2019年9月8日日曜日

「八つ墓村」オリジナル小説と映画作品の違いから思ったこと

先週投稿のブログ記事にて書くことを忘れていましたが、先日来から読み進めていました中路啓太による「ロンドン狂瀾」および横溝正史著「八つ墓村」は、先週の時点にて読了していました。現在も新たにいくつかの著作を読み進めていますが、その著作につきましては、また後日投稿のブログにて述べさせて頂きます。

さて、読了した「ロンドン狂瀾」は、その結末に続く歴史の展開が、まさに昭和の15年戦争そして同時に、我が国近現代の悲劇の幕開けであるとも云えますので、そこには何かしら重苦しいものがあると云えます・・。

また、「八つ墓村」につきましては、これまでに観た野村芳太郎監督による同名映画作品とは微妙に何人かの登場人物の性格等の描写、そして物語の結末が異なりますが、私の意見としては、映画版の方がより、我が国特有の湿気の多い、説明のつかない怪談的な怖さが濃厚であり、他方、横溝正史によるオリジナルの小説版は、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの「ヴァスカビル家の犬」のように、物語背景の道具立ては怪奇と見えるものではあっても科学的な説明がつく、という意味でスジは通っているのですが、さきに述べたような「説明のつかない怪談的な怖さ」は案外と希薄であったことから、多少肩すかしを受けたようにも感じました。

とはいえ「八つ墓村」読了後、数日経て不図思い浮かんだことは、この小説版にて描かれている世界観、あるいは作品全体を包括する雰囲気が「日本霊異記」あるいは「今昔物語」に近いのではないかということです。もちろん「日本霊異記」「今昔物語」何れにも霊異、怪奇的と評し得る物語は載っているのですが、その「重さ」「暗さ」あるいはより端的には「おどろおどろしさ」があまり「これでもか!」と云わんばかりには描いていないと思われるのです。

つまり、霊異、怪奇的と云える事柄も共通して比較的サラッと淡泊に描いているのが「日本霊異記」「今昔物語」そして小説版「八つ墓村」ではないかということです。

他方で、野村芳太郎監督作品「八つ墓村」の最終シーンでは、かつて村人に惨殺された八人の尼子家の遺臣達が、村を見渡せる丘の上で、燃え盛る多治見家(かつて尼子遺臣達の惨殺を先導した村惣代の子孫の家筋)の屋敷を毒々しい笑顔で見守っている場面がありましたが、こうした描写、演出は、より映画作品として「おどろおどろしさ」の効果を狙ったものであったのではないかと思われました。

また、こうした同一作品の小説版と映画作品との間にある、さまざまな描写の相違の傾向のようなものを考えてみますと、それはそれで面白いようにも思われました・・。

そういえば、先日「人間の経験」について述べたブログ記事をいくつか投稿しましたが、それら記事が思いのほか多くの方々に読んで頂けていました。これらを読んでくださった皆様、どうもありがとうございます。

ともあれ、基本的に我々人間は全般として、自らが経験、知覚した事柄でないと、それについての「生きた文章」を作成することが困難であると考えます。そして、そうした背景の認識があってはじめて、ミゲル・デ・セルバンテスによる「ドン・キホーテ」の面白さのようなものが生き生きと読者に伝わるのではないかと思われるのです・・。

そこから、1つの意見ですが「ドン・キホーテ」の執筆を行っている、あるいはそこに至るまでのミゲル・デ・セルバンテスの人生遍歴を物語、あるいは映画作品として作成しましたら大変面白いものが出来るのではないかと思われますが、さて、如何でしょうか(笑)?(セルバンテスの伝記はありそうなので後日、探してみようと思います。)

さて、さきほど、ウィキペディアで調べてみた程度ですが、そこで知る限りではミゲル・デ・セルバンテスの人生は波乱万丈であり、「ベン・ハー」の原作者ルー・ウォーレスあるいは「この私、クラウディウス」「さらば古きものよ」著者のロバート・グレーヴスと比較してみても、その波乱万丈の程度は勝っているのではないかと思われます・・。
そして、そうした経験を持つ著者の作品が400年以上にわたり、名著として世界中多くの人々に読まれているという事実は「本物の文化」というものを考える上で示唆するものが何がしか含まれているのではないかと思われるのですが、さて、如何でしょうか?

今回もここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。

日本福祉大学
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