2025年1月19日日曜日

2250119 紀州和歌山の食文化について:師匠からのお電話から思ったこと

 つい先日、文系修士院生時代の指導教員(師匠)からお電話を頂きました。過日、お年賀は頂戴していましたが、今回の電話では、近況や今後の活動の展望について伺うことができました。こちらの師匠は、私と同郷、千葉県ご出身の関東者(かんとうもん)であり、就職を機に紀州和歌山へ赴き、定住された方です。また師匠は、古来より紀州和歌山からの移民が多い県内海側地域のご出身であり、さらに、その苗字は和歌山県海南市が発祥とされることから「先祖返り」ともいえる側面があり、それは師匠御自身も認めておられました。

 ともあれ、師匠は紀州和歌山の歴史文化全般に造詣が深く、とりわけ食文化については知る限り随一と云えます。これまでに私が当ブログにて、紀州和歌山の食文化を題材とした記事を複数作成してきましたが、それらで述べたことの大半は、こちらの師匠から学んだものです。しかし、私が紀州和歌山の食文化に能動的な興味を持ち、その価値を認識するようになったきっかけは、それ以前の南紀白浜でのホテル勤務経験にあります。かつて、私が勤務していた白良荘グランドホテルは、地元食材を活かした料理によって高く評価されていました。そこでの勤務では、地域の食文化に触れる機会が多くあり、また、ホテル以外での日常的な食の経験も大変新鮮なものでした。そして、こうした経験を通じて、次第に地域の食文化に対し、さらに、我が国の食文化に対しても、それまでとは異なった視点を持つようになりました。具体的には、紀州和歌山は我が国の食文化に不可欠な醤油や鰹節の発祥地として知られ、さらに梅干しの生産量も全国一を誇ります。こうした我が国の食文化の基軸とも云える重要な食材がこの地で生まれた背景には、その豊かな自然環境と長い歴史の中で育まれた人々の知恵、そしてその結晶である技術があると云えます。また、当地の熊野本宮大社の主祭神である家都御子神が樹木や穀物(食物)の神とされている点も、地域食文化の奥深さを示しているものと考えます。そして、こうした考えや感覚とは、客観的な認識のみでは不十分であり、一定期間その地域に埋没して生活することによってのみ得られると考えます。それ故、書籍や文献資料のみでの調査、学習では不十分であり、実際にその地に住み、その文化に地元の住民として触れることが不可欠であると考えます。そして、そうした経験を経ることにより、やがて地域の諸文化が対自化され、理解が深まるのではないかと考えます。その意味から、紀州和歌山は私にとって、地域のみならず我が国の食文化について再認識させてくれた地域と云えます。

 当然ではありますが、食文化をはじめ諸文化は、その地域の歴史文化や自然環境などと密接に結節しており、とりわけ思想文化が全般的に乏しい我が国にあって食文化とは、強い伝統的なアイデンティティを持つものであると云えます。そうした視座から、紀州和歌山の食文化が我が国全体の食文化のなかで、いわば過分とも云えるほどの重要性を持っていることは、端的にこの地域には、過去に対する実直な洞察と、それを積み重ねる努力があったからであると考えます。そうした意味で、私にとって紀州和歌山の経験やそれに基づいた知識や見識は、単なる記憶のみに留まるものでなく、これまでの、そしてまた、これからの活動や発信にも繋がる大切な基盤であると云えます。食文化とは、単に「食べる」という全ての動物が持つ本能的な行為を超えて、地域と、そこに住む人々の営みすなわち諸文化との結節そのものを象徴しており、その中には、積み重ねられた過去だけでなく、未来をも築く力を秘めているのではないかと考えます。

今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます!

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