2022年4月9日土曜日

20220409【架空の話】・其の92 【モザイクのピースとなるもの】【東京訪問篇⑫】

「はい、IM大学のST先生のことであると思いますが、こちらの先生は、本職である大学教員のほかに、ご本人は「あくまでも趣味」と仰っているようですが、料理がかなり上手とのことで、それを何処かで聞き付けた出版社か新聞社が特集を組んだと云う話を聞いたことがありましたが、それとお話に出ました岡山医療専門職大学がどのように結節するかは存じ上げませんが・・あるいは、こちらのST先生が、岡山の医専大で何らかの職を得て赴任されるなどでしょうか・・・?それと、御実家が兵庫県のどちらかと云えば岡山寄りの西の方であると、どこかで読んだ記憶がありますので、何かしらの地縁などもあるのでしょうか・・?」

と返答をすると、CH院長は少し驚いた様子で「・・おお、そこまでよく知っているねえ!それに、その推理は全部正しいわけではないけれど、結構イイ線行っていますよ。うん、正直、歯科関係者から、ここまでの返事を聞けるとは思っていませんでしたが、**さんは、たしか歯科技工士でK大院の博士院生であるとお聞きしていますが、あるいは以前に文系の勉強をしていたのですか・・?」と続けて私に訊ねてこられた。そこで私は、今回CH先生を紹介してくださったD先生の医院で歯科治療を受けて、その縁からK医療専門職大学に学士編入し、そして、その後K大院に進んだが、それ以前の専門は英文学であり、ジョゼフ・コンラッドの作品「闇の奥」についての研究で修士号を取得した旨を述べた。

そうするとCH先生は更に驚かれたようで「ええ!K医専大だから向うの方々がいらっしゃるとばかり思っていましたが、**さん、あなたはこっちの人なのですか!?・・しかもD先生の患者さんですか・・。D先生とは同じ研究室に所属したことはありませんが、私が補綴の研究室で院生から医員であった頃、理工の研究室で助教をされていて、また、その少し前にS先生がK大学に教授として赴任されたのではないでしょうかね・・。まあ、そのような感じでして・・それで、先生方はお分かりであると思いますが、補綴分野での実験は(歯科)理工と協力して組み立てることが多いことから、私も当時、D先生には色々とお世話になりましたが、それからすぐにD先生は開業されることになり大学を辞められましたが、その後も勉強会や学会でお目に掛かった時は、一緒に飲みに行ったりしています・・(笑)。

まあ、D先生が大学を辞められた後、私も補綴の研究室でどうにか助教になりましたが、運が良いのか悪いのか、それから1年程経った頃に、割に近い親戚から条件の良い開業向けの物件を教えてもらい、色々と考えて、そこで開業したのが当医院であるのですが、もうあれから随分経ったようにも思えますし、また、昨日のようであるようにも感じられますが、実際には9年ほどなのですね・・。

ええ、まあ、それは置いておきまして、さきのST先生のハナシですが、そう、こちらの先生は、国際関係論の研究者でありつつ著作も数多く、まあ、分野違いの私などは専ら新書ばかりを読んでいるのですが、それでも興味深く、勉強になりますね・・。いや、高校生の頃、私は、そちらの分野への憧れを持っていたのですが、しかし、私のいた高校は医科系大学の付属校でして、周囲の多くは医学部や歯学部などに進むような環境であって、それに進路指導の先生も、熱心にそちらを勧めてきましたので**歯科大学に進学したのですが、歯科の方も私にはそれなりに合っていたようで、現在もこうして続けさせて頂いていますが、少し時間に余裕が出来できますと、やはり、かつて興味を持っていた分野も気になるもので、時間を見つけては色々と読んでいますが、そうした中で、さきのST先生のハナシが新聞に載っていましてね・・。

それによると、後進に快く道を譲ることが出来るようになるためにも、現在の専門分野以外にて何か専門資格を取得しようと思い、そこで、料理が得意であることから、今度はより科学的な観点から料理や食料全般について考えることが出来るようになるために管理栄養士の資格取得を目指し、御実家からもどうにか通うことが可能で、学費が安価な岡山の医療専門職大学に学士編入試験で受験されて、通うことになったとのことですが、既にご家族が東京にいるため単身で移り住み、そこでは、学業と共に執筆や翻訳は出来るだけ続けられるとのことでした。また、出版社なども、そうした云わば「変わった学生さん」は話題になると考えて、おそらく、また、何か執筆依頼をされるのではないでしょうかね・・。しかし、こうしたことは、執筆や翻訳などで、ある程度の収入を得ることが出来ている先生であるから可能なことであり、ほかの研究者では、あまり真似は出来ないのではないでしょうかね・・。

それで、これに対するST先生の見解は「現在勤務している大学は一度退職しますが、医専大で管理栄養士の資格を得ることが出来たら、国際会議や学会での出席者参加の夕食会で料理を饗して、それらを観念的意味での材料として、国際関係論や文学でのトピックと関連させた講演や発表をしてみたい。」とのことでしたが、たしかにこれは新しく興味深く、斬新な試みであると思いますね・・。」とのことでした。」

約言すると、現役の人文系研究者が路線変更をして学士編入で医専大に入り管理栄養士を目指すということであり、たしかにそれは大変興味深いとは云えるが、果たして、その先の具体的なキャリアはどうなるのかと考えてみると、あまり思いつかず、あるいは、現在のような「転換期」とも云える時代にあっては、そうした選択も決して悪くないのかもしれないと思われたが、そこで、不図、我に返り「いや、こうしたことは私の将来にも少なからず関連するかもしれない・・。」と思い慄然としたが、その当時の私は、普段、あまりそうしたことを具体的に考える習慣がなかった・・。

今回もまた、ここまで興味を持って読んで頂き、どうもありがとうございます。

順天堂大学保健医療学部


一般社団法人大学支援機構


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ISBN978-4-263-46420-5

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