2020年12月14日月曜日

20201214【架空の話】・其の53

 入学後しばらく経ち、GWも終わり、ようやく異郷の地での新たな学生生活にも慣れてきたある日、顎顔面解剖学の講義の後、休み時間に次の教養科目講義の準備をしていると、後ろから「今週の金曜日にクラスの皆で「飲み方」をしようと思うのだけれど、参加しますか?」とクラスメートが訊ねてきた。

その後ろの少し遠巻きに、さらに何人かのクラスメートが、この様子をそ知らぬ風で窺っているようであったが、当時の私としては、そうした集まりに呼んでもらえること自体がどうにも嬉しく「ええ、金曜日は空いていますので参加できます。」とほぼ間を置かずに返事をすると「ええ、分かりました。じゃあ、詳細はまた後でお知らせしますので・・。」と云い、去って行った。

小規模な大学での二年次編入とは、さきの一年の間に既にグループや、ある程度フィックスされた学生同士の交友関係などが出来上がりつつあるところに途中から入るわけであり、くわえて私の場合、多くの同期学生とは年齢が四つほど離れ、さらに利用できるような地縁も殆どないことから、入学当初は、自身の持つK独特の苗字からか、わずかに話しかけて来られる方々もいたが、しばらく経ち、私が余所者であることが周知になると、私は学科内で少し浮いた存在となっていることに気が付いた・・(笑)。

とはいえ、元来私はあまり好んで友達を作ろうとする性分でもないことから、そのままのいわば膠着した状態にて、この時期まで来たわけである・・。

さて、その日の講義が全て終わり、学生等が三々五々帰って行くなか、さきほど訊ねてきた同期の方が「あの、さきほどの「飲み方」のハナシですが、今週金曜日にT文館の「***」というお店で18:30開始の予定です。***さんは編入された新入生ですので支払いは結構です。」と、四つ程年下と思われる同期の方に告げられて少し困ってしまった。「あの、もちろん参加したいとは思うのですが、自分の分の会費はお支払いしたいのですが、それは可能でしょうか?」と訊ねてみたところ、彼女はしばらく考えてから「・・そうですか、分かりました。それは可能ですが、通常の会費の半額の1500円ということでお願いします。」とのことであった・・。こうしたやりとりから、そこまで杓子定規で頭が硬いわけではないようであり、他方で、そうしたことを考え、差配しようとする二十歳(はたち)そこそこの女性の実行力には少し頭が下がった・・。

GW後にして梅雨前、5月下旬のKの気候は充分に暖かく、日によっては夏を思わせることもあり「飲み方」の当日は、講義後に一度帰宅し着替えてから市電でT文館に向かった。この日も良い陽気であったため、少し色落ちしたネイビーのチノ生地のショーツの上に細いブルーのストライプが入った白シアサッカー地の半袖プルオーバーボタンダウンシャツを着て、その上にベージュ色のこれまた少し色褪せたラルフ・ローレンのチノ生地のブルゾンを羽織り、靴はネイビーのサッカニーのジャズを履いて行った。また、久々に帽子を被ることにした。それはあまりつば広でない、ベージュコットンのブーニーハットであった。

集合時間少し前に「飲み方」会場の全国チェーンの飲み屋さんの前に着くと、既に半数ほど集まっていた。私は多少遠慮気味にそちらの方に行くと、先日訊ねてきた同期の方が「ああ、もう大分集まってきましたので「お店の中に入ってください。」と云ったところです。」と話しかけてきた。

たしかに皆、会場のお店の中に入って行っているところであったが、こうして、その様子を傍から眺めてみると、彼等彼女等はいかにも若く、どうも高校生の様にも見えるように思われた・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




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