2022年5月5日木曜日

20220504【架空の話】・其の93 【モザイクのピースとなるもの】【実習篇①】

「以前に行った精密鋳造の実習の頃よりも、さらに少し暑くなってきましたが、今回は皆さんに「鑞付け」の実習をして頂きます・・。

さて、今回の「鑞付け」でもまた、以前の鋳造実習と同様、溶けた合金(溶湯)を扱いますので、少し暑いかもしれませんが白衣はキチンと着用していてください。ええ、もし袖が長いようでしたら、腕まくりの要領で調節してください。あッ、その白衣は袖口を絞ることが出来るのですか・・。

はい、今回の実習では、この実習室で鑞付けに用いる試料を作製してから、そして隣の鋳造実習室で鑞付け作業を行う流れになります。電気炉はもうセットしてから数時間は経っていますので、お気づきの方もいるかもしれませんが、現時点で、向うの部屋(鋳造実習室)はもうかなり暑くなっているはずです。そうした事情もありますので、これまた以前と同様、こまめに水分は摂ってください。

・・あッ、それと、今回も技工用のバーナーを使いますので、髪が長い方は、後ろで束ねるようにしてください。技工作業の際に大変ですし、バーナーの火で髪が燃えてしまうような事故も避けたいですからね・・。

それと、今回は目の前のバーナーに備え付けのワックスタンクにあるワックスは使用しないで、これまた予め机の上に準備してあるスティッキーワックスを主に使います。成分は箱に記載されていて、また箱の中の説明書にも書いてあると思いますので、そちらを参照してください。ええ、もう箱は開けて大丈夫ですよ・・。そう、よければ手に取って触ってみてください・・。今回の実習に使うワックスはどんな感じですか? ええ「触っただけでは分からない」ああ、たしかにそうですね・・。しかし、もう少し触ってみてください。以前の鋳造実習で用いたインレーワックスやパラフィンワックスやユーティリティーワックスとは少し違いませんか・・?ええ、色が違うのはたしかにそうですね・・。その他には・・ああ、そうですね。持った感触が硬いですね・・。これは以前の鋳造実習の際、スプルー途中に付ける「湯だまり」に用いたユーティリティーワックスのような柔らかい材料と比べると、大分違うように感じられるのではないでしょうか?

そしてまた、こうした性質から、どのような用途のワックスであるか検討してみるのも面白いかもしれません・・。

では、次に今回用いるワックスインスツルメンツですが、これらも前にお伝えしたように、あまり長時間バーナーの火を当てないでください・・。先週の実習後、一昨日になってから全部を熱湯に入れて、しばらく浸けてから、取り出して、まだ熱いうちにウェスでワックスを拭き取ってキレイにしました。おそらく、今回の実習の後もやることになるとは思いますが、皆さんも使用する各器材は出来るだけキレイに使いましょう。まあ、言うまでもないことであるのかもしれませんが・・。

あと、机の上に今回の鑞付け実習での試料作製の工程毎でのサンプルも置いていますが、では、これらを用いて今回の実習行程の説明を続けさせて頂きます。

では、まず、こちらのサンプルには、二つの曲げられた金属板が、石膏様の材料で満たされた型枠内に設置されていることが分かると思います。そして、これら二つの金属版の間には、ごく僅かな間隔があることも認められると思います。

そして、この間隔に、溶けた合金すなわち「鑞」を流し込み、二つの金属板を「鑞付け」することが今回の実習の目的になりますが、はじめに、これらの間隔が広すぎても、あるいはわずかであっても双方が接触していても試料作製は困難になります。その間隔は、実習書に記載があると思いますが、大体、0.05~0.2㎜程度内に収めてください。具体的に表現しますと髪の毛1、2本程度の間隔になりますので、今回もまた、そこそこ慎重な作業になると思います。

また、この微細な間隔を保持したままで二つの金属板を固定するのに用いるのが、さきほど皆さんに触って頂いたスティッキーワックスになります。そして、そのように考えてみますと、さきほど、そちらの方、ええと、Aさんですか?がスティッキーワックスを触った感想で仰っていた「持った感触が硬い」にも何か意味があるのではないかとも考えられますね・・。

さて、次は試料作製に用いる金属板についてです。皆さんの目の前に銅とステンレス鋼を材料とした二種類の概ね同一寸法の金属板がありますが、全ての両端、つまり鑞付け部位となる部位については予め比較的高番手のサンドペーパーで研削して酸化膜は除去していますが、これらの金属板をはじめに屈曲させて、後で型枠内の埋没材に固定し易い状態にしてから、両金属板の間隔を設定し、そのままの状態を保持したままで、こちらのスティッキーワックスを用いて固定します。

使用する金属板の種類ですが、今回は班員が丁度10人ですので、出席番号最初の5人が銅板を用いて、そして後半の5人の方々はステンレス鋼を用いて試料を作製して頂きます。また、私も皆さんと一緒に試料を作製しようと思いますので、それぞれの工程の中で分からないことやご質問などがありましたら声をかけてください。

では、はじめにそれぞれの試料作製に用いる二枚の金属板を選んでから、そちらの器具を用いて両方とも屈曲してください。」

今回もまた、ここまで興味を持って読んで頂き、どうもありがとうございます。
順天堂大学保健医療学部


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