ヨーロッパ文化専攻修士課程を修了した私は、学士編入試験を経てK医療専門職大学の口腔保健工学科の第二学年の学生となったわけであるが、これは周囲の主に現役で入学した学生さん達と比べると、明らかに浮いた存在であり、それは卒業まで変わらなかった。私としても、こちらから歩み寄った方が良かったとは思うのだが、恥ずかしかったのか、そのままであった。
また他方で3年生に進級後しばらく経ってからはE先生からの誘いにより、K大学での実験に参加することとなり、それとアルバイトとの両方により、歩み寄るにも、あまり時間に余裕がなかったのだとも云える。それでも試験前にはノートを貸してくれたり、一緒に勉強をしたりして、どうにか医専大での3年間は無事に過ごし、歯科技工士国家試験に臨むことが出来た。
当時、国内では東京と広島に国立大学法人による四年制の歯科技工士養成課程が設置され、その他の同四年制課程は、公設民営の専門職大学にて、ここ九州では熊本とK、中四国では岡山と徳島、近畿・関西地域では滋賀と和歌山、中部東海地域では静岡、北陸地域では石川、関東甲信越地域では、千葉、新潟そして群馬、東北では宮城、そして北海道にあり、全国で合計15大学あった。
このうち国立大学法人である2大学以外の13専門職大学は全て、設置後から数年しか経ておらず、その継続的な運営も危ぶまれていたが、いざ開学して蓋を開けてみると、立地する地域により若干の偏差はあったものの、総じて受験者数は多く、好調な滑り出しであり、その後も受験者数は現在に至るまで全体的に微増傾向を示しているとのことである。
入学後、そうした事情に詳しい学内知人の述べるところによると、立地する地域にかねてから存在する公立の医療系大学への受験を希望する層が、設置学科そして学費などの類似点から、少なからず医専大の受験に流入してきているとのことであった。
とはいえ、それは医療系大学の花形と云っても良い看護学科などについてのハナシであり、私が在籍する口腔保健工学科などは、その中で最も目立たない学科であり、総じて、どの医療専門職大学においても、他学科と比べると人気が乏しい傾向があった。
これはひとえに、歯科技工士という医療専門職の職分があまり広く知られていないからと云え、また、その中でも特に大きいと思われるのは、実際の臨床現場に出て活動している歯科技工士の姿を見ることが極めて少ないということである。
しかしながら、私はこうした事情があることにより、Kに縁のある開業歯科医師の先生から声を掛けて頂き、そして入学に至ったわけであるが、そこからの3年間はさきに述べた事情によってか、とても短く感じられた。また、あまり娯楽らしい娯楽もなく、わずかに娯楽と云えば休日のアパートで寝そべりつつ読書をしたり、あるいは近くのツタヤにてDVDで映画作品をレンタルして観るといったものであった。
実家からの連絡は月に一度ある程度であり、また、Wにいる兄や延岡勤務となったBからの連絡もまた、概ね同様の頻度であり、個人的な感覚としては、初めての一人暮らしのわりにはホーム・シックにもならなかったと云える。あるいはまた、そのようになれる時間もなかったと云えるのかもしれない・・。
ともあれ、そのような調子にて、どうにか国家試験そして卒業に至ったわけだが、たしかにその間に歯科についての勉強はかつてないほどにしたと云える・・。入学当初は人に何本の歯が生えており、また、それら全てに固有の名称や、さまざまな形状的特徴があることを何一つ知らなかった私としては、それなりの進歩と云え、また、それ以上に手先をよく使ったといった記憶がある。これはほぼ修行と云って良いほどに使ったのではないだろうか・・。
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