2024年11月12日火曜日

20241112 次亜塩素酸水について

 次亜塩素酸水は、次亜塩素酸(HClO)を主成分とする水溶液であり、医療や介護、食品加工、家庭など、さまざまな場面での消毒に用いられています。次亜塩素酸は、人体の免疫システムにおいても生成されるものであり、それが細菌やウイルスを除去する働きがあることから、人体に対して安全であり、安心して消毒に用いることができます。

 次亜塩素酸水は、塩化ナトリウム(食塩)や塩酸を電気分解することで生成されます。また、次亜塩素酸ナトリウムを希釈する方法もありますが、この方法で生成されたものは消毒効果が不十分であり、さらに有害な残留物が残る危険性があるため、正しく生成されたものを選択することが重要です。

 さて、次亜塩素酸水は、pH値と有効塩素濃度によって「強酸性」「弱酸性」「微酸性」の3種類に分けられ、それぞれ用途に応じた使用方法が求められます。

①強酸性次亜塩素酸水(pH 2.7以下)は、短時間で多くの病原体を殺菌する力があり、医療機器や施設の消毒に使われます。ただし、酸性度が高いため取り扱いには注意が必要です。

②弱酸性次亜塩素酸水(pH 2.7〜5.0)は、食品加工や厨房の消毒に適しており、安全性が高く扱いやすい点が特長です。

③微酸性次亜塩素酸水(pH 5.0〜6.5)は、ほぼ中性に近く、食品や農産物の洗浄に適しており、日常的な消毒にも安心して使用できます。また、人体や環境に優しいことから、家庭での使用にも適しています。

 次亜塩素酸水の高い消毒力は、細菌やウイルスの細胞膜に直接作用して、酸化反応により、タンパク質や脂質を破壊するためです。その効果は、短時間でほとんどの病原体を死滅させることが可能であり、さらに耐性が強いとされる芽胞菌やカビに対しても効果的であることから、先述のように医療現場をはじめ、各分野にて消毒・感染症対策として多く用いられています。また、次亜塩素酸水は使用後には塩、酸素、水に分解されて、食品や器具に残留物が残らず、安全性も極めて高く、実際、微酸性次亜塩素酸水を使って処理した野菜や果物は、栄養価や風味にほとんど影響がないことが確認されていることから、食品の安全管理の場面においても多く用いられています。

 次亜塩素酸水は、さまざまな場面で使用されており、たとえば、嘔吐物の処理やトイレ掃除などには、500〜400ppmの原液をそのままスプレーすることで、菌やカビ、嫌な臭いを防ぐことができます。ただし、金属に用いる場合は、金属の腐食を防ぐため、スプレー後に水道水ですすぐことを忘れないようにしましょう。また、キッチンでは100〜200ppmに希釈した次亜塩素酸水を、まな板やスポンジ、ボウルなどの除菌に活用することができます。三角コーナーにスプレーしておけば、生ゴミの嫌な臭いを抑える効果もあります。テーブルやドアノブの除菌にも役立ちますが、色落ちのリスクがあるため、最初に目立たない場所で試しに用いてから使用するのが安全です。

 さらに、50ppm程度に薄めた次亜塩素酸水は、加湿器に入れて噴霧することで、室内の空間除菌と消臭を手軽に行うことができます。携帯用スプレーボトルに入れて持ち歩けば、外出先でも手軽に除菌・消臭が可能です。また、口腔ケアとしてもうがいや鼻うがいに使用することができ、虫歯や歯周病、口臭予防にもとても効果的です。

 次亜塩素酸水は、感染症対策にも非常に効果的です。ノロウイルスは感染力が強く、家族内で感染が広がるリスクがありますが、次亜塩素酸水は同じ濃度の次亜塩素酸ナトリウムと比べて数十倍の効果があることが確認されています。また、次亜塩素酸ナトリウムのように漂白作用が強くないため、衣類やカーペットにも安心して使用できます。ただし、次亜塩素酸水は有機物と接触するとすぐに反応して効果が落ちるため、ノロウイルス感染者の嘔吐物や排泄物には、まず汚物を取り除き水拭きをした後に、次亜塩素酸水で仕上げの除菌をするのが効果的です。この際、手袋とマスクを着用し、使用後の雑巾は廃棄するか、再度次亜塩素酸水で除菌することが推奨されます。

 また、インフルエンザ対策としても次亜塩素酸水は有効です。消毒用エタノールは手荒れの原因になることがあり、次亜塩素酸ナトリウムは皮膚に使用できませんが、次亜塩素酸水は皮膚に優しく、手やドアノブの消毒に安心して使えます。さらに、超音波式の噴霧器を用いて室内に散布すれば、空間全体の除菌が可能です。

 次亜塩素酸水は光や温度の影響を受けやすく、劣化しやすい性質があります。そのため、冷暗所にて密閉容器で保存することが推奨されます。特に日光にさらされると、効果が低減するため、遮光性のある容器で保管するのが理想的です。また、使用する際は、用途によって適切な濃度を確認して製品を選ぶことで効果を最大限に発揮できます。

 このように、次亜塩素酸水は、その高い除菌力と安全性から、さまざまな場面において有益です。環境に優しく、残留物が少ないため、持続可能な消毒方法として、今後、さらに多くの分野での活用が期待されています。正しい知識を持ち使うことで我々の生活を清潔に保ち、感染症の予防にも効果を発揮するでしょう。

今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます!


一般社団法人大学支援機構


~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

*鶴木クリニックでのオペ見学につきましても承ります。

連絡先につきましては以下の通りとなっています。

メールアドレス: clinic@tsuruki.org

電話番号:047-334-0030 

どうぞよろしくお願い申し上げます。