2020年11月26日木曜日

202011126【架空の話】・其の49

その後、ホテルに戻ったのは9:50頃であり、無事にチェックアウトも終えた。とはいえ、Bが着くまではまだ少し時間があることから、腹ごなしも兼ねて、また少しT文館を散策しようと思い立った。

そこで、財布など貴重品以外の荷物をフロントに預け、再度街に出てみると、週末ということもあり、人通りは朝よりも大分増えていた。してみると、さきほど覗いた専門職大学は国家試験が集中する期間ということもあってか、週末にも直前の講義を行っていたのだろう・・。

ともあれ、私の方は再びT文館の電停を挟む交差点から、今度は名君と謳われた旧藩主を祀った神社の方に出向いてみた。この神社は特に古い由緒を持つわけではないが、社叢はキレイに整備され、また社殿は時代を感じさせるものではないものの「丁寧且つ重厚に造られた」といった感じを受けた。こうしたところは、以前兄と参拝したW市に鎮座する国造家が代々神主を務めるあの神社とは、異なった印象を受けたが、こちらの方が南国ということもあってか、大胆な豪壮さが目立ち、対してW市の神社は、社叢などでも出来るだけ「自然のまま」を大事にした、詫び・寂びにも通じる感覚があるように思われた。

あるいは、こうしたところにも地域性は発露するのであろうかと思いつつ、これからお世話になるKの神社に参拝をして今度はその表参道を通り、再びT文館に戻ることにした。表参道とは云っても東京のそれとは感じが異なり、その神社側奥の景色には、Wとはまた異なった様相の山なみが控えていた。また参道左手には大きな公園があり、既に家族連れなどで賑わいつつあったが、そこを過ぎて交差点を渡ると、再びアーケード街に入った。このあたりは映画館やアウトドア・ショップ、また比較的大きな遊戯施設などが並んでおり、街並みは参道ということもあってかキレイに整備されていた。そして、そのあたりを過ぎて再び市電が走る通りに出るあたりに、味のある構えのお店が目に入ってきた。なおもお店に近づくと、日本茶の薫りがしてきて、また、店内には一休み出来るように野点の茶会に用いる緋毛氈をかけた床几台も置かれていた。日本茶のお店であったが、その薫りは首都圏でのそれと若干異なるように感じられたことから、店内の方を少し気にしつつ歩いていると、店内から「どうぞ一服されてみてはいかがでしょうか?」と声を掛けられた。おそらく50代くらいの、これまた元気な感じの女性であったが、促されるまま店内に入ると店内に置いてあるお茶の説明をしてくれ、さらに小さな丼のような形の煎茶茶碗に注がれたお茶を出して頂いた。「あの歌」でも分かるとおり、この時期はお茶の旬の季節ではないが、ここ南国ともいえるKでは、もうじき四月初旬には新茶が出回るので、その時も是非飲んでみて欲しいとのことであった。ともあれ、そこで飲んだお茶は淹れ方も良かったのだろうが、これまでに飲んだお茶の中で最も味や薫りが濃厚に感じられた。お茶も作物・植物であることから蜜柑などの柑橘と同様、産地によって味が異なるということが、ここで初めて体感として理解できた。とはいえ、お店の方はあまりそうしたことに頓着しない様子で、商品の説明を続けられていたが、その中でスティック状の小袋に入った粉末状のお茶が手軽で良さそうであると思い。「すいません、あのスティック状の袋に入ったお茶を少し頂けますか?」と訊ねてみると、気安く応じて頂いた。その味や薫りもさきと同様であり、尚且つ手軽であると思われたことから、実家やD先生や指導教員へのお土産に良いと思い10本入りのものを三つ購入させて頂いた。

昨日の鶏の肝刺と云い、このお茶と云い、やはり異なった地域には、異なった種類の美味しさがあるものだと実感しつつ、会計を済ませた丁度のところで携帯電話が鳴った。時刻は既に11:00をまわっており、おそらくはBからであろうと確認すると、果たしてそれはBからであった。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

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