2017年11月30日木曜日

20171129 合金について④

以前にも触れたが、これまで歯科用合金として多く用いられているものは、そのイオン化傾向の低さ(口腔内での安定性、人体為害性の低さ)から、貴金属を主たる組成とする合金であり、とりわけ金合金はその用途により、組成が異なる数種類が存在する(タイプⅠ~Ⅳ、白金加金)。

また、窩洞部への直接金修復(金箔充填)以外に用いる金合金とは、鋳造操作により所望の形状を得る手法(歯科精密鋳造)が採られるが、この手法により作製される補綴物とは、口腔内における用途により、その材料となる合金の選択が為される。

つまり、金本来が持つイオン化傾向が低く、そして展延性に富むといった性質から、その組成比が相対的に高い金合金とは、基本的に柔らかであり、大きな荷重のない部位への修復に用いられる、一方、耐食性を保持しながらも熱処理により機械的性質の向上を図ることが出来る程度に合金化された、すなわち他の金属が有意に含まれる金合金とは、荷重のかかる部位への補綴物の作製に用いられると評し得る。

とはいえ、この合金化された金合金と云えども、金の成分は70%程度以上は含まれていることから、その価格とは決して安価とは云えず、それ故、これら金合金とは保険適応の歯科用合金として用いられることはない。

そうしたことから、開発されたものが歯科用銀・パラジウム合金であり、これは通称金パラと称されているが、この合金とは分類としては銀合金であるのだが、JISの分類において金銀パラジウム合金と正式に称されていることから、以下金パラと記す。

さて、この金パラの主たる組成とはJIS規定によると金12%、パラジウム20%以上、銀40%以上(残り組成の多くが銅)と示されている。

とはいえ、その組成は時代と共に変化しており、我が国経済が振るっていた時期においては金の成分が20%含まれていた時期があったと聞く。

ともあれ、この金パラの主たる組成である銀とは、イオン化傾向は低いものの、硫化(銀の場合黒化する・『いぶし銀』とは表面が硫化した銀のこと)の傾向があり、この性質とは口腔内環境において決して望まれるものではない。

そして、この銀の硫化傾向を抑える性質を持つ金属が、金パラに含まれる他の貴金属成分である金・パラジウムであり、またパラジウムは銀の硫化傾向を抑えると同時に、熱処理によって銀・パラジウム規則格子の形成が為され機械的性質の向上にも大きく寄与している。

しかしながら、昨今は金のみならずパラジウムの価格も高騰し、この金パラの安定的供給もまた強く懸念されている。

そうした事情から近年注目を集めている歯科材料がセラミックスであるジルコニア、あるいは医科分野における人工股関節などにて以前より人体内にて用いられてきたチタン、コバルトクロム合金などであるが、これらに関しては現在もさらなる諸性質の向上が図られている実験、研究開発の最中であると云える。

ともあれ、いずれにせよ近い将来、これら材料は歯科分野において、より多く用いられることになるのではないかと考えられている。

今回もここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。

昨年から現在までに日本列島にて生じた一連の地震・大雨・水害等の大規模自然災害により被害を被った諸地域のインフラの復旧・回復そして力強い復興を祈念しています。

昨今再び噴火をはじめた新燃岳周辺の方々の御無事をも祈念しています。