2021年1月3日日曜日

20210103【架空の話】・其の59

やがて背後から「おお、***君、もう来ていたのか!良かった、良かった!」と聞き慣れた声で云われたので振り返ると、そこにはこちらに向かって歩きながら白衣を着つつあるE先生がいた。

私はE先生に挨拶して、持参のリュックから大学指定の淡青の白衣(作業衣)を取り出し、E先生に倣ってそれを着た。これでようやく、それらしく見えるようになったと思われたが、如何せん初めての場所であることから、その時の私はオドオドしていたに違いない・・・

やがて、E先生が「じゃあ、もうすぐ時間だからとりあえず中に入ろうか。」と云い、ガラス造りのドアを開け、入って行った。この建物は斜面上になった土地の上に建てられたらしく我々が入った出入り口は2階であり、また、そこは、さきの歯科診療棟の2階と繋がっていた。そして研究棟の2階には学部事務室や技工室があり、他には普段はあまり使われないという学部長室などもあり、これはE先生が案内しつつ教えてくださった。

また、技工室への挨拶の際には、仕事が一段落したと思しき技工士さん達に紹介してくださった。「ああ、ハナシはE先生から聞いているよ。何か必要な材料があったら遠慮なく云ってね。」と明るく仰って頂き少し安心したが、その技工室はまさに「現場」といった緊張感があり、作成途中の補綴装置や石膏模型が整然とではあれ、至る所に置かれており、大学での実習室とは大分違った趣がそこにはあったと云える。

技工士さん達は総勢三人とのことであったが、そのうちの一人は、義歯のレーズ研磨のため同階にある研磨室に行っているとのことであり不在であった。そのため挨拶は後日ということになり、学部事務室向いにある階段にて歯科理工学教室のある五階まで行くことにした。

ちなみにE先生は、階段を一段飛ばしで上がっていくという特徴というか癖があるのだが、それはここでも同様であった。

五階に着くと、そのまま、すぐ目の前にある教室に入った。そこには教室の教員と思しき方がPCに向かい仕事をされているようであったが、我々が入ってくるのを認めると「はい、どなたですか?」に続いて「ああ、E君かね・・。今日は実験に来る日だったかな?」と訊ねてきたため「いえ、今日は例の実験を手伝ってくれる医専大の学生さんを挨拶のために連れて来ました。」と返事をすると「・・ああ、こないだの朝のミーティングで出たハナシだね。ふーん。」と淡青の白衣(作業衣)を着た、緊張気味の私に視線を向けた。私は「どうも***と申します。この度はお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。」とぎこちない感じで挨拶をすると「うん、こちらこそどうぞよろしく。何か分からないことがあれば聞いてくださいね。私は##と云います。」と返事が来た。この方は教室の助教の先生とのことであったが、年齢は60に届いている様子であり、その容貌には、何となく川端康成を思わせるものがあった。

続いて、その隣りのパーテーションで区切られた部屋に連れられて行くと、そこにも何やらPCで作業を行っている先生と思しき方がいて、E先生が声を掛けると「おおE君か!ハナシは聞いているよ。例の医専大の学生さんを連れてきたのかね。よろしく!私も歯科技工士なんだよ。」とのことであり、この先生にも挨拶をすると「うん、何か困ったことが云ってきなさい。しかし、E君が勤め先の学生をここに連れて来るなんてE君も出世したものだな・・ええ(笑)。」と悪意のない感じで冗談をE先生に云うと「いえ、あの実験は歯科技工士の手が必要とのことでして、それで、この**君に白羽の矢を立てたわけでして・・。」と、E先生は少し緊張しつつのおどけ気味で返した。どうやら、この先生とE先生は、さきの##先生よりもくだけた中であることがここで推察された。さて、この%%先生もまた、年齢は60過ぎであるように見受けられたが、同時に筋骨隆々としたスポーツマンタイプでもあり、この時もTシャツ姿であった。また、後で聞いたところによるとテニス部の顧問を務められているとのことであり、時々は学生さんに交ざりプレーをするとのことであった。

また、教室には教授以外にもう一人教員がおられるが、その日は既に退勤しているとのことであった。そこで廊下に出て、本日のメインとも云える教授に挨拶すべく、さらに奥にある個室の教授室の前に立つと、先を行くE先生が振り返って「じゃあ、初めに私が教授室に入って、案内して良いか訊ねて、それで教授からオッケーが出たら名前を云って入室してください。」と言い残してから、前を向き直し、少しだけ開いている教授室のドアをノックして「先生、Eです。入ってよろしいでしょうか!?」と、先ほどとは異なる大きな声で訊ねると、すぐに「おお、入れえ!」と、これまた大きな声で返事が来た。E先生はこちらをチラッと見てから、ドアを開け教授室に入って行った。ドアを開けた先は、日本の城門構造でよくある桝形のようにパーテーションが置かれ、そこには学会発表に用いたと思しき英文ポスターが貼られており、その奥の様子までは伺うことは出来なかった。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!






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