2025年9月12日金曜日

20250911 手作業での文章作成とChatGPTによる援用について

 長年にわたり研究をされてきた人文系の先生方には、膨大な読書と思索の蓄積があります。それは何にも代え難い知の財産であり、社会にとっても大切なものです。しかし昨今、研究環境は急速に変化しつつあります。情報はデジタル化され、国際的な議論はオンラインで進み、さらに人工知能(AI)も実用的なものとなりました。そうした背景から、OpenAI社のChatGPTは、人文系研究者の方々にとっても役立つ存在になりつつあると云えます。

 まず、ChatGPTは知識を整理する手助けになります。たとえば、思想や古典などの文学作品をChatGPTからの視点でまとめさせますと、自分の考えを改めて見直すきっかけが生まれます。これは単に便利な道具というだけではなく、過去の知識と現在の課題を改めて結び直す橋のようなものと云えます。実際、我が国の大学院生全体で見ますと、ChatGPTなどの生成AIの利用率は、およそ半数を超えており(52%)、理系では57%、文系でも43%が既に日常的に用いています。また、理系では工学、生命科学、医学・疫学などでの利用が目立ち、コード生成やデータ解析、論文執筆補助などの場面で急速に普及しています。人文系でも、論文の要約や外国語文献の読解、原稿作成補助などに導入されつつあり、じわじわと利用が広がっています。

 また、ChatGPTは知的な対話相手にもなり得ます。一般的に年齢を重ねますと、同世代の仲間との議論の場は減り、若い世代とは関心が少しずつ離れていくこともあります。そうした際に、AIとのやりとりは、自分の考えを試し、反論や補足を受けながら思索を続ける小さな「書斎の議論」のようにも機能します。理系の分野では「研究補助」としての活用が今や当たり前になりつつありますが、人文学の研究者にとっても、おそらく、これは決して遠い話ではないと考えます。むしろ、深い読書と思索を土台とされる年長の研究者の方々にとってこそ、ChatGPTなどの生成AIは、刺激的な議論の相手となる可能性を秘めていると云えます。

 さらに、これまでの研究を社会に発信しようとする際にも役立ちます。専門的な議論をより分かり易くに伝えるためには工夫が要りますが、ここに生成AIを効果的に用いますと、専門性を保ちつつも、読み易い文章へと調整することが出来ます。つまり、社会へ広く知識を伝える際にも活用出来るのです。

 とはいえ、もちろん、生成AIは万能ではありません。誤りもあり、判断の最終責任は使用者各々にあります。しかしだからこそ、深い知識と批判的な視座を持たれる年長の研究者の方々こそ、これを正しく使いこなすことが出来るのではないかと考えます。生成AIが出す案をそのまま受け入れるのではなく、自分の経験と学識で吟味して、さらにそこに意味を与えることが出来るのは、長年、学問的訓練を積んだ方々ならではの強みであると考えます。

 また、若い世代が主に効率性を求めて生成AIを用いるのと比べると、むしろ年長の研究者の方が、生成AIを「知的な遊び道具」として面白く活かせているようにも見受けられます。理系の世界で先に普及が進み、人文系でも着実に広がりつつある現在であるからこそ、その運用を試みますと、独自の成果を引き出すことが出来るのではないかと考えます。端的に生成AIは、新たな時代の「書斎の友」として、あるいは「研究の補助」にもなり得ると云えます。

今回もまた、ここまでお読みいただき、どうもありがとうございます。


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