2019年6月13日木曜日

20190613 岩波書店刊 森嶋通夫著「なぜ日本は没落するか」pp.38-39

『GHQが日本政府に対して多くの根本的改革を命じたのはよく知られている。新憲法の施行、完全非武装化、財閥解体、土地改革、教育改革などである。そのなかでも、長期的に見て最も強力な影響力を生み出したのは、新旧の教育システムの切替えである。すでに述べたように、それは日本の大人の社会を、新たに育ちつつある青少年の社会から切断した。と同時にそれは日本の国家主義(ナショナリズム)にも決定的な打撃を与えた。
日本のナショナリズムは古く六世紀の頃にはすでに育成されていた。日本が儒教を輸入した頃、中国という強大で、はるかに進んでいた国がすぐ隣に存在していた。また朝鮮も、日本より進んでおり、文化面でもはるかに優越していた。こうした環境の下で、日本人は古代から自己防衛的な態度をとるように躾けられていた。すでに七世紀末に、ナショナリズムの精神が勃興している。国を防衛するには、国は国力を持っていなければならない。こうして日本人は物質主義的な傾向を持つようになり、ひいては世俗生活における豊かさに強い関心を持ち続けるに至ったのである。
戦後、日本人はナショナリズムの危険を思い知らされると同時に、他方では、遅かれ早かれ日本にもヒトラーのような人物が将来登場するのではないかと危惧してきた。しかし現代では、一部の人々をのぞいた一般の人は、そうした危険がすくなくとも近い将来には訪れることはないと安心している。二発の原子爆弾は、日本のナショナリズムを完膚なきまでに破壊した。しかし同時に、彼らは自信を失い、国際的な問題に対する発言もやめてしまったのである。世界の大国の陰に隠れて、いかに痛烈に非難されようとも、日本人は物質的な利益を追求し続けた。しかし1990年代になって右傾化が人目を引くようになった。』

日本ななぜ没落するか
ISBN-10: 4006032056
ISBN-13: 978-4006032050

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ISBN978-4-263-46420-5

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