2023年1月29日日曜日

20230128 株式会社東京堂出版刊 大塚初重 小林三郎 熊野正也 編著「日本古墳大辞典」 p.544より抜粋

株式会社東京堂出版刊 大塚初重 小林三郎 熊野正也 編著「日本古墳大辞典」
p.544より抜粋
ISBN-10 ‏ : ‎ 4490102607
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4490102604

富雄丸山古墳

奈良県奈良市大和田町丸山の丘陵頂上に立地する径86m、高さ10.5m(東側)を測る円墳で、墳裾には葺石が施され、墳頂より埴輪片(円筒・家形・盾等)が出土している。内部主体は割竹型木棺を安置した粘土槨で、2段に掘られた土壙(南北10.6m、東西約6.4m、深さ1.35mの段目の壙内に、南北8.45m、東西3.9m、深さ2.1mの2段目の墓壙がある)の底面は溝がめぐり、円礫が敷かれ、灰白色粘土を敷きつめている。この粘土床は厚さ0.4mあり、まわりは円礫を詰めている。木棺は粘土床の痕跡から、長さ6.9m以下の規模と推定された。一部盗掘を受けていたが、副葬品の埋置状態を知ることができた。副葬品としては碧玉製管玉5・鍬形石片・鍬形石製品1・鉄剣片・鉄刀片・鉄鏃・棒状鉄製品・鉄鑓、鉄製農・工具(斧1・鉇1・鍬先2・鎌1・刀子3・鋸形製品1・鑿・錐状製品・ヤス)、短甲片1・巴形銅器1・筒型銅製品1・銅鏃9・不明銅製品があり、鍬形石片は京都国立博物館蔵の重要文化財「伝富雄丸山古墳出土品」の鍬形石と一致し、これらの一括試料は本古墳出土品として確認された。伝富雄丸山古墳出土品を列挙してみると、鏡3(四神四獣鏡・神獣獣帯鏡・盤龍画像鏡)・有鉤銅釧1・銅板2・玉類(碧玉製勾玉・棗玉・管玉・滑石製臼玉)・碧玉製盒子4・鍬形石2・琴柱形石製品12・石製模造品(刀子6・斧頭9・鑿1・鉇1)がある。副葬品の石製品、鉄製品に特色があり、また有鉤釧は弥生時代に多い。内部主体の粘土槨の構造等、古式の要素をもつ本古墳は前方後円形を採らずに円形を用いた点に、今後の研究課題を残すものである。築造年代は4世紀末葉と考えられている。

〔文献〕久野久雄・泉森皎「富雄丸山古墳ー奈良県大和田町富雄丸山古墳群発掘調査報告」奈良県文化財調査報告書19、1973、奈良県教育委員会。

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