2015年6月30日火曜日

銅鐸について 3 奈良県、大阪府、三重県における銅鐸の出土、およびその傾向

奈良県、大阪府、三重県における銅鐸の出土、およびその傾向

奈良県においては旧式小型の「聞く銅鐸」の出土例が大半であり、新式大型の「見る銅鐸」の確かな出土例は存在しない。このことから奈良県における銅鐸祭祀とは「見る銅鐸」に移行する以前に終焉を迎えたと考えられる。
これと同じ傾向を示す地域として島根、香川県が挙げられる。
また、その出土は、奈良盆地東側の笠置山地麓地域からが多く、大阪府と同県を分かつ生駒山地東麓からも幾つか出土し、南は五條市、北は奈良市秋篠町から出土している。それらの総数は二〇個程である。

大阪府においては多くの銅鐸が出土し、その総数は四〇個程であり旧式小型の「聞く銅鐸」新式大型の「見る銅鐸」の割合はおよそ半々である。
また、地域における新旧銅鐸の出土傾向は混交しており、ここから傾向を見出すことは困難である。
しかし新旧を併せた大阪における出土傾向として、かつて淀川河口部に存在した潟湖である河内湖の南東岸部周辺、大阪平野南部の丘陵地から多く出土することが挙げられる。
また、それらは、北は東部では京都府に近い高槻市、西部では兵庫県に近い吹田市から、南は西部では和歌山県に隣接する泉南市、東部では金剛山地西麓の太子町からそれぞれ出土している。

三重県においては出土総数が二〇個程であり、志摩半島以南の紀伊半島に連なる地域からの出土例はなく、伊勢湾内西岸地域の雲出川北岸の津市がその南端である。また、伊勢湾に流れる鈴鹿川流域からも幾つか出土し、その北端は四日市市であり、内陸部では奈良県と隣接する名張市からの出土が西端である。
そして、それらは丘陵地からの出土例が多い傾向を示す。
また、当県は新式大型の「見る銅鐸」の一種、三遠式銅鐸が出土する太平洋側西端であり、且つ三遠式、近畿式双方の銅鐸が混在し、さらに前述紀伊半島東部に属する県南部地域からの出土例が皆無であることは、紀伊半島西部との地域性を比較する上において示唆に富む。