2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)は、国際社会にとって大きな転換点であった。このパンデミックにより、各国は急速に内向きな政策を取るようになり、国際協調が試される局面を迎えた。同時に、社会の不平等が顕在化し、政府に対する市民の信頼が揺らぐ事態が頻発した。これらの動きは、1848年にヨーロッパ各地で発生した「諸国民の春」と呼ばれる革命運動に類似していると考える。当時、経済不安や不平等が背景となり、市民は自由や権利を求めて蜂起した。現代においても同様に、パンデミックは社会的亀裂を明らかにし、市民が不満を抱く状況を生み出している。
2022年2月、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始した。この行動は、現状を武力で変えようとする試みであり、国際秩序に重大な挑戦を突きつけた。ロシアは国際社会から経済制裁を受けながらも、依然としてその意図を貫いている。この動きは、1848年の革命運動において保守勢力が革命の波に直面しつつ権力維持を図った姿勢と共通点があると考える。一方、中国は侵攻を続けるロシアを注意深く観察し、それを分析するなかで、自国の国際的地位を強化する戦略を進めている。中国はロシアとの関係を強調しながら、「一帯一路」構想を通じて中東地域での影響力拡大をはかっており、これまでの欧米主導の国際秩序に対抗する姿勢を強めている。
2023年には、ハマースによるイスラエルへの奇襲攻撃が中東全体の不安定化を招いた。この出来事は、1848年のヨーロッパにおける革命の伝播に似ている。当時、自由や独立を求める運動が複数の地域で同時多発的に広がり、各地の権力構造を揺るがした。同様に、現在の中東情勢も地域全体に広がる緊張を生み出している。さらに、中国による台湾侵攻や南シナ海での軍事行動の可能性も取り沙汰されており、これがアジア太平洋地域に新たな不安をもたらしている。この動きは、19世紀のオーストリア帝国がハンガリーやイタリアに対して武力行使で統一を維持しようとした歴史と重なる部分がある。現在の中国は、台湾問題を巡る国際的圧力と国内ナショナリズムの高まりの間で困難な舵取りを迫られている。
これらの動きは、我が国にも重大な影響を及ぼす。我が国にとって最優先課題は安全保障の強化であると考える。これまでの日米同盟を基盤として、自らの防衛力を高めるとともに、東南アジア・オセアニア諸国との更なる連携強化が求められる。また、経済面においてはサプライチェーンの多角化を進め、中国への依存を軽減する努力が必要と考える。同時に、中国との経済関係も維持しつつ、対立を回避する独自の外交政策を進めることが重要であると考える。
歴史を振り返れば、1848年の革命は多くが直接的には失敗に終わったものの、後のヨーロッパにおける近代化や民主主義の進展に大きく寄与した。同様に、現在の国際社会が直面する混乱も、新たな国際秩序の形成に繋がる可能性が少なからずあると云える。現在、世界が多極的秩序への移行が進むなか、我が国は、国際社会での平和を推進する役割を強化して、地域の安定を維持するために積極的に行動する必要があると考える。
そして、上述の現代の課題に対処するためには、歴史的視座を持つことが不可欠と云える。1848年の革命とその後のヨーロッパの変化を教訓とすることにより、現代の混乱をより深く理解し、新たな秩序を構築するための道筋を明瞭化することが出来るものと考える。そして、こうした歴史的視座に基づいて、我が国は長期的な戦略を構築し、未来への備えを検討することが良策であると考える。
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ISBN978-4-263-46420-5
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