また、そのように考えてみますと、当ブログはもう終えて閉じるべきであるのかとも思われるところですが、それと同時に2500記事程度までは、そこまで大きく苦労をすることなく到達出来るようにも思われるのです。それ故、休息期間は今しばらく継続して、具体的には来年の3月末頃までは基本的に休止し、その間も時々は文章の作成自体を忘れないように、このように新規での作成を心掛けたいと考えています。
そういえば、このブログ記事作成の休止期間に、どうしたわけか「1万時間の法則」という言葉を耳にする機会が何度かありました。そこで、その意味をネット検索で調べてみますと、これは単純に「時間を積み重ねれば熟達する」という意味ではないことが分かりました。むしろ、意味のある練習を長期にわたり継続することで技能や思考が一定の水準に達する、という趣旨での経験則であり、「1万時間」という数字も多分に象徴的な値に過ぎません。それよりも、その本質は、長期的な継続を通してしか得られない変化があるという点にあり、これは多くの領域に通底する考え方であるように思われました。
また、当ブログについて考えてみますと、その価値は論文のように投稿先雑誌毎の評価指標により数値化されるわけでもなく、スポーツのように点数や審査員による判断があるわけでもありません。そのため、特定の記事やブログ全体の意味を、どのように位置づければよいのか分からず、曖昧な不安を覚えることもあります。その点で、この「1万時間の法則」は、明確な指標を持たない営みの価値を測るための、ひとつの座標軸になるのではないかと思われました。
とはいえ、文章表現の熟達は「書けば書くほど上達する」といった直線的なものではなく、むしろ長く継続するほどに、自らの未熟さや無知に気付いてしまうといった側面があります。さらに、ある程度継続しますと、ブログ記事の作成といった行為自体の意味を問い直したくなる時期も訪れます。やがて継続の理由も、技術向上や成果の可視化といった外的指標では測定され得ず、むしろ「文章の作成を通して思考が組み換えられ、世界の見え方がわずかに変わっていく」内的な効果に重点が移っていくのではないかと思われるのです。
近現代史や国際関係論や考古学、古代史あるいは民俗学といった分野に触れるたびに、それらは思考の層となり、徐々にこれまでとは異なった景色へと導いてくれます。そして、文章の作成とは、単に知識を扱う技術ではなく、世界を認知する方法そのものを再構築する営みであると云えるのかもしれません。その過程で、これまで所与・自明であった前提や価値観が次第に揺さぶられ、やがて自らの思考そのものが、いつの間にか変化していることに気付かされます…。
長期的に取り組むほど、継続は「上達のため」だけではなく「対象への理解を深めるため」に行われるようになります。文章化することは、対象の構造を理解するための方法であり、思考を透明化する媒体でもあると云えます。文章化することにより曖昧であった概念が言語としての輪郭を持ち、推敲を通じ、さらに明晰化されます。そして、こうした循環を何度も反復することで、意識の奥に沈んでいた思考が徐々に結晶化していくのではないかと考えます。
そして、この視座から「1万時間」を見直してみますと、それは単に熟達の到達点を示す数字ではなく、「ある程度の継続期間が思考をどのように変化させるか」を示す象徴とも見えてきます。長期にわたる継続的活動は、自覚され得る成長を直線的に保証するものではありませんが、同時にそれは、さまざまな質の時間を含み込みつつ、緩徐的に認知の構造を変化させます。それ故、成長を実感できない時期も、不意に新たな、そして明晰な視野が開ける瞬間も、同じ時間の連続線上に位置付けられるものと云えます。時間が精神に及ぼす作用とは、多くの場合、そのように複雑で非線形なものであると云えるでしょう。
ともあれ、そうしたことから、対象が変わらなくても、ある程度の期間をかけて向き合えば、その対象の見方や理解の仕方は変わっていきます。その意味で、文章の作成とは、その過程において認知の癖や偏りに気付き、それを調整する手掛かりが示され、内面での調和を取り戻す行為でもあるとも云えます。そして、その継続とは、こうした自己の再編成が緩やかに進行することであり、あるいはむしろ「1万時間」という区切りを越えてから、より本質的な変化が生じるのかもしれません…。
そうしますと、重要であるのは「1万時間」という数字そのものではなく、その継続した時間の中で何が変わり、何が見えるようになり、世界との関係がどのように変化したかということであると云えます。そこから、文章の作成とは、自らが世界に触れるための営みであり、そして、時間をかけて、その精度を研ぎ澄ませることが、世界に触れ、自らの考えを整える営みと云えるのではないかと思われます。
そして、今回もここまで読んでいただき、どうもありがとうございます。
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