2015年8月30日日曜日

谷川健一著 「魔の系譜」 講談社学術文庫刊 pp.160-161より抜粋

「胎児の先祖代々にあたる人間たちは、お互い同志の生存競争や、原人以来遺伝してきた残忍卑怯な獣畜心理、そのほかいろいろ勝手な私利私欲をとげたいために、直接、間接に他人を苦しめる大小様々の罪業を無量無辺に重ねてきている。そんな血みどろの息苦しい記憶一つ一つが胎児の現在の主観となって眼の前に再現されてくるのである。」こうして私たちは、人類の記憶の彼方から現在にいたるまで、他者の再生への恐怖が自己の再生への欲望とワンセットになって共存していることを認めざるをえない。他者の再生の恐怖という情念は意識の下で深く眠っているが、この否定的な魔は、予告もなく出現し、日常的時間の因果律を一挙に破壊して、始原の生へと連れ戻すと同時に、過去の心像を一人の人間のなかに再現されて、彼を狂気に駆り立てるのである。 (中略) 私はしかし、それを個人に帰するよりは、幾千年もの昔からの恥と非道の行為の再生―すなわち、自分たちの血の中に流れる先祖の犯した迫害の記憶の確認とみなしたいのである。こうした血の叫びを聞かない者は幸いなるかな。」

魔の系譜
谷川健一


「因果応報」
意味 過去および前世の因縁に応じて果報があること。善いことをすればかならず善い報いがあり、悪いことをすればかならず悪い報いがあるということ。「因」は「因縁」で原因、「果」は「果報」で報い、結果のこと。
用例 「花咲爺」や舌切り雀」など、おとぎ話には因果応報の理を説いたものが多い。
類語 悪因悪果・善因善果・福善禍淫

四字熟語・成句辞典 竹田晃著 講談社学術文庫 p.69



「Trait」



夏目漱石「夢十夜」第三夜









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