2022年6月1日水曜日

20220531 私小説と外界の事物、主観と客観、そして戯曲と小説に関連するかもしれない抽象的なこと

数年前、人文系の師匠にお目に掛かった時、私がブログ記事を作成していることを知ってか知らずか、会話の何かしら文章に関する話題にて「私小説的なものよりも、もっと外界の事物の関連性などを主題として書いてみる方が面白いと思うのですが・・」と仰っていましたが、そこに何か意味を認めたのか、その後しばらくは外界の事物を主題とした記事を作成していましたが、その後、ここ数日においては、私小説とはいきませんが、自分が以前、経験したことに基づいて記事を作成してきました。これは、さきの伝でいきますと、私小説的とも云える書きぶりであり、あまり良くないのかもしれませんが、他方で、それらの主題であった「抽象的なもの」を言語を用いて出来るだけ精確に説明するためには、やはり、実際に「抽象的なもの」と自分が判断したものを題材するのが適切であるようにも思われるのです。

また、現在少し休んでいますが、継続して作成している【架空の話】も、私小説とまではいきませんが、そこにある多くは自分の経験に基づいていると云えます。そうしますと、実験の様子あるいは歴史的出来事といったものは、対象化した(客観的な)視座が、その文章表現に際しては適切であると云えますが、他方で、出来るだけ対象化したくとも困難であるのが、さきに述べた「抽象的なもの」であると思われます。

これを約言しますと、主観と客観があり、それらは当初から別々の視座であると思われがちですが、客観に至るためには、先ず主観的な視座が必要であり、そして、そこから意識的に視座を変えていくことにより、語義通りの客観の近傍にまで至ることが出来るのではないかと思われるのです。そして、このことは、さきの「抽象的なもの」においても同様であり、そうした実際の存在が乏しいものを文章として表現するためには、はじめに主観的な視座にて述べてから、徐々に視座を移していくのが良いのではないかと思われるのです。

そしてまた、こうしたことを述べていますと、ここ数日の投稿記事にあるジョゼフ・コンラッドによる「闇の奥」にある次の記述が想起されます。

「船乗りたちの見聞談といえば、至極あっさりしたのが特徴であり、意味といっても、ひどく拍子抜けする呆気ないものである場合が多い。ところが、その意味ではマーロウは(眉唾ものの話を真しやかに話す癖は別として)、いわゆる船乗りとしては型破りだった。たとえば彼にとっては、挿話の意義は、核のように内側にあるのではなく、むしろ話を包む外被そのものの中にあった。たとえていえば、日光があれば薄靄のたなびくように、それとも言いかえれば、月の光の分光によって、朦朧とあの暈輪のおぼめく折があるように、どこまでも物語を包む雰囲気の中にあった。」

この記述から、マーロウの語りぶりは、その後の話の展開からも理解出来るように、結論を冒頭で述べたり、あるいは起承転結を明確にしたストレートなものではないようで、また、そこから想起せられるのはゲーテによる「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」内の以下の記述です。

「戯曲では性格と行為とが現されねばならない。小説は徐徐に進行し、主人公の心情が、どんな方法によるにせよ、全体の急速な進展を引き止めるのでなければならない。戯曲は急ぐべきもので、主人公の性格は終局に向かってまっしぐらに進むべきであって、ただそれが食い止められているのでなければならない。小説の主人公は受動的であるべく、少なくとも甚だしく能動的であってはならない。戯曲の主人公には活動と行為とが望ましい。小説では偶然の働きを許すことはできるが、それは常に人物の心情によって導かれねばならない。これに反し、人間の関与をまたず、独立した外的の事情によって不測の破局へ人間を駆って行く運命は戯曲にのみ存在する。」

そこから、さきのコンラッド著「闇の奥」の語り手であるマーロウの話す挿話、およびその語りぶりは、戯曲的と云うよりも小説的であると云え、そしてまた「その話の意味は、聞いた後で、各々で考えてください。」といったスタンスでありつつも主観的であると云えるのではないかと考えます。

ともあれ、少し違った視点ではありつつも、また「抽象的なもの」で引張ってしまいましたが、昨日の投稿記事の最後にて述べた歯系院生であった頃の「抽象的なもの」について述べる前に、やはり、それ以前の時期にあたる和歌山市在住期での、それを述べる必要があったのではないかと、ここに至って思われました・・(苦笑)。

ともあれ、今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
順天堂大学保健医療学部


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