2022年10月31日月曜日

20221030【架空の話】・其の98 【モザイクのピースとなるもの】【東京訪問篇⑭】

とはいえ、以前にもCH先生による独白として当ブログ【架空の話】にて述べたことではあるが、院長のCH先生は、某医科系大学付属校の御出身とのことであり、当時の友人には、医師や薬剤師や看護師などの医療系の進路を進んだり、あるいは理工学部といった主に自然科学系分野に進んだ方々も多かったことから、卒業後も、それら友人等と話す機会が度々あれば、本質を掴みつつ、大雑把には大学理工学部教員の述べる内容も理解出来て判断出来るようになるのではないかということであるが、ここまで述べるには、今しばらくの観察と検討が必要であるかもしれない・・。ともあれ、さきに述べた周囲の環境が現在のCH先生の性格を育んだことは、少なくとも間違いではないように思われる・・。

医院見学に来たK医専大の我々を案内されていたCH先生は途中、何度か中座したが、やがて戻って来られた。また、あまり忙しい素振りも見せなく、あるいは気を使って、そのように振舞っていたのかもしれないが、我々の方はスーツ姿のままにて院内を一通り見学させて頂いていた。

その途中で驚いたのは、小型ながらも走査型電子顕微鏡や嚥下造影(VF)検査の機器が院内の検査室らしきところに設置されていたことである。また電子顕微鏡は、その時、ケーシーを着用した若手の歯科医師らしき人物が操作しており、その背後には白衣を着て腕組みをした、これまた歯科医師らしき少し年配の人物が立っており、観察画像を見つつ二人で何やら会話をしていた。そして、その様子をしばし見ていたE先生の様子が突然変わり、スマートフォンで何やら調べはじめた。そして、その斜め後ろの位置から見ていた私は、どうやらE先生は人物を検索をしていることが分かった。そして、おもむろに私の方を向くと、検索した画面を私の方に静かに向けた。そこに映っていたのは、先ほどCH院長から説明を受けた現在、こちらのクリニックの医員兼顧問をされているKA先生であり、それはまた、我々の目の前に腕を組んで立っている人物でもあった。

さきほどの院長からの説明では本日、KA先生は休日とのことであったが、何らかの理由によって出勤されていたのであろう。そこに、中座していたCH先生が戻って来て、我々に向って「いやあ、お待たせして申し訳ない。今、少し大事な電話がありましてね・・。そう、この検査室には走査型電子顕微鏡や嚥下造影(VF)検査の機器が置いてあるのですけれど・・。あれ、顧問、本日はお休みであると聞いていましたが・・。」と丁度、我々が抱いていた疑問を口に出された。

すると顧問と呼ばれた(おそらくは)KA先生は、身体の向きを変えずに顔をCH院長の方に向けて「いや、たしかに今日は休みだけれど、こいつが自分の患者さんの義歯が破折したから、その破断面を見て何故、どのようなメカニズムで破折に至ったのかを調べて、どこかの学会で発表したいって云うから、つきあってやっているんだ。それに、ここのSEM(走査型電子顕微鏡)も高倍率でも結構キレイな画像が見えるからな・・。」とのことであり、SEMを操作している若い人物は操作をしつつ、しきりに頭を下げておられた。

それを聞いてCH院長は「ああ、そうですか。分かりました・・。あッそうだKA先生、本日はKからの来客です。」といって我々を紹介してくださった。E先生は明らかに緊張されていたが、たしかに比較的規模が大きい歯科の臨床系学会の学会長も務められた先生と挨拶を交わす機会は、若手のE先生でもあまりなく、そして私に至っては、そうした機会は皆無であったから、分からなかったが、これはやはり緊張する場面であったのかもしれない。

ともあれ、E先生は緊張しつつも手堅く挨拶をされてから名刺交換をしたが、KA先生の方はフランクな口調で、来院の目的や、知っていそうな先生のことを尋ねられ、その中にS教授やD先生の名前も入っていた。そこでE先生は「はい、そのD先生から、こちらの医院をご紹介頂きましたが、D先生のことについては、そちらの**君の方がよく知っています。」と私の方に話を振って来られた。私の方もそれまでに名刺を準備しておいたため、ぎこちなかったかもしれないが、ご挨拶をさせて頂いた。するとKA先生は私が差し出した名刺を見てから「あれ、この苗字はK特有だと思うけれど、何でこっちで開業しているD先生のことを知っているの?」と尋ねてこられた。そこで私は地元はこちらであり、その際にD先生の歯科治療を受けたことがきっかけでKの医専大に進んだ経緯を手短に述べた。

すると「はあ、なるほどねえ・・。そういう人もいるんだ。まあ頑張んなさい。」とのお返事であったが、その云い方はフランクな調子であったが、同時に人を逸らさない真情のある言葉でもあった。

一通りの挨拶を終えると、今度はCH院長が「よし!K医専大の先生方、今日はこの後に続く**大学理工学部との共同研究打合せの後に、皆で夕食を摂ることになっているのですが、よろしければ先生方もご一緒に参加されますか?」と尋ねてこられた。私とE先生は一瞬顔を合わせてからE先生がCH院長に向い「はい、出来ればご一緒させて頂ければと思います。」と返事をされて、私の方はその横で頷いていた。

それを聞いてCH院長は「よし、分かりました。それと顧問は本日は少し遅れてのご参加でよろしいでしょうか?」とKA先生への確認も行った。

そうすると、我々は医院見学の後、共同研究の打合せが終わるまで、何処かで時間を潰す必要性が生じたが、E先生はノートPC持参であり、そこで、いくつかの報告やメールの返信などをすれば良いと思ったのだろうか、困った様子は全くなかった。

そして、しばらく経つとクリニック事務局の方が本日の夕食会会場を知らせて来てくださった。その会場はクリニックの近くであると思われたが、東京R科大学近くの西洋料理店であった。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!

順天堂大学保健医療学部


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