2022年1月3日月曜日

20220103 朝日新聞出版刊 木村誠著「大学大崩壊」 pp.194-196より抜粋

朝日新聞出版刊 木村誠著「大学大崩壊」
pp.194-196より抜粋
ISBN-10 ‏ : ‎ 4022737905
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4022737908

それは一般の大学と違う専門職大学の特色を見るとはっきりする。設立に向けての答申のポイントは次のとおりである。

①〔教育内容〕専門性を求められる職業人や当該職業に関連する事業者などの関係者の協力を得て、教育課程を編成、実施する。すなわち、産業界などと連携した教育が義務付けられている。また、卒業単位のおおむね3~4割以上を実習などの科目とする。適切な指導体制が確保された企業内実習等を2年間で10単位以上、4年間で20単位以上履修する。

②〔修行年限〕4年制課程の専門職大学と、②年制または3年制課程の専門職短期大学がある。専門職大学は前期課程及び後期課程の区分制課程も導入できる。これにより、前期課程修了後にいったん就職してから後期課程へ再入学したり、社会人が学び直しのために後期課程から入学するなど、多様な学習スタイルが選択できる。

③〔教員〕必要専任教員数のおおむね4割以上を実務経験のある実務家教員とし、その半数以上は研究能力を併せ有する実務家教員とする。

④〔入学者の受け入れ〕高等学校(専門学科・普通科)卒業後の学生だけでなく、社会人学生、編入学生など、多様な学生を積極的に受け入れる。そのため、入学者選抜では実務経験や保有資格、技能検定での成績などを積極的に考慮し、意欲・能力・適性などを多面的・総合的に評価して選抜する。

⑤〔学位〕専門職大学を卒業した者に対し「学士(専門職)」の学位を与え、専門職短期大学を卒業した者に対し「短期大学士(専門職)」の学位を与える。専門職大学前期課程を修了した者に対しても「短期大学士」(専門職)の学位を与える。

⑥〔修行年限の通算〕社会人の学び直し(リカレント教育)を推進するため、実務経験のある者が専門職大学などに入学する場合に、当該入学者の実務経験を通じた能力習得を勘案して、一定期間を修行年限に通算できる。

 すなわち一般の大学に比べ、企業内実習の義務化、実務家教員の4割以上、学力のみで測れない入学者選抜、リカレント教育の重視などの点が際立っている。

なぜ取り下げることになったのか?

認可に至らなかった理由として文部科学省の審議会は、次のようなコメントを出している。5点にまとめた。

①専門職大学の特色が十分に検討されていない。

②業績のない者が実務家教員として申請されている。

③専門職大学が目指す人材の専門性を支える理論が不足し、その結果、大学教育としての内容に体系性が欠けている。

④教育課程と連携する協議会の構成員が適切でない。

⑤実践を重視する研究内容や、施設、設備が整備されていない。

もちろん、申請した学校が、この5点すべてに当てはまったというわけではないだろうが、設立趣旨に対する基本的な理解不足、少なくとも準備不足だったとは言えるだろう。