルターはより精緻なもなものとなり、解釈はより深まり、言葉はより明晰になっていきます。そこから、知性とは、瞬間的なひらめきではなく、むしろ、この循環、反復のなかで徐々に考えが形成されていくメカニズムであると云えるのではないでしょうか。ともあれ、今回もここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。


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