2016年11月20日日曜日

20161120 伝統・文化 「肌あるいは骨身に知る」

これまでに幾つかの地域にて在住した経験から、それら地域での文化、価値観と、現在住んでいる首都圏のそれとで異なっていると感じたことが少なからずあります。その中の一つについて、先日ある機会により思い起こしましたので、それを記そうと思います。
首都圏あるいは我が国を代表する伝統芸能として「歌舞伎」が挙げられます。そして、特に首都圏などの都市部においては「歌舞伎」の観劇とは、どちらかというと高級な趣味とされているのではないかと思われます・・。またそれに伴い、歌舞伎役者もまた、どちらかというと、通常の俳優、役者とはまた異なった種類の有名人として認識されているのではないでしょうか?こうした価値観に対し、首都圏以外での在住経験のない頃は、特に疑問を持つこともなく、ただ、当然・所与のものとして受け入れてきました。しかし、これまでに住んだ幾つかの地域での生活、日常会話などにおいて時折、そうした自身が所与の、当たり前の価値観としているものについての相違が認識されることがありました。その中で印象的であった一つが「歌舞伎」についてです・・。

A「君の実家はたしか千葉県の市川市のようですが、何故幼稚園から中学校まで東京の学校に通っていたのかね?」

B「ええ、やはり同じ公立校とはいっても都心部の学校の方が色々と進んでいると云われていましたし、また、祖父母の家がそちらにありましたので、当時千葉県の市川市に住んではおりましたが、実際に育った場所は、その半分は都心部であるといっても良いのではないかと思います・・。まあ、それでもあくまでも出身は千葉県ではありますが・・(笑)。
しかし、それら都心の公立校においては、私のような生徒は少なからずいましたので、そこまで珍しいことでもないように思いますが・・。」

A「ふーん、B君の祖父母は東京の人なのですね、それでその方々は東京には何時頃から住んでいたのですか・・?」

B「父方は明治以降に上京してきたようですが、母方は明治以前から、つまり東京が江戸であった頃から住んでいたようでして、聞いたハナシに拠ると日本橋人形町あたりで商家を営んでいたようです・・。ですから、祖母などは現在考えてみますと着物の着方から様々な趣味に至るまで、江戸からの文化を受け継いでいたのではないかと思います・・。」

A「・・・そうですか・・それで、その江戸からの文化の趣味とは、具体的にはどのようなものですか?」

B「ええと、そうですね・・祖母は歌舞伎の観劇が随分と好きな方でして、私も幼い頃連れられて何度か観に行った記憶もあります・・。」

A「はああ・・歌舞伎ですか・・それが東京での伝統的な江戸文化なのですか・・?」

B「まあ、現在では様々な地域、地方で興行されるようですが、そういっても良いのではないかと思いますが・・。」

A「しかし、君、歌舞伎とは元々、なんだね、君も知っているとは思うけれども、あまり良いとされる文化ではなかったし、現在でもそれは基本的には変わっていないでしょう・・?梨園といったって、あれは要するに疑似皇室みたいなものではないかと思うよ・・。まあ、昨今は、マスコミの話題作りの一環で随分もてはやされてはいるようですがね・・。」

B「はあ、なるほど・・・しかし、ここ***では、そうした観劇文化自体があまり盛んでなかったことから、そのようにお考えになるのであって、江戸、東京においては、そこそこの歴史があり一般的に伝統芸能と認識されているものと考えますが・・。」

A「・・ふうむ、まあ、たしかに、此処には昔からあまり観劇といった文化自体があまり盛んではなかったし、また歌舞伎といっても、地方巡業に来るような旅芸人一座の一種として認識されているのかもしれないね・・。それでも東京では歌舞伎が立派な伝統芸能とされているのがよく理解できないね・・。」

B「しかし、地方巡業でしたら相撲なども行いますけれど、あれはかつて盛んに行われた地域の村相撲などとは、また別のものとして認識されますよね・・?」

A「いや、相撲は歌舞伎とは違うよ、あれこそまさしく伝統ではないかね・・?だから、村相撲には村相撲の良さみたいなものがあって、大相撲にはまた別のそれがあるのだと思うのだが・・。」

B「それでしたら歌舞伎もそれと同じように考えれば良いのではないでしょうか・・?」

A「まあ、それは理屈としてはそうなのかもしれないが、実際にそうした文化を肌身に知らないと、いくら君が力説・説得したところで、こちらは納得できないよ・・(笑)。」

B「ええ、それは仰る通りであると思いますし、またそれ(肌あるいは骨身に知ること)が文化そしてそれを認識する価値観にて不可欠なことであるとは思いますが・・。
かといって、これ以上、この話題では、あまり有意義な進展は望めないようですね・・(苦笑)。」

こうした経験とは、実際には往々にして、もう少しナマグサイものでしたが、それこそ数多くあります。しかし、現在では貴重な経験をさせて頂いたと考えています。

少なくとも、都心部の文化、価値観が「絶対」ではないということは肌あるいは骨身に知り得ました。

今回もここまで興味を持って読んで頂き、どうもありがとうございます。

さる熊本の大震災、山陰東部での大震災により被災された地域の出来るだけ早期の諸インフラの復旧そして、その後の復興を祈念しております。