2019年6月24日月曜日

20190624 「翔ぶが如く」を読了し、次の著作を読みつつ思ったこと

先日ようやく「翔ぶが如く」全10巻を読了しました。これまで当作品に関して記したいくつかのブログ記事は、投稿直後から、ここ最近の投稿記事では珍しいほど、多くの方々に読んで頂きました。これらを読んで頂いた皆様どうもありがとうございます。


この作品を読了し思ったことの1つは、我が国の「官」についてです。この作品では、現代に繋がる我が国の「官」の体制が、未だ盤石でなかった時代が描かれていると云えますが、おそらく、良くも悪くも、この作品にて描かれている西南戦争による「学び」から、我が国近代国家の統治の癖のようなものが定着したと思われます。

そして、それが時代を経るごとに、少しずつカタチを変えつつ、同時に根本的には大きな変化をすることはなく、太平洋戦争後の現代に至るまで継承され続けているように思われます。また、そうした「統治の癖」がインターネットによる情報化社会によって露わになり、その「統治の癖」と「社会全般での意識水準」の均衡を得るため、何と云いますか「時代精神の変革」を余儀なくされているのが現在であると云えます。

とはいえ、こうした時代精神の(特に内発的な)変革は、おそらく、我が国が不得意とするところであり、また、その変革のためには古今東西の事例、すなわち、
研究などにより、ある程度明瞭に抽象化された歴史像の存在および、その社会での定着が重要であると思われるのですが、これがさきの「時代精神の変革」から遡り、さらに不得手であるように思われるのです。

一概には云えませんが、我が国社会全般が持つ性質として、即物的に感知可能と云える 
表層的な要素に対しての感受性はかなり鋭い一方で、抽象的な意識の連合、あるいは思想に関しては、それらに基づいて他の考えを評価したり、新たに他の思想を組み立て、表明することを、敢えて避けるようなところがあると思われます。 

そして、その淵源について考えてみますと、近代社会以降に関しては、冒頭の「官」による西南戦争からの学びがあるのではないかと考えます・・。さらに、そうした「官」側の姿勢を批判したものが福沢諭吉や夏目漱石にはじまり丸山眞男に至るまでの近代日本について述べた思想家、著述家など人文社会科学分野の系譜であると云えるのではないでしょうか。


また、そのように考えてみますと、昨今、主に会社経営、医学など実学分野での学問研究に対しては「官」側からも積極的に支援する一方、歴史や思想といった即物的には実学とは (到底)云い難い学問研究は、以前に比べ、さらに避けられている、もしくは多少悪意的にとれば「エピゴーネンの生成」に腐心・注力しているようにも思われます。 

そして、そうした視座に基づき、先日から当ブログにてとりあげたウンベルト・エーコによる「プラハの墓地」を読んでみますと、なかなか考えさせられるものがあると思われます。


そういえば、「プラハの墓地」は、その後100頁以上にまで読み進み、また、現在そうした状況であることから、さきに読了した「翔ぶが如く」と、当著作を関連させようとするのかもしれませんが、以前も当ブログにて述べたことですが、面白いことに両著作の時代背景は20年程度しか変わらないのです・・。 

さらに、こうしたことを書いていますと不図、想起されるのは、さきの両著作時代背景の 中間期の我が国社会を背景とし、また、作中随所に当時の社会状況についての描写も見られ、そして饒舌とも云える独白形式の文体が作中多くを占めることにより「プラハの墓地」とも共通する要素があるように思われる夢野久作による作品「犬神博士」なのですが、さて、この指摘は面白いでしょうか・・(笑)。

今回もここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。
順天堂大学保健医療学部



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