そのお店は皇居(江戸城)外堀にあるイタリアンレストラン兼喫茶店であり、会食場にも近く、私も以前に興味を持ったことがある。そこで最寄り駅からJR総武線に乗り、錦糸町、秋葉原、御茶ノ水も過ぎて飯田橋に着いた。ここの駅舎は割合長く工事を行っていたが、それもどうやら落ち着いた様子であった。ともあれ、早稲田通り側の出口から出て、神楽坂方面に少し歩いてから道を渡って喫茶店側に行った。
そこから喫茶店に入りはじめに思ったことは、外国人が多いということであった。こうした経験は私としては日常的とは云えないため、少し緊張していたが、その点、E先生の方はまったく臆する様子もなく、店内でスイーツとコーヒーの注文を済ませて、丁度空いていた二人掛けの屋外席に腰を下し、そしておもむろにPCを鞄、クッション・ケースから取り出し開いてから何やら作業を始められた。そして本日の出来事の概要をS教授をはじめK大学の歯科生体材料学研究室の先生方、そしてK医専大の先生方宛てに報告のメールを作成されたが、その主旨は「本日、D先生からのご紹介にて東京都**区にあるCH先生の医院を訪問させて頂きました、こちらは設備、スタッフ共に優れていると思われます。そして、そうした院内環境を構築されたCH院長に対し、K医専大口腔保健工学科の実務家教員への就任を打診してみたいと考えますが如何でしょうか?」といったものであった。これついては「これでどうかな?」とE先生から見せられており、私は「少し急いではいないでしょうか?」と訊ねてみたが、E先生の反応は「いや、この先生のところには、おそらく今後すぐに首都圏の医専大からも同様の問い合わせが来ると思うから、常時中央にはいない我々は、こうしたことは「たっちんこんめ」でやってしまった方が良いこともあるんだ・・。」とのことであった。
そしてまた、大学関連のメールを処理して一段落ついた時、E先生のスマートフォンに着信があった。見るとそれはS教授からであり、おそらく、さきにE先生が送ったメールを見ての反応であろうと思われた。E先生はすぐに応答してS教授と話を始めた。
我々が座っていた屋外席には、その他の席にもかなりお客さんがおられて、E先生が通話しているのも少し周囲に迷惑と思われたのか、私に「少し移動する」というゼスチャーを指でしてから席を立った。そして、この時気が付いたのは、我々のいる座席の周囲は半分程度が外国人であったことである。これは入店時にも思ったことではあるが、座席の様相もやはり、そのようになっているのかと、この時、あらためて認識を強くした。
ともあれ、そのように考えてみると、現在我々がいるこの環境とは、何だか外国のスパイ映画の一コマのようにも思えてきて、それはそれで面白く感じられた・・。いうなれば、我々は中央からは離れた地であるKから訪れた、ある分野の情報収集者であると同時に研究者でもあり、中央にて我々が仕入れた情報に基づいてKにある本部への問合せを行い、検討を促すといった役回りがあり、こうしたところも何だか秘密諜報機関めいていて、そして周囲の環境も前述のようなものであったことから、面白く感じられたのだろう・・。
やがてE先生が戻って来られると「今日の会食でCH先生に実務家教員の件は打診してみることになったよ・・。職階名や給与などの待遇面については、現在上で練っているとのことだから、まあ全学共通で進めて行こうと思っているんだろうねえ。まあ、そういうことだから、引き続きよろしくお願いします。」とのことで、またPCでの作業に戻ったが、それもすぐに終えたようであった。そこでしばらく、このお店についてや飯田橋界隈で知っていることの雑談をしていたら、時刻は会食開始時刻まで15分と近づいて来たため、食器類をセルフサービスの返却口に戻して店を後にした。
こちらから会食会場となる西洋料理店は徒歩にて5分ほどとのことであったが、多少早く着いていた方が良いと思い、我々はそのまま向かった。
今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
順天堂大学保健医療学部
祝新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5
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