2020年6月23日火曜日

20200622【架空の話】・其の33

【架空の話】・其の33
私の方は、テレビを点けてみたものの、あまり面白いと思われる番組がなかったことから、当り障りのない報道番組にチャンネルを定めてから音量を下げた。そして兄の方はマグカップに入ったコーヒーを二つ持って来て、一つを私の近くに置いてソファに座った。

私は無言でマグカップを少し上に持ち上げ、また同時に、頭を少し下げて感謝の意を伝えた。すると兄は掌をこちらに少し挙げて応答した。そしてマグカップに口をつけ、注意深く口先で温度の程度を確認してから、少し音をたててコーヒーを啜った。

私もそれを真似してコーヒーを飲んでみたが、その味というよりも感覚は、これまで寒い場所にいたことを、あらためて認識させられるほど体に沁み入るものであり、私は期せずしてマグカップを両手で保持していた。

さて、しばらく無言でコーヒーを啜っていると兄が「ええと、地域の自然環境といったものこそが、その土地土地で生まれる、ある種傑出した人物の根源にあるのではないか?ということだったよね・・。その意味でたしかに南方熊楠や松下幸之助や陸奥宗光なんかはこの地域を代表する傑出した人物であると云えて、また、その背景には当地域の濃厚な自然環境があるとも云えるね・・。そういえば、たしか「続日本紀」に書かれている奈良時代後期(神護景雲年間)の出来事で、その当時(8世紀後半頃)は、まだ大和朝廷の覇権が列島全土に及んでいたわけではなくて、北の方では、所謂「蝦夷」との争いが続いていたんだ・・。それで、朝廷の命で東北方面に派遣され、そして駐屯した軍隊の兵士の中には戦闘で「蝦夷」の捕虜になってしまったのも結構いたらしいんだ。まあ、それでそのまま捕虜として彼の地に留め置かれて、それが世代を重ね、大和朝廷の支配領域が大きくなってきたことを契機として、脱走し、あらためて朝廷の公民になりたいと願い出たことが記されているんだけれど、この請願を行った人物が、たしか大伴部押人という名前で、彼はおそらく、古代の軍事部族であった大伴部の部民であり、そして、ここからがとても興味深いところなのだが、その父祖の地が、ここK国の名草郡 片岡里(なくさのこほり かたおかのさと)とのことであり、それで、この片岡という地名は、現在でもW市内中心部の、それこそ、お城のすぐ近くにあって、さらに、何と、そこにはK国での大伴氏の氏社と云えるS田比古神社が今なお鎮座しているんだ・・。つまり、この大伴氏や大伴部にまつわるハナシから思うことは、遠い地にあっても自らの故郷を忘れないという一種の「執念」であり、そこから、その「執念」の源泉について考えてみると、それは一つに、やはり、地域の自然環境であると思うんだ・・。あと、このことを話していて思い出したのは、太平洋戦争後30年近くフィリピンの島で抵抗を続けていたO少尉は有名なハナシだけれど、そのO少尉の出身地が、このW市の南隣のK市であり、そこに古くからある神社は、このO少尉の御実家のさらに本家筋にあたる流れが代々宮司をしているとのことなんだが、このことと、さっきの「続日本紀」内のハナシは、それぞれのストーリー自体は大分違うかもしれないけれど、同時に、それらに共通する要素として、さっき出た「執念」といったものがあるのではないかと思うんだ・・。」と私に話した。

これもまた、興味深いハナシであり、たしかにそれらの底には、あまりコトバによってカタチを与えてしまうことを躊躇うような、地域性の原型のようなものがあるようにも思われた。さらに、「執念」という意味においては、昨日・本日とハナシに出た「娘道成寺」も、かなりイイ線を行くのではないかと思われたが、これは口に出さなかった・・。また同時に、こうした検討やら考察を自国の地域に対して行うことが出来るようになることもなかなか大事なことであるように思われたのだが、さて、如何であろうか・・?

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。おかげさまで、丸五年間、当ブログを継続することが出来ました。とはいえ、まったく感激はありませんでした・・(苦笑)。そしてまた、今後も1500記事程度までは継続したいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!


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ISBN978-4-263-46420-5

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