2020年5月23日土曜日

20200522【架空の話】・其の17

【架空の話】
Bとの会話にて「就職に備えて歯をキレイにしておきたい」との要望を聞き、D先生の医院をBに紹介した。そしてBは定期的にPMTCとホワイトニングを受けることになった。これら行為は主に歯科衛生士の職分であるとのことから、同年代のK出身者同士であるBとCさんの会話は弾んだのではないかと思われる・・。

そういえば、指導教員に対して編入試験の合格を伝えると「ふむ、それは良かった。では、次は修士論文を頑張ってください。今のドラフトでは、まだまだ、詰めが甘いところがありますからね。」とのことであり、そうしたこともあってか、以降しばらく研究経過報告や研究指導では、厳しいダメ出しが続いた。ちなみに、この先生のダメ出しは、たしかに厳しいことは厳しいのだが、そこから落ち込むような精神的ダメージを受けることは少なく、ストレスが溜まらないといった特徴があったが、こうしたものは、人それぞれ相性といったものがあるのではないかと最近は考えている・・。

そして9月の末頃になると、修士論文ドラフトも、どうにかカタチになり、個々の章について、さらに詳説すべきところ、省いても良いところ、といった文章の明暗、メリハリをつける作業や、記述内容について、その文脈、背景の把握そして確認などを行う段階に入った。これら作業はたしかに面倒ではあるが、年内中に、ある程度仕上がった状態にするためには、この程度までは進めておく必要があった・・。

指導教員は、経過報告や研究指導の際は、さきのように厳しくなることもあったが、それ以外については、やや放任気味とも云えるほどに自由で、さらに学内外問わず気軽に話しかけてきた。また、笑いのセンスも独特であり、ローワン・アトキンソンやモンティ・パイソンといったコメディアン、コメディグループを知ったのは、この先生を介してであった。こうした情報は、もちろん会話の中から出てくることもあれば、あるいは、先生の研究室にて報告や指導の後に、雑談をしていると、自然、本棚に並んだ書籍や映像資料で目に入ってくるものを話題にすることがあり、そうしたことを契機として知ったものも少なからずあった。

ともあれ、そこで当時の私がスゴイと感じたのは、書棚に並ぶ、ある著作について質問すると、それについての説明が延々と出来ることである。さらにその中で、別の著作や映画作品などの名前を挙げ「これらも今話した著作と関連があるから、興味があれば、見ると面白いと思うよ・・。」と、またそこから更にハナシを展開出来るようなところであった・・。さまざまな分野での知識の多い人を「引き出しが多い」と評するが、先生の場合、引き出しの中にまた、別の引き出しがあり、さらに、そうしたさまざまな段階での引き出しは、それぞれが、どこかで繋がり、関連し合い、ある種の知識体系を形成しているように思われた。

また、編入試験の報告の際に、不図、ハナシに出たことであるが、この先生の家は、曾祖父の代から東京の所謂、山の手地域に住んでいるが、それ以前については、おそらくヤマト朝廷成立の頃から中国地方に住み、古い記録には県主(あがたぬし)との記載があり、時代がくだってからは在庁官人、西国御家人、国人そして土豪化し、乱世を含めた各時代をどうにか生き延び、江戸期に入ってからは、当地に封じられた大名から、土着の古い家として、郷士の格式を与えられたという。そして現在でも、この先生の苗字を冠した社が地域にあるとのことであったが、それは仏教の普及以前から、この地域に居たことを示す材料にはなるかもしれないが、あまり実感が湧かないと云うか、そうした感覚がイマイチよく分からないとのことであった。

さて、D先生の医院にPMTCとホワイトニングで通うことになったBであるが、そのうちに歯科衛生士のCさんと仲良くなったようであり、修士論文の作成で忙殺されていた12月初旬に少しあらたまった重い調子でBから「実はちょっと前からCさんと付き合っているのだが・・やはり**にはちゃんと伝えておこうと思って。」と云われた。私の方は、Cさんを気にはなっていたものの「恋をする」ではなかったため「ああ、それは良かった。そうすると期せずして私がキューピットになったわけだから、長く続くといいな。」と自然な感じで快活に返事をした。すると、Bの方は少し気になっていたのか、重い調子であったのが、いつもの調子に戻り「Kでの家探しは手伝うよ。来年になって修士論文の提出と審査を終えたら、一度一緒にKに行こう。」とのことであったが、これは後日、実現した。

そして年末にはW県から兄が帰省してきたが、私の方は、この年の年末年始はあまりゆっくりとは過ごせず、論文の推敲やら、調べものなど論文審査の準備をしていた。しかし、久しぶりに会う兄と話すことはやはり面白く、また、その服装は以前と比べてアメカジ色が薄くなったように思われた。そこで、そのことを訊ねてみると「ああ、あっちに住んでいると、服装にお金をかけることが面白くなくなってきて、それよりも釣りとかの方がなんだか面白くなってきてね・・。それと、最近、釣りで知り合った人が県立医大のお医者さんで、親切にも色々な釣りの情報を教えてくれるのだが、そのお医者さんに「君は26・27歳くらいでまだ若いのだから医学部の学士編入試験を受けたらどうか?」って云われたよ。それで、こないだ聞いた**の専門職大学編入の件について、俺の意見としては、このまま文系の院を出て職に就くよりかは、将来の選択肢を増やすことが出来るという意味で、とても良いと思うよ。でも、その歯科技工士って資格は、今まで聞いたことがないけれども、良さそうなのか?」と思わぬ方向に話は行った。私はD先生から耳学問で聞いたことを散りばめながら歯科医療や歯科技工について語った。理工学部出身の兄からすると、歯科技工界では、あまり自動化や機械加工の技術が、他の工業分野と比べて進んでなく、人間の手によって一つ一つ作成されていることがかなり驚きであったようだが、それが今後、変わってくるということで納得したようであった・・。

また、兄の方も「うーん、実のところ、ここ最近は、このまま会社に残っている自分を全く想像できなくなってきているから、何か目標を見つけたら、**のように、その方向に向かって動く方が吉かもしれないな・・。」とのことであった。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!

新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5

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