さて、以前に当ブログにて述べたことですが『照葉樹林文化』は中国南部、東南アジア北部地域そして西日本、朝鮮半島南部にて多く見受けられる生活文化であり、さきの柑橘類の栽培の他にはすぐに思い付くものだけでも、養蚕、漆の利用、味噌・納豆など大豆を原料とした発酵食品、蒟蒻といったイモの中に含まれるマンナンという成分を固めた食品、芋・穀類と肉・魚などを交互に積層し発酵させた『なれずし』の存在、喫茶の習慣、餅など粘性の強い食品の愛好、小豆に邪霊を祓う力があるといった考え、鵜を用いて漁業を行うこと、などが挙げられます。
また、水稲耕作も照葉樹林文化に含まれるのですが、水稲耕作は,この文化体系の中においては、さまざまな知識・技術が複合・集約化された高度なものであり、そこから、その年代的な起源は比較的新しいと云えます。
しかし、であるからといって日本列島に水稲耕作が縄文時代晩期頃より波状的にもたらされたのと同時期に照葉樹林文化もまた我が国にもたらされたというわけでもなく、それ以前より雑穀、イモ類などの栽培は広く行われており、その中でも特に植生、気候風土がその文化発祥の地に近く、且つまた当時、列島内にて人口密度が希薄であった西日本は、その文化を受容するに好適であったと考えられます。
つまり、水稲耕作の列島流入以前より、我が国の縄文時代文化に紐付けされる照葉樹林文化が既に存在し、また、それ故に、類似あるいは同一の生活文化に属する水稲耕作も比較的容易に受容そして融合することが出来たのではないかということになります。
そして、こうした事情を背景として据えることにより、弥生時代の西日本水稲耕作社会における青銅祭器である銅鐸に、縄文土器に見られるものと同じ紋様が認められることの意味合いといったものを理解することが出来るのではないかと思われます。
しかし、その後、弥生時代から古墳時代への移行は、このような比較的平和裏と思しき背景でなく、もう少し血腥いものであったことを、さまざまな遺跡・遺物は示し、また、さきの銅鐸も、そうした様相を示す遺物の一つであると云えます・・。
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祝増刷決定!
ISBN978-4-263-46420-5
医歯薬出版株式会社刊
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