2019年11月30日土曜日

20191129 「三酔人経綸問答」作中 豪傑君と初期国粋主義者について・・

先日から読み進めていた石光真人編 石光真清著「石光真清の手記」最終第四巻「誰のために」を一昨日読了しました。また、一連の当著作と、ほぼ同時期から読み進めている岡義武著「明治政治史」上下巻は、昨日から下巻に至り、現在これを読み進めています。そして、これら著作を同時に並行して読むことは、自身の感覚としては効率的な理解を深めるものであると云え、さらに並行して読み、以前に読了した、同著者による「近代日本の政治家」、平井晩村岡本柳之助著の「風雲回顧録」そして橋川文三著「幕末明治人物誌」なども大変興味深い著作と云えます。

また、以前にも取り上げたことですが、これら著作にて取り上げられている、さまざまな人物を、それぞれの特徴的なエピソードから、中江兆民著「三酔人経綸問答」にて描かれているモデル(南海先生・洋学紳士・豪傑君)に当て嵌めてみようと試みますと、おそらく概括的には為されると思われますが、やはり、それぞれの細部については不十分であるように思われます。

その中で、現代において特に評価が困難であるのが、明治期から太平洋戦争期に至るまで、さまざまな分野に対して影響力を保持していた頭山満であると思われます。頭山満は我が国近現代の国粋・国家主義の始祖的な存在とされており、また、西南戦争後から1945年の敗戦までは各界に影響力を行使する黒幕・フィクサー的存在として、そして戦後以降は、社会から忌諱される暴力をも辞さない右翼組織の総元締めといった一般的な認識であると思われます。

こうした存在は、さきの中江兆民著「三酔人経綸問答」での分類にしたがいますと、当然の如く「豪傑君」に分類されると思われますが、しかし、その行ってきた事績、交友関係などから、そのキャラクターを多少仔細に考えてみますと、そこまで単純化(簡単な分類)は出来ないのではないかと思われてくるのです・・。

より精確に述べるならば、頭山満を含む我が国の初期国粋主義者達の多くは、西南戦争にて敗北した西郷隆盛をはじめとする、古来から続く所謂、我が国の戦士階級(侍・武士)勢力の後裔と評し得るものと考えます・・。

そして、おそらく、この認識(豪傑君をモデルとする初期国粋主義者達への)こそが評価の分岐点であると思われ、以前も当ブログにて何度か取り上げている丸山眞男と、その弟子にあたる橋川文三では、その点において認識の仕方が少なからず異なっていると云えます。

その原因は、おそらく、端的には両者の研究スタイルや人生経路の違いなどがあると思われますが、この点については、また後日、それぞれ著作からの抜粋引用を以て提示し、そして何かしら意見を述べようと思います。

また、ここが現在、貨幣、経済的指標以外の明確な価値観といったものがなく、混迷しているとも評し得る我が国において、意外と重要なことであるように思われるのですが、さて如何でしょうか。

今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます。

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2019年11月25日月曜日

20191124 歴史の転換期、社会の変革期と「貴種流離譚」について

先日来から読み進めている石光真人編 石光真清著「石光真清の手記」は、最終巻の第四巻「誰のために」の後半に至り、おそらくここ数日で読了すると思われます。
当著作は歴史資料としても優れ、且つ、ノンフィクション作品としても大変興味深いと云えます。また、当著作を読みますと、山田風太郎による多くの著名人物がチョイ役として登場する開化もの作品が小説としてでなく、実際の物語としても成立し得るものであることを痛感します。

おそらく、著者である石光真清氏は、そうしたことをあまり意識することなく、幼い頃から自分が経験してきた出来事を叙述したものと思われますが、期せずしてか、それは明治維新後から太平洋戦争前の昭和期の歴史をさまざまな現場から描いたものになり、結果として、重要にして興味深い資料、ノンフィクション作品になったと云えます。

これと類似した主題の著作としてロバート・グレーヴスによる「アラビアのロレンス」そして同著者による「さらば古きものよ」などが挙げられると思われますが、当著作は、著者(石光真清氏)の性質からか、あまり飾り立てない率直な文章によって書かれ、また、そうしたことから、かえって期せずして心を打たれるといったことが度々ありました・・。

当著者は、必ずしも世間的な尺度での成功者とは云えませんが、同時に、現在においても九州地域にてしばしば見受けられる、情に厚く、女性に弱く、誇り高く、勇猛果敢でありながらも、あまり器用に世間を渡ることを欲しようとはしない、おそらく本物の熊襲や隼人の末裔であろうと思われる、あるタイプの方々を想起させられます・・。

さらに他の視点にて、当著作および前述した類似する主題の著作について考えてみますと、それは「貴種流離譚」と評することが出来るのではないかと思われました。
素戔嗚尊日本武尊オイディプスから源平合戦譚そして、近現代における世界各地の革命に至るまで、歴史が大きく動き、それに伴い社会も大きく変化しようとする時代には、特に、こうした「貴種流離譚」に分類される事象が多く見出されるようになるのではないかと考えます。

そして、そうした視座から国や地域の歴史を眺めてみますと、それぞれの国、地域における古来からの祖形男性像といったものが理解できるのではないかと思われるのですが、さて如何でしょうか・・(笑)。

今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます。

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