K大学大学院の博士課程3年目のある日の夕刻、医専大のE先生が講座に訪れてからしばらく経ち、私と云えば、実験室で新たな実験の準備のため、数種類のジルコニア半焼結体から低速ダイアモンド・ホイール・ソウを用いて試料切片の作成を試みていた時、E先生が実験室に入ってきて「ああ、ちょっと**さん、今S教授が用事があるから来て欲しいと仰っているのだが・・」と、少し遠慮した様子で声をかけて来られた。
私は、感覚的に今回の切片切り出しが、あと30分程度はかかると踏んでいたため、ダイアモンド・ホイールの回転速度をさらに少し落とし、潤滑油(ルーブリカント)をさらに少しだけ追加して「はい、わかりました。この切り出しはあと1時間程度は掛かると思いますので、丁度部屋からペーパーを取って来ようとしていたところです。それでS教授の用事とは何でしょうか?」と訊ねると、E先生は「ああ、それはS先生が直々に話されるけれど、ウチの大学(医専大のこと)の実務家教員のことについてだよ・・。まあ、とりあえず行こうか。」といった感じの返答であった。そこで私は早々に手と顔を流しで洗い、ベルトに引っ掛けていた手拭で拭いて、その手拭を尻ポケットに収め、E先生の後について教授室に向かった。
桝形を抜けて室内に入ると、S先生は入ってすぐの場所に置かれたテーブル周囲にある椅子の一つに座り、ノートパソコンを開いて画面を見つつ、何やら考えごとをしている様子であった。E先生がS先生に「先生、**君を連れて来ました。」と云うと、S教授はPC画面から、こちらに目を上げ「おお、ご苦労さん、それと**、実験の最中に悪いな、しかし、ちょっとお前等みたいに東京に詳しい連中の意見を聞きたいと思うてな・・。まあ、二人とも適当に座れ。」と云われた。E先生と私は空いている椅子に腰を下ろしてから、E先生がおもむろに「S先生、医専大口腔保健工学での実務家教員の件であると思うのですが、それと東京が何の関係があるのですか?」と教授に訊ねた。すると「・・うむ、医専大には実務家教員という、まあ非常勤講師の枠が所謂普通の大学と比べ多いのだが、それで、これまでの実務家教員・非常勤講師は、県内あるいは宮崎や熊本で開業されている研究好きで熱心なウチの研究室に縁のある先生方にお願いしてきたんやが、来年度からは、未来の歯科技工についてのビジョンを持ちつつ臨床活動をされている先生方にも実務家教員をお願いしようと思っておるのだ・・。そこで、お前等、東京もしくはそのあたりの開業医で、誰か相応しいと思う先生は知らんか?」と訊ねてこられた。
以前にも述べたが、E先生はこちらのご出身であるものの、大学学部、研修医期間は東京にて過ごされたことから、その地の歯科医療を含んだ、さまざまなことがらについて詳しく、S教授のお話しを聞きつつも早速、何やら考えている様子であった。
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