2021年12月5日日曜日

20211204【架空の話】・其の70 【モザイクのピースとなるもの】

大抵の医科系学科の実習時には、白衣やケーシーやスクラブを着用するが、医専大の口腔保健工学科すなわち歯科技工士養成課程では、実習時に薄青色の一般的な白衣状のものを制服のように着用していた。

これは特にカッコ良いと思えるものではなかったが「そのようなものであろう」と、特に気にしたことはなかった。しかし、医専大在学の最後の頃、すなわち歯科技工士国家試験においては、実技試験として90分以内での上下顎総義歯の人工歯排列および削合があり、その際には皆、この「制服」を着用して臨み、それは実技試験会場に集まっていた九州地域内各校においても同様であり、そこで、歯科技工学科全般において、特に統一して定められた「制服」のようなものはないことを知った・・。

さて、現今、Kでの歯科技工士養成校は医専大のみであるが、以前は地域の歯科医師会立の専門学校が天文館にあったと聞いている。これは、以前に少し触れた国策による大幅な医療介護系職種増員計画によって、各地域に専門職大学が新設される際、同専門学校の歯科衛生士学科と共に、新設の専門職大学に吸収された。歯科衛生士養成校については、以前は地域内にさきの歯科医師会立を含めて3校存在していたが、それらもまとめて専門職大学に一括吸収された。

そうした経緯もあり、当初の口腔保健学科(歯科衛生士養成課程)の入学定員は40名であったが、年を経る毎に増員し、私がK大学大学院に進んだ頃は55名となり、さらに私がD2になった頃は65名となっており、さらに同時期にはK大学歯学部にも口腔保健学科新設の噂があり、実際、研究棟のあまり使われていない最上階に口腔保健学科を置くという提案が学内で出されたとのことであったが、その後の進展等ついては、現在に至るまで耳にしたことがない。

また、北隣の熊本県における歯科衛生士養成校の事情はKよりもさらに込み入っていた。それは、かねてより口腔保健学科が設置されていた県北部の医療系大学では当初、入学定員が50名であったのが、これまた年を経る毎に増員し、さきに述べた、私がD2になった頃は80名となっていた。さらにK同様、専門職大学も熊本市内に新設されていたが、こちらもK同様、県内複数の歯科衛生士専門学校を統廃合、吸収したものであったのだが、この新設専門職大学が、さきに述べた古株の医療系大学とが何かと競い合うようになり、その定員も当初の40人から増加し、古株の医療系大学での学科定員が80名になった頃には70名となっていた。

また、以前の口腔保健学科は、そこまで人気のある学科ではなかったが、近年の社会全体の高齢化により、口腔機能の重要性が医療分野全体から見直されるようになり、くわえて、歯科衛生士が臨床現場のみならず、さまざまな研究、あるいは企業活動分野などにおいて専門家として参画するようになってくると、自然、社会での認知度も高まり、さらに、昨今は管理栄養士とのダブル・ライセンスの方も増えてきているとも聞き及んでいる。これは、高齢化という社会全体の潮流としては決して好ましいものとは云えないが、ともあれ、そうした情勢の後押しを受け、これまで、あまり陽の目を見ることがなかった地味とも云える歯科衛生士をはじめとする医療介護系職種全般(歯科技工士を除く)の人気が高まったのだと云える。他方で、人文社会科学系の法律や会計などの専門職系以外の学科は、軒並み人気が著しく下がり、また、人文社会科学系を主軸とした小規模大学の学生募集停止や閉校のハナシは度々聞いた。

おそらく、その背後にはインターネットをはじめとする情報通信技術の、ここ30年ほどでの大幅な進歩があると思われるが、それを受けて、最後のアナログとも云える人体を扱う医療系分野の人気が上がってきたということは、我が国の性質の一面を端的に示しているのではないかと思われた。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!

順天堂大学保健医療学部

日本赤十字看護大学 さいたま看護学部 


一般社団法人大学支援機構



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