2023年5月22日月曜日

20230521 嗅覚と味覚の記憶から思い出したこと(南紀について①)

昨年10月に罹患した新型コロナウイルス感染症から回復して以来、ほぼ通常の日常生活に戻っていますが、嗅覚と味覚に関しては、以前よりも鈍くなったように感じられます。特に食べ物があまり美味しく感じられなくなったことが気になりましたが、他方で最近は気温が上昇し、天候も良くなり、活性が上がってきたためか、また少し復調しているように感じられます。ただし、これはマスクを外す機会が以前よりも増えたためであるのかもしれません。そのため、この感覚の変化については、今しばらく意識して推移を見守りたいと思います。

さて、嗅覚と味覚に関して印象深いことを挙げますと、以前に何度か当ブログにて述べたことがありましたが、2001年春に北海道から南紀白浜に転勤した時のことが思い出されます。北海道と比べて南紀の環境はあたかも別の国に来たかのようでした。その南方的とも云える横溢とした植生や自然環境、そして、そこからくる大気の薫りは非常に濃厚なものであり、在住後しばらく経っても新鮮に感じられました。また、そうした経験から、地元の食材を使った料理は、その土地で料理して食べることにより、本来の美味しさを味わえるのだと思うようにもなりました。さらに南紀白浜温泉には、複数の源泉があり、それぞれ泉質や香りも若干異なるため、慣れてきますと嗅覚を通じて、それらの違いが分かるようになりました。

また、南紀白浜温泉は総じて海に近く、私が勤務していた白良荘グランドホテルも白良浜に面していました。そしてその従業員駐車場は、白良浜北隣の半ば半島状である権現崎の近くにありましたので、当時はほぼ毎日、どこかで波の音を聞きながら生活していたと云えます。当初は首都圏に戻りたいと始終思っていた私でしたが、若かったこともあってか、徐々に南紀の環境にも慣れてきて、次第に感覚や価値観も変化していったのだと思われます。

やがて落ち着いてきますと、近隣にあるさまざまな史跡などの来歴・背景についても宿泊客に対して、ある程度は説明できるようにということもあり、それらの説明文などを読み、さらに興味深いと思われた事がらについては、休日、紀伊田辺に出向いた際に書店で立ち読みしつつ書籍を探したり、あるいは当時普及しつつあった「アマゾン」で見つけて購入するといったことをしていました。

また、それら書籍で興味深い記述を見つけますと、食事や買い出しなどの外出の際に、記述にあった史跡などを実地見分するといったことも度々していました。とはいえ、そうした興味は、まず最初に現実の史跡などの存在が先立ちます。つまり、実際に何かの史跡なりを見て興味深く感じるようになり、そこから関連する著作を探すといった流れでしたが、私の場合、その一つの起点にあったと思しき記憶に残る史跡は、さきに述べた白良浜北隣に位置する権現崎に鎮座する熊野三所神社内の火雨塚古墳です。

それまで古墳とは、上空写真から見る巨大な前方後円墳のようなものばかりであると思っていましたが、この古墳の墳丘径は10m程度であり、外から羨道を通じて玄室内をも臨むことが出来、これを初めて見た時、古墳であることは分かりましたが、しかし、それが人々が日常往来する領域である神社内にあること、そして、それが樹木や草に覆われながらも未だに古代の墳墓であることが分かるように存在していることにいたく驚かされました。

そうして当地でしばらく生活をしていますと、次第に、さきの熊野三所神社を含む多くの神社は、小泉八雲ことラフカディオ・ハーンがその著作「日本の心」内で述べているように

『神道の「やしろ」は、通常の意味での寺院ではなく、むしろ「死者の霊が出入りする部屋」や「霊の部屋」と呼ばれるべきだと思います。なぜなら、多くの神々は実際には霊であり、立派な武人や英雄、統治者、人々の師として存在して、千年以上も前に生きて愛し、そして死んだ人々の霊だからです。そのため、神道のお宮や社の不思議な性格を西洋人に伝える際には、お宮や社を「shrine」や「temple」と訳すよりも「ghost-house」と訳した方が意味がよく伝わるのではないかと思います。』(要旨)

といった性質が基層にあることを自然に理解出来るようになっていくと思われるのです。そして、私見としては、こうした感覚は、旅行など短期間の滞在では得ることが難しく、その地域で何度か四季を過ごし、地域の大気や植生や湿気のようなものを嗅覚や味覚などの感覚を通じて、知らぬ間に身に着いていくのではないかと思われるのです。そして、そうして得られた感覚を土台として、その地域のことを学べば、さらに知らないことが分かるのではないかと思われた頃に東京へと転勤となりました・・。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!

一般社団法人大学支援機構


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