2021年1月16日土曜日

20210115「 異郷の地に住むこと」について思ったこと

元々私は関東地方の千葉県と東京都で育ち、また、そこにアイデンティティーを持っていますが、大学卒業後に就職した会社での初任地が札幌市であり、そこで2年間過ごすことになりました。札幌、北海道は、大変良い場所であったとは思いますが、私にとっては如何せん寒く、さらに冬季は日光が乏しいためか気分が沈むことが多かったという記憶があります。

また、その街並みも「縮小した東京」といった趣が強く、それまで首都圏しか知らず、それがベストであると堅く信じていた私にとっては価値観の変容を生じさせるほどの経験や刺激はなく、同時に、それを受容出来るような感覚もなかったのだと思います。

その後、希望勤務地の調査にて「東京」と書き続けた結果、次の赴任先は、南紀白浜になりました。それまで、修学旅行など以外で首都圏から最も西に離れたのは静岡県の伊東市にあった祖父母の家に滞在する時くらいであり、当時の私にとって、南紀白浜どころか西日本自体が、あまり良い表現ではありませんが「得体のしれない場所」であったと云えます。

しかし、嘆いていても始まりませんので赴任しますと、寒い北海道からの転勤であったためか、陽光がやけに眩しく感じられ、さらに、着任後わずか1カ月程度で白良浜にて海開きがされ、その何というか「南国ぶり」には大変驚かされました。くわえて、南紀白浜は空気も大変美味しく、温泉もあり、全身で大地の精気のようなものを感じることが出来たと記憶しています。

さらに、かねてより私が好んでいた歴史に関する遺跡なども多く、休日に自転車で近くの田辺市まで行く途中には、さまざまな興味を惹くものがありました。またこの当時、アマゾンを利用して書籍を購入することも覚え、そこで、それら遺跡についての記載があると思しき書籍を購入したり、あるいは文系師匠からの手紙に記載があった書籍などを購入して読んでいました。

この時期、英国の作家ロバート・グレーヴスを知り、その著作である「この私、クラウディス」は特に面白く感じ、休日の近くにある合川ダムへの釣行にも持参し、一人、ボートの上で読んでいました。現在思い返してみますと、これはいくらか贅沢な経験であったのかもしれません・・。また当時、釣れた魚を記録に残すため、初めてデジカメを購入しましたが、それは釣れた魚のみならず、釣行の際、キレイであると思った風景などの撮影にも用いていました。そして丁度この時期、定期購読していた「ナショナル・ジオグラフィック」日本版にてデジカメによる写真コンテストが開催されることを知り、撮影した風景写真の中で気に入っているもので応募したところ、佳作か何かで入選となり興奮した記憶があります。ちなみに当時、黒澤明監督の作品にもハマっており、とりわけ「蜘蛛巣城」を好んでおり、会社同僚にDVDソフトを貸したりしていましたが、その反応はあまり良くなかった記憶があります。おそらく、当時から少しズレていたのでしょう・・(笑)。

その他にも、この時期はさまざまな経験があり楽しかったと云えますが、南紀白浜に赴任して2年ほど経過した頃「私はこのままサラリーマンを続けていくのは困難であろう・・。」と思うに至り、大学院入試の情報を集め始めるようになりました。当時はまだ首都圏にある大学しか考えていませんでしたが、偶然、丁度この時期に東京へ転勤となり、一先ず実家に荷物を置かせてもらうことにしました。この頃、実家は自宅を改造して開業したばかりであり、荷物を置く場所がなくて難儀しましたが、他方で私が大学院に進んでも大丈夫そうであったことから、親戚の人文社会科学系教員や師匠に相談したところ「今から大学院に進むのであれば、これまでの経験を活かせるトコロが良い。」と云われ、検討したところ、南紀のことが想起され「これは私独自の経験と云えるだろう」と思い資料を集め、どうやら、そうしたことを深めることが出来そうな研究科が和歌山の大学にあることが分かり、教員に連絡を取ってみたところ、決してウェルカムといった感じではなかったものの「ふむ、やりたいのであったら指導できるかもしれない。」といった感じであり、とりあえず準備をして受験したところ、どうにか通った。これは、やはり南紀白浜での勤務経験があったからであると思われるが、同時に、その経験がなければ、そこを受験しようとは考えなかっただろう。その意味で、やはり「これまでの経験を活かせる」ことは出来たのではないかと思われる。

大学院という場所は初めての経験であり、当初は右も左も分からずに色々と面食らったが、同時に面白かったのは、そこでは、いくらか小難しいと思われる書籍を読んでいると、その書籍について話しかけてくる方々が、わずかながらではあれ、いることであり、それは一種、探りを入れてきたのだと思いますが、そうしたことが機縁となり、後日、議論や輪読会をしたり、さらには院生自主勉強会を定期的に開催するようにもなりました。これは大変面白く勉強になりました。以前にも当ブログにて書きましたが、あの時期は自身にとっては遅蒔きの青春であったのだと思います。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!





ISBN978-4-263-46420-5

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