2019年10月13日日曜日

鹿児島での出来事について(変性意識?)【20191013】

はじめに今回の台風19号による列島各地の被害が小さく、そして被災された方々の日常生活が速やかに復旧されることを祈念いたします。

ここ徳島では、風雨の強い日が昨日12日迄に数日間続き、鉄道・航空などの運行に影響が生じましたが、東日本ほどの大きな影響、被害はなかったと思われます。

さて、本日は休日であることから新たにブログ記事を作成しようと、ここ数日間での記事毎の閲覧者数を確認したところ、去る9月15日投稿分の「自身のことについて(2007~2013年)」が最も多く読んで頂いていました。そして、この記事をあらためて読んでみますと、その後の投稿記事において鹿児島在住時の出来事を主題とする旨を述べていましたので、今回は、それを題材として記事を作成します。

以前の投稿記事にて述べましたが、私は2009年から2013年の歯科理工学実習に携わり、また2009年から2011年は主に実習補助として参加させて頂きました。その間、事情により2010年暮れ頃から2011年の期間に研究室スタッフが急激に減少したことにより、翌2012年の実習では、私がいくつかの実習項目を担当させて頂くことになりました。

とはいえ、2009年からほぼ同様の項目を実習補助の立場であれ現場にて関与させて頂いていた経験から、また、それら項目の担当であった准教授の先生が実習要領を私に(親切に)教えてくださっていたことから、実習担当をさせて頂くことに対しての恐れは、あまりありませんでした。

ただ、実習要領を教えてくださった先生が以前から仰っていた「鋳造や鑞付け実習は、高温の炎を扱い、また多くの学生さんは、おそらく、そうしたものを扱うことが初めてであろうから、とにかく火に関係する事故が生じないように注意しなければならない。」に関しては身の引き締まる思いであったことは記憶しています・・。

これは今でも出来るか不明ではありますが、実習項目概要を説明し、班員全員の試料作製を見届け、そして、それら試料を用いて所定項目の測定を行い、測定結果の講評を行い、レポート作成のための要点(これは班毎にそれぞれ傾向のようなものがあり、そこに(出来れば教科書記述に依拠した)理論的背景を肉付けした説明・仮説のようなものを提示する。)を説明するのは、身を入れて行うと想像以上に消耗するものであり、特に高温の炎を扱うバーナー・遠心鋳造機が設置されたストーン・テーブル周辺での実習工程では、機器から生じる熱気も相まって、汗をかきかき、学生さんの手元と同時に全体の様子も把握していなければならなず自身としてはそれなりに大変なものでした・・(苦笑)。

また、実習工程においては、必要以上に学生さんの手助けを行わないことが重要であり、他方で所望項目の測定に供することが可能な程度の試料を(出来るだけ)人数分作製することは、時として矛盾する要求ともなり、熱気が包む実習現場にて突如考えさせられるといったことがしばしばありました・・。

そして、そうした状況の時、私は一体どのような表情をして対応していたのでしょうか・・。面白いことに、いや、残念なことであるのか、そうした状況での自身の行動・言動については、濃淡はあるものの比較的記憶していると思われますが、肝心のそれを行わせた・言わせた精神状態については、現在において再現(追体験)することは困難であるように思われるのです・・(苦笑)。おそらく、心のギアが異なったところに入っているか、あるいは変性意識のような状態になっていたのではないかと思われます・・(笑)。

ともあれ、そうした状態で、鑞付け実習でのハイライトと云える、バーナーで鑞を液相状態にして、それを母材間隙に流し込む工程を見ていますと、バーナーの炎の状態、そしてその当て方が、極めて重要であることから、緊張しないように少し離れて学生さんが持つバーナーの炎の行方を注視しつつ、時折、意見や助言をして、また周囲の気配を察知し、さらに、時には工程についての質問を受けるようなことをしていますと、自然、若干前のめりのいかり肩になり、表情も多少厳しくなっていたのではないかと思われます・・。

そして、おそらく出席番号から考えて、最初の班での鑞付け実習での、まさにハイライトの際、ある男子学生さんが予想外の慌て方をしたのは、大変印象的であり、また、学生さんの手元のバーナーを注視している際、突如横から「何でそんな目をしているの?」と、ある女子学生さんに言われたことがありました。少し驚いて横を見ますと、その学生さんは手を後ろに組んで、本気でない反復横跳びのように、ぴょんと少し横に跳んで、いたずらっぽい笑顔をしていました・・。

後の方の出来事は、突然の予期せぬ質問であったことから、その場では、はっきり返答することなく、工程が一段落してから、柳田國男や谷川健一の著作にあった鍛冶屋と「目かんち」(古俗語で視覚に障害がある方々)との関係性、さらに古代ギリシャ神話における鍛冶神であるキュクロプス(サイクロプス)も隻眼であったことに共通する溶湯(液相)状態の金属を扱う行為の中で、ある程度普遍的と思われる反応(目を細くする・片目ずつ細くして目の疲労を抑える)をそれらしく述べて、その時の自身の目つきの説明に充てたことを記憶しています・・(苦笑)。

他にも、どうしたわけか、2012年の実習から、最初の班にはじまり、これに類するような出来事がしばしば生じ、またそれらを経る毎に、自身の精神状態も徐々に良くなっていったものと記憶しています。そして、それら出来事と自身の精神状態に、何らかの相関関係があるのか、ないのかについては、科学的な説明・立証は困難であるかもしれませんが、自身は(何かしら)あるのではないかと考えています・・。

そして、その媒介となったものは、これまた谷川健一等の著作にて述べられている地域特有の「セヂ」のようなものではないかと思われるのですが、さて、如何でしょうか?

今回もここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。





日本福祉大学
オープンキャンパス

~書籍のご案内~
新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
前掲書籍の主著者である師匠による歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。師匠はこれまで長年、大学歯学部・歯科衛生・歯科技工専門学校にて教鞭を執られた経験から、さまざまなご要望に対応させて頂くことが可能です。

上記以外、他分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。
~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
conrad19762013@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!




















株式会社幻冬舎刊 森見登美彦著「有頂天家族」pp.56-58

「遥か平安時代から我々の血脈が続いているのは明白である。いかに我々が狸といえども、楠の洞から毛深い飴のようにむくむくと浮き世に押し出されてきたわけではない。私に親父がいる以上、親父の親父もいるのが道理だ。
 私が不本意ながら末席を汚す下鴨の一族やその流れを汲む夷川の一族を例に出せば、桓武天皇の御代、平安遷都と時を同じくして奈良の平群から四神相応の新天地に乗りこんできた狸たちが開祖であるという。どうせ人間がこしらえる旨い飯と汁物の匂いに誘われて、うつつに万葉の地を捨てた烏合の狸に決まっている。頼みもせんのに産み増えて、「開祖」も何もなにものだ。
 平安時代から受け継がれて野放図に枝分かれした血脈は、そこはかとなく我々を縛る。私のような「ぼへみあん狸」ですら、軽々に捨てられないのが血縁というものであり、なまじ血脈があるだけにささやかな諍いが便所に流せず、水ならぬ血で血を洗う争いとなることもある。「血は水よりも濃い」とは、私には手に余る言葉だ。
 
 我が父は、洛中に名高い立派な狸であった。大勢の狸たちから敬われ、その威光で狸界を束ねてきたが、無念なことに数年前に不帰の狸となった。
 その偉大なる親父殿が遺したのは、私を含む四匹の息子たちである。しかし残念なことに、父親の偉大を引き継ぐには、ちょっぴり器の幅が足りない子狸ちゃんが揃っていた。偉大なる父親を持つ子どもたちを巡る、数限りない悲劇のうちの一つである。
 父亡き後、我々が長じるにつれて、長兄のカチカチに堅いわりに土壇場に弱い性格と、次兄の引き篭もりと、私の高杉晋作ばりのオモシロ主義と、弟の「史上未曽有」と評される不甲斐ない化けぶりが満天下に知られるようになると、「あの下鴨総一郎の血を受け継ぎそこねた、ちょっと無念な子どもたち」という我々に対する世間の評価は定まった。
 それを小耳に挟んだ長兄はその憤懣やる方なく、八つ当たりに岡崎公園の松に巻かれた菰を剝がして廻り、「必ず父上を超えてみせる」と右の拳を固く握った。次兄は「そんなこと言われたって、知ったこっちゃない」と井戸の底でぷうっと泡を吹き、私はとっておきの美味しいカステラを食べて腹を膨らまし、弟は「お母さんごめんなさい」と小さく丸まって、これもカステラを食べた。
それでも母は平気であった。
 我が母は、よりにもよって自分の子供たちが、狸界に名高いダメ狸であるとは毛ほどにも信じていなかったからである。我が子は一人残らず、今は亡き父の跡目を継ぐにふさわしい狸だと母は信じた。もはや不条理の領域へと雄々しく足を踏み込んだ、その根拠不問の信念こそ、母を母たらしめて、ひいては我らを我らたらしめるものだったのである。
 我らの父は偉大であったが、母もまた偉大であった。」
ISBN-10: 4344415264
ISBN-13: 978-4344415263