2020年5月11日月曜日

20200510 架空の話・其の11

【架空の話】
「ともあれ、私は川沿いに建つ銅像に近づき、その説明文を読んでみた。説明文は左側に日本語、中央に日本語で書かれた年譜、そして右側は英語にて記されていたが、この左右の説明文章を比べながら読んでいると、さきほどまで英論文を読んでいた影響からか、何やらブツブツと口に出していることに気が付き、我に返った。しかし、そこで興味深いと感じたことは、説明文の最後に、この方の死を当時、ロンドン・タイムスが報じていたことを記している点である。

それから銅像を離れ、川を渡り、なおも先に進むと、さきほどの観覧車と、それを載せた建物が近くなってきた。信号を幾つか渡り、いよいよ建物に近づくと、これはJR線のK中央駅(かつての西駅)の駅ビルであることが分かった。こうしたビルと観覧車の組み合わせは、これまで、あまり見たことがなかったことから、これにも少し驚かされた。また、この駅ビルには、全国的展開の衣料量販店が多数入っており、それらのディスプレイから地域の特徴などを考えることは、古着屋でアルバイトをしている自分にとってはそれなりに面白いものであった。
ビルの上階に行ってみると、さきほどの観覧車の乗り口が設けられていたが、そこには若いカップルが何組か並んでいたため「ああ、この観覧車はそういう方向けなのだ。」と一人合点し、その場を離れた。ちなみに後日、私がこのKに在住してから「あの観覧車に乗るカップルは別れるってジンクスがあるんだ。」と、若干ワイルドな感じの地元御出身の方(E先生)から教えられたが、その時に不図、こうしたものは「I公園のボートにカップルで乗ると別れる。」というジンクスの当地版なのだと悟った。おそらく、こうしたジンクス(都市伝説とも云う)は国内どの地域に行っても類似したものがあるのではないかと思われる。
このようにK中央駅駅ビル内を徘徊していると、夕刻過ぎとなり、あたりも薄暗くなってきたため、夕食を摂ろうと、さきほどBに教えてもらった店に向かった。駅ビルを出てから中央郵便局前の道をしばらく歩き、交差点を左手に曲がるとJR線の踏切の近くにその店はあった。時刻も丁度、夕食時であり店内は比較的賑やかであった。客層は、背広を着た方々や予備校生と思しき若者が客の大半を占めていた。おそらく、かつてBもこうした予備校生の一人であったのだろうと不図思ったが、早々にカウンター席に着きメニューを開き、あまり考えることなく「とりあえず餃子を・・。」と思ったが、ここでまた不図我に返り「いや、明日は編入試験だぞ・・そこでは面接もあることだから餃子は避けておいた方が無難だろう・・。」と考え直し、結局、注文したのは麻婆丼と野菜炒めであった・・。これらの味の方は、この店の共通する特徴で「少なくともハズレではない・・。」といったものあったが、麻婆丼を食べている時に先生とCさんのことが頭をよぎり、そして「そういえば、CさんもK出身だと聞いていたが、市内なのだろうか・・。帰ったら聞いてみよう。」と、あまり意識せずに思い至った・・。ともあれ、この店の料理は、量は充分過ぎるほどであり、食べ終えた時には少し苦しいくらいに満腹といった状態であり、店を出る際に「もう少し散歩をしてからホテルに帰ろう・・。」と思った。
とはいうものの、店を出て、どの方面に散歩しようかと思案していると「明日の試験場を見ておいた良いのではないか。」と、これまた不図閃き、スマホを取り出して大学の場所をグーグルマップにて検索すると、どうやら歩いて行けない距離でもないことが分かり、とりあえずを食後の散歩も兼ね、大学まで歩いていくことにした。そして、再度、K中央駅前を通り、市電沿いに歩いた。横に市電が走っていたことから「帰りはこれに乗って近くの停留所(電停)で降りればいいか・・。」などと、歩きつつ少し汗ばんできた頃に思ったが、そこからは意外なほど早くに大学に着いた。その立地は、研修の利便性も兼ねてか、市立病院の向かいにあり、また、地元K大学のキャンパスもほど近く、どうやらこの辺りは、昔からの文教地区であることが見て取れた。
また、この大学は大学と云っても、私のイメージする大学とは若干異なり、どちらかと云うと、都会にあるサテライトキャンパスや都市部の専門学校をイメージさせた。後でわかったことだが、この大学には占有するグラウンドはなく、部活動などは、近くにあるK大学のそれを間借りをして行っていた。
それでも、建物自体は新しく、また軽薄な感じもなく、茶色を基調とした全体的に重厚なものであったと云える。また、大学の正門近くの看板に、大学名と学科名が各々記されていたが、そこから、私が編入試験を受ける口腔保健工学科と、Cさんが卒業した口腔保健学科、そして看護学科、作業療法学科、理学療法学科、管理栄養学科の6学科さらに大学院修士課程が設置されていることが分かった。こうしたことは事前に送付された大学資料やネットのHPを見れば分かることではあるのだが、実際に大学まで来て確認してみることにより、明晰に記憶されるものなのだと云えよう。
そして、大学の周囲をグルリと回り、すぐ近くにある停車場(電停)で市電に乗り、K中央駅で乗り換え、Tの外れにあるホテルに戻った。ホテルに着いた時刻は21:00少し前であり、自分としては適度な運動をした感もあり、また、満腹気味であったお腹も丁度良い感じにこなれていた。部屋に戻ると、早速風呂に入って汗を流してから、報道番組を見つつ明日に備えて持参の英論文を読んでいたが23:00を過ぎた頃には徐々に眠たくなってきていることに気が付き、スマホと部屋の電話双方で起床時刻をセットし、歯みがきをしつつ、なおも漫然とテレビ番組を眺めていたが、時刻が深夜0:00になる頃には、大分眠たくなり、口を濯いでから予め用意していた湯冷ましを数口飲んでから床に就いた。この一日は初めての経験が多くあり、多少芯が疲れていたのか、ストンと寝入ることが出来たようだ。
*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!


日本福祉大学
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ISBN978-4-263-46420-5

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