2020年12月4日金曜日

20201204【架空の話】・其の52

到着口から半ば屋外の鉄道駅までの連絡通路を歩いていると、既に陽も落ちているということもあってか、Kよりも強く寒さが身に沁みてきた。

成田空港からは特急に乗っても自宅までは約2時間はかかり家に帰着したのは21:00過ぎであった。家にはいつも通り両親がおり、それぞれの流儀でくつろいでいた。そして私の帰宅をみとめると母が「どう、いい部屋は見つかったの?」と訊ねてきた。それに対して「うんBのおかげで割と良い物件が見つかったと思うよ。」と答えると重ねて母は「それで家賃はどのくらいで、どのくらいの広さなの?」と訊ねてきた。概容をもらった資料を示して説明すると、母は「ふうん、その広さでその家賃・・地方といったって割に高いのね。」と云われた。それに対しては立地の利便性(二つの大学に近い)から反論しようと思ったが、こうしたことで口論をしても不毛であると思い、またそれなりに疲れていたことから「まあ、そんなものだよ。それでも、Bが口をきいて少し安くなったんだよ・・」と返事をして「それじゃ。」と云って部屋に戻り、旅装を解いて、その中からT文館のお茶屋さんにて購入したお茶を一つ両親に渡し、そして風呂に入るため一階に行った。

両親はなおもリビングに居たが、父の方は既に若干眠たそうであった。最近は地方支社への出張が多く疲れ気味であるのかもしれない。ともあれ、土産のお茶の来歴を母に手短に説明してから渡すと、早速「一つ飲んでみよう」となったが、父は「kのお茶は美味しいのは知っているけれども、今飲んでしまうと眠れなくなってしまいそうだから今日は止めておく。」とのことであった。それにつられてか母も「そうね、折角だから明日美味しく頂きましょう。」とのことで落ち着いた。

私からすると、緑茶よりもコーヒーの方が効果が余程強く、緑茶を一杯飲んだ程度では、あまり変わらないのではないかと思われたが、ここは両親がそういうのだから、それで良いのであろう。

そして風呂に入ってみると、やはり昨日のKのビジネスホテルで入ったそれと、肌に感じるお湯(水)が微妙に異なるように感じられた。しかし、こうしたことを有意なこととして感じ取れるようになったのは、年齢による感覚の変化によるものなのだろうかと思われた。たとえば、子供の頃であれば、そうした事を感じ取るようなセンサーはなく、他の何かを強く感じ取っていたのだと思うが、いずれにしても、それは比較に基づく相対的なものではなかったと思われる・・。

そうすると、今後、私はkに住むことにより、否応なく、いや半ば楽しみでもあるのだが、生活のなかで、そうした経験を積んでいくことになるのだろうと思った。その意味では指導教員にしろBにしろ、既にそうした経験を積んでいるわけだ・・。また、それは自分の修士課程での研究テーマであったイギリスへ帰化したポーランド人の作家ジョーゼフ・コンラッドが述べるところとも多いに関連があるように思われることから、ある意味、今回のKへの進学(編入)に伴う移住とは、自分が修士課程で研究した内容の実地応用あるいは検証であるとも云えるのかもしれない・・。

湯船に浸かりつつ、そのようなことをぼんやりとしばらく考え、やがて「さてと!」と仕切り直して風呂から上がることにした。体を拭き、髪を乾かして冬の寝間着であるスウェット上下を着てタオルを首に巻いて再び両親のいるリビング横を通ると父親が「それで、今回はKのどのあたりに行ったのか?」と少し眠たそうな声で訊いてきた。私はタオルを肩から頭に乗せて「ああ、T文館の方に行って、あとはK市の南の方に行ったよ。」と再び頭を拭きながら答えた。すると「・・そうか、じゃあ今度Kに行くまでにウチのご先祖の墓があるところを教えるか・・。それと、向うにいる遠い親戚にも、お前がそっちに行くことになったことを伝えておくか・・。」とのことであり、それだけ云うと再び続きの読書に戻った。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




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