2020年11月16日月曜日

202011116【架空の話】・其の46

店内の鳥を焼く薫りは、既知の首都圏での焼き鳥の薫りと、同じ鶏ではあれ、少し違うように感じられた。その後、さきに出た霧島本店にも何度か足を運ぶことになったが、この当初の感覚は、多少オーバーな表現ではあったかもしれないが、しかし、あながち間違いでもなかったように思われる・・。

ここで私は人生初で鶏の刺身を食べたわけだが、その味は粗く述べると、魚の刺身から磯の香を差し引き、尚且つ少し繊維質を強めにした感があり、また味の詳細については部位によっても異なると云える。

くわえて、盛られた刺身の中に鶏のレバ刺があり、これは当初、食べるのを相当躊躇した。なぜならば、私は昔からレバーこと肝臓を用いた料理が苦手であったからだ。対照的に、現在Wに住んでいる兄は、昔からどうしたわけか、そうした料理が好物であり、特にレバーペーストやレバーヴルストには目がなく、それらを褐色で硬めのローマン・ブレッドに塗り付け、サンドウィッチのようにして食べるのをことのほか好んでいた。

さて、この鶏のレバ刺にハナシは戻る。これになかなか箸をつけないのを見て、しびれを切らしたと見えるBが「このレバ刺が美味しいんだよ。初めてで少し気乗りがしないのかもしれないけれども、一つ食べてみなよ。」と促してきた。私の方も敢えて箸をつけないでいたことがバレてしまった恥ずかしさもあり、それを取消すかのように「あ、そうだった。じゃあ食べてみるわ。」と云い、一つ箸でつまみゴマの薫りのするタレに少しだけつけてから食べてみると「何だこれは!?」となった。たしかにレバー特有の匂いは少しだけあるものの、鼻に抜けるその薫りはむしろ上品であり、また、その味には自然な甘みがあり、独特の少し歯ごたえのある食感が渾然一体となって、次の一切れを取るようにと、私を誘うのであった・・。

こうして2切れほど続けて食べていると、Bが「どう、結構美味しいでしょ。このお店に来ると、どうもレバ刺は注文するんだよね。」と云ってきた。私はそれを聞きつつ、頷いて「うん、これはかなり美味しいね。今までレバ刺を食べなかったことが、もったいなく思えて来るほどだよ・・。」と正直に思ったことを伝えた。するとBは「いやいや、東京ではこんな美味しい鳥のレバ刺は多分食べることが出来ないと思うよ・・。やはり、こっちの環境というものがあって、はじめてこうしたものを普通のお店レベルで美味しいものとして提供することが出来るのだと思うよ。その意味でここKは、大陸にも近いし、南の沖縄では、さらに大陸に近いことから、昔から肉食文化があったのだけれども、ここkでは、そうした地域性もあって、鶏の刺身も普通に食べるし、沖縄では山羊を刺身で食べるって聞いているからね・・。あとは北隣のK県では馬刺しが有名でしょ。だから、こっちの食文化は何ていうかな、刺身(生食)文化が魚類に収斂される以前の古い要素が残されているんだと思うよ。」とのことであったが、たしかにその意見には「百聞は一見に如かず」のような体感レベルからの説得力があり、たとえ全く同じ意見を首都圏にて聞いたとしても、ここまで深くは心に刻まれなかったであろう・・。

さて、普通の皮付きのたたきのような鳥刺しを食べると、そこでつける醤油がやけに甘いことに驚いたが、それは未経験のものではなく、以前、編入試験の際に立寄ったT文館のY形屋デパート近くのラーメン屋さんにて出てきた大根の浅漬けを食べるための醤油もまた、まさにこんな感じでった。

私はBに「こっちの醤油は大体こんな風に甘いの?」と訊ねてみると「うん、ここ九州の醤油は全体的に甘いけれども、その中でもここKの醤油は特に甘いと聞いているね。まあ、でも、この甘い醤油が鳥刺しには合うんだよね。」という返事が返ってきたが、それもまた「なるほどと思わせる」妙な説得力があり、あまり反論する気にならなかった・・。

ほかにも当店自慢という鶏めしや桜島の溶岩をプレートとして用いた焼き肉のような焼き鳥を十二分に堪能させてもらい、店を出ようとお会計をお願いすると、店員が持ってきた伝票をBが半ば強引に受取り、金額を渡した。私が自身の分の代金を支払おうとすると、Bは「ここは俺が支払うから!」と制止してきた・・。ここでBにご馳走になる理由は特にないことから、その旨を伝えると「いやいや、Cさんのこともあるから・・。」と云われ、そこで無言ながらハッと感覚的には納得するに至ったものの、ここでの支払いとBとCさんが付き合っていることの明確な関係性は、イマイチよくわからなかった・・。

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2020年11月14日土曜日

202011114【架空の話】・其の45

この市電こと路面電車からは何やらエキゾチック(異国情緒)あるいはノスタルジック(懐旧的)な感覚が惹起せられ、現在となっては慣れてしまったものの、それでも私は路面電車が走る西日本の街が何となく好きである。

T文館通り駅に着いたのは午後6時40分過ぎであり、金曜日ということもあり、繁華街らしく賑わっていた。私はBに「じゃあ荷物だけ置きたいから、ちょっと**ホテルに寄ってチェック・インだけしてきてもも良いか?」と訊ねると「ああ、**ホテルは道を渡ってすぐそこだから、問題ないよ。」とのことであり、一先ずホテルに向かうことにした。以前、編入試験の際に宿泊したホテルよりも若干安かったため今回は**ホテルに予約をしたが、着いてみると、たしかにつくりは前の宿泊ホテルよりも若干古く感じられたものの、掃除が行きわたっているのか全体的に清潔な感じがした。そしてフロントにてチェック・インを済ませ鍵を受け取ると、部屋は7階とのことであった。エレベーターにて部屋に行こうとすると、Bが「地元のこうしたビジネス・ホテルの客室には、これまで行ったことがないから、ちょっと部屋を見せてよ。」と云ってきた。断る理由もないことから「うん」とだけ云って、エレベーター前の立ち位置を少しだけずらした。やがてエレベーターが着き、7階のボタンを押すと、最上階は9階であるらしく「今回はまたやけに上階に部屋をとってくれたな」と独り言のように云うと、Bは「うわ!何だか地元のビジネス・ホテルに入るって面白い感覚だな・・。」と、さきほど銀行からの電話を受けていた態度とは異なり、多少年齢不相応とも云える感じで、はしゃぎ気味であったが、特に気にはならなかった。自分も同じ環境にいれば、はしゃぐような真似はしないという保証はどこにもないからだ・・。

ともあれ、じきに7階に着いて薄暗い廊下を歩き部屋に向かっていると、Bが「ああ、こっち側の部屋だとT文館側じゃないから、あまり景色は良くはないと思うよ。」とのことであったが、まあ、今回の場合、部屋からの眺望すら気にしていなかったことから「まあ、今回は普通に宿泊できれば良いから・・」と控えめに云うと「うん、まあ、たしかにそうだけれどね。」と私につられたのか、静かな調子で返事をしてきた。

部屋に着きドアを開けると、すぐにルームキー・ホルダーを差し込む穴が壁に設置してあり、そこにホルダーを挿入すると自動的に室内照明が点灯するようになっており、私はこれまでにも経験したことがあったが、Bの方は「へえ、こりゃすごいな・・。」と感心していた。

やがて荷物を客室に置き、またすぐに部屋から出ると、となりでBがスマホの操作をはじめ、そして、そのままでエレベーターに乗り、降りてからすぐに電話をかけはじめた。すぐに繋がったようであり、何やら二言三言先方と話してから「それじゃあ、大体5分後に、着くようにしますので、よろしくお願いします。」と云って話を終えた。そして私に「うん、予約は出来たから、ここからは1、2分でお店に着くから、ちょっとトイレに行ってくる。」と言い残して、そそくさとフロントロビー横のトイレの方に行った。」しばし待っているとBが戻ってきて「どうもありがとう。じゃあ行こうか。」と正面玄関からホテルを後にしてT文館の繁華街の方に向かって歩き、そこを過ぎた交差点を渡ると、また飲食店が並んでいたが、その中の一つのお店に入ると、店内から鳥を焼く薫りと会話の声が聞こえてきた。どうやら繁盛しているお店のようであり、Bによると「このお店は本店は霧島の方にあり、こちらのお店も最近開店したのだけれど、なかなかの評判なんだよ。」とのことであった。また、気のせいかもしれないが、たしかに店内の鳥を焼く薫りは、それまで首都圏で慣れてきた焼き鳥の匂いと、同じ鶏ではあれ少し違うように感じられた。その後、このお店は、さきの霧島本店にも何度か足を運ぶことになったが、当初の感覚は、少しオーバーな表現ではあったかもしれないが、あながち間違いでもなかったように思われる・・。

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2020年11月13日金曜日

20201113【架空の話】・其の44

また、キリの良い金額になっていたことから同意し、契約することにした。比較的早く済んだ部屋探しであったものの、現在となっても、これは悪くない契約であったと思われる。

不動産屋さんに戻り、必要書類の記入事項などを埋め、保証人などについての書類をまとめてファイルに入れて頂き、帰宅して作成の後、郵送することになった。さて、割合早く部屋探しは終えたものの、物件をいくつか見たため既に陽は沈みかけていた。また、復路の飛行機は明日であることから、特に急ぐ必要はなかったが、こと、ここまで至ると次は「早く安心したい」という気持ちが出てくるようであり、Bと共に不動産屋さんを出て駐車場の車に向かっていると、Bの携帯電話が鳴った。それを取り出し、発信元をたしかめると、Bは指を立てて唇に当て、静かにするようなゼスチャーをしてから電話に出た。そして、背筋を伸ばして神妙な調子で電話応対をして「・・はい、延岡支店ですか。承知しました。大丈夫です。では、また次の内定者研修の際に。失礼します。」といった感じで通話を終えた。やがて携帯電話をちょっと慎重な感じでポケットに戻すと、少し間を置いて「・・初の赴任先が宮崎県の延岡になったよ・・。多分、実家から通えると思っていたのだけれど、延岡はさすがに遠いなあ、こりゃ、また一人暮らしだよ・・。」と、独白ともとれるような調子で話した。

私は「延岡かあ、あそこは宮崎県でも北寄りの大分県に近いところだよね・・。そういえば、さっきのお好み焼きさんのご主人の息子さんの通っている大学も延岡って云っていたよね・・。」と話しかけると、少し間を置いてから「ああ、そうだったね・・。まあ、初めての赴任地は実家から少し離れている方が良いかもしれないしね・・。」と、あまり噛み合わない返事が帰ってきたが、どうやらそこまでは不本意ではなかったようで、しならく車を運転していると調子が戻るというか、いつものBよりも少し多弁にすら感じられ、そして「ええと、帰りの飛行機は明日で、宿はたしかT文館だったよね。それじゃあT文館あたりで夕食にでも行こうか?」と訊ねてきた。私は「また美味しいお店を知っていたら教えてよ。前の試験の時に聞いた「餃子の**」もなかなか良かったけれど、今日は折角だからKらしいものが食べてみたいね・・。」と云ったところ、Bは少し斜め上を見てから「ああ、そういえば、こっちの方では鶏をたたきや刺身で食べる文化があるのだけれど、それは食べれそう?」とさらに訊ねて来た。私は「ええ!鶏肉を生で食べて大丈夫なの?いや、こっちの人達がそうやって食べていて大丈夫であれば僕も大丈夫だと思うし、あと、それに感覚的に「無理」ということもなく、良い機会だから食べてみたいなあ・・。」と返事をすると。Bは「オッケー分かった。じゃあ、大体のプランは出来たから、とりあえずは車を家に停めよう。」と云って、また少し背筋を伸ばして、ストレッチのような仕草をした。Bの実家は、付き合っている歯科衛生士のCさんのご実家があるY野とは方角が異なり、粗く云うと南側の指宿や枕崎寄りの市電終着駅近くのK市街地辺縁部にあった。その辺りは新興住宅地として造成されたようで、割合新しくキレイな家が建ち並んでおり、初見では、首都圏近郊のそれとも、あまり有意な違いを見出すことは出来なかった。

ともあれ、Bは車を実家駐車場に停め、家のドアを開け「今、戻って来てまた出かけるから、帰りは多分10時過ぎになる。それと、また明日車使うからね。」と、これまた、さきに聞いたイントネーションで云うと返事を待たずに、すぐにこちらに戻ってきて「じゃあ、行こうか。」と云いつつ歩き出した。陽は既に沈み時刻は午後6時少し前であった。比較的大きい通りに出ると、マクドナルドやガストが目に入ってきて、その通り沿いになおも進むと市電の駅に到着した。

市電は路線内のどの駅までであっても同一料金の170円とのことであった。そこから約30分ほど市電に乗っていると、やがて以前にも見たT文館の景色が目に入って来た。ともあれ、以前にも少し書いたが、この市電こと路面電車からは、何やらエキゾチック(異国情緒)あるいはノスタルジック(懐旧的)な感覚が惹起せられ、現在となっては慣れてしまった部分もあるが、それでも私は路面電車が走る西日本の街が何となく好きである。

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2020年11月10日火曜日

20201110【架空の話】・其の43

もしもお好み焼きに麺が入っていたならば違っていたかもしれないが、とりあえずは完食することが出来た。またBの方も同様で、完食後も落ち着いた様子で、店内設置のテレビで番組を観たり、スマホ操作などをしていた。

後続の客はあまりいなかったため、その後店内は混雑せず、急かされることもなく食後の休憩が出来たが、一段落着いたと見える、さきほどの店主がこちらのテーブルにやってきた。スマホを触っていたBはそれに気が付くと、急いでスマホを椅子にかけてあるウィンド・ブレーカーのポケットに押し込み、立ち上がった。すると店主は「やあ、どうも久しぶりだね。その後K銀行に行くことになったと聞いているけれど・・。」と訊ねてきたが、そのイントネーションは首都圏では聞かれない独特のものであった。それに対しBは「はい、おかげさまで、どうにか入行しました。それと**君は、たしか今年が国家試験かと思いますが?」と訊ね返した「**君」とは、話の雰囲気からして、店主の息子さんのようである。すると店主は「そうそう、もうじき2月末に国家試験があるとかで、去年の年末はこっちに帰ってこなくてね、大学のある延岡の方で籠って勉強していたよ・・。まあ、上手くいけば良いけれどね・・。それと来年は下のヤツが受験でね・・これは女の子だから、出来るだけ近くの大学が良いと考えているんだけれどね・・。」といった会話をしていた。

私は方は特に話題に入ろうとはせずに、ぼんやりとテレビを観ていたが、しばらくして「じゃあ、また。」といった感じで店主がカウンターの向こうに戻ると、Bも椅子に座り、しばらくは威儀を正していたが、やがて落着き、私に「それじゃあ、もうすぐ出ようか?」と聞いてきた。私の腹も随分こなれて落着いたことから、同意する代わりに、荷物をまとめて立ち上がった。Bはそれを見て、先にレジの方に行き支払いをしようとしたらしいが、さきほどの薄い紺のエプロンの女の子に何か云われて、困ったような顔をしていた。どうやら、店主から代金を受け取らないように云われているようであった。私も財布を出して、代金を支払おうとすると、それをBが止め、そしてまたそのBの支払いを女の子が止めるという、少しおかしな状況が現出したわけであるが、奥の方から店主の声で「また、娘の進路の件で親父さんに話を聞いてもらうかもしれないから、今日の支払いは一先ずナシっちゅうことで。」と云われてBも引き下がり「それではご馳走になります。」と柱などでハッキリとは視認出来ない店主に向かって頭を下げた。私もそれに倣って頭を下げ「ありがとうございます。ごちそうになります。」と御礼を述べた。

店から外に出ると、あらためて寒さが肌を刺したが、天気は晴れており陽はさしていた。そしてまたBの軽バンに乗ると「ここからはすぐだから。」と云って発車した。コトバ通り、そこから1、2分で不動産屋の駐車場に着いた。そしてまたBを先頭に自動ドアから店舗に入ると「ああ、どうも、ハナシは聞いていますよ。後ろの方が部屋をお探しの方ですか?」と、これまた、さきと同様の独特のイントネーションで、ブラウスにベストといったオフィスの制服らしきものを着た「元気な50代」といった感じの女性が声を掛けて来た。私は「はい、そうです。どうぞよろしくお願いします。」と云ってはみたものの、それよりもBが「ええ、今回はよろしくお願いします。」と、これまで聞いたことのなかった、大きな声の郷音にて返事をするのに少し驚き、圧倒された。


女性の方は、そういった返事を聞くまでもない様子でダウン入りのベンチコートのような至極暖かそうなコートを羽織り、キーボックスから自動車の鍵を取り出し、こちらの方にやってきて、カウンターの上に置いてあったそこそこ厚いファイルを抱えて「それじゃあ、早速に見に行こうか。」と我々を促した。

おそらく店内に入ってから1分もしないうちに再度、外に出ることになったわけであるが、こうした反応の速さもまた、一つの飾らないサービスなのだろうと感じられた・・。


そして、ワゴンの社用車にて、アパートを何件か廻ることになったが、この女性スタッフは車内でも運転しながら気さくに話しかけてくれて、こちらの希望も過不足することなく自然に伝えることが出来たように思う。

何件目かの物件が、丁度市電の駅とJR線の駅が重なる、K大学病院の最寄り駅から徒歩10分程度の大学病院へのぼる坂のふもとにあるアパートであったが、このアパートの住人の殆どはK大学の医療系の学生さんとのことであり、たしかに駐車場には学生さんが好みそうな感じの自動車が何台か停まり、また、その中には、ご実家が裕福なのか、外国車も停めてあった。

また、女性スタッフは、私が進むことになった口腔保健工学科は、実習などでk大学に行くことが多くあると聞き、それで、このアパートの立地は、専門職大学のキャンパスへも市電か自転車などで通うことが出来るから、良いのではないかといった意見を述べられた。

このアパートは家賃は特別に安いわけではないが、その立地が良く、また部屋が比較的キレイで広かったことから、一番好ましく感じられた。ともあれ、少し逡巡した様子でいると、それまでは無口であいたBが横からボソッと「ああ、ここだったら良いね。」と云ったことから「分かりました。あとの候補もあるかもしれませんが。ここが良いと思います。しかし、もしも、ここに決めましたら、少なくとも3年間は住むことなると思いますので、少しだけでも家賃などをお値引きして頂けれましたら、大変ありがたいのですが・・。」と云ってみると、女性スタッフは「そうですね。でもこの物件は、とても良い場所にあって、部屋も新しくキレイなので、ほっておいても入居希望者はいらっしゃいますので・・。」といった強気な返事であった。

そこで「これは、もう値下げ交渉はダメだろう。」と観念すると、またBが「分かりました。じゃあ、他の物件を見に行きましょう。」と双方を見て云うと、スタッフの方は少し黙ってから、ファイルを開き、続いて電卓を弾いてから、おもむろに「・・じゃあ、Bさんのご紹介だから、他の人に云わないでくださいよ・・。と云って「ひと月の家賃」とのことで電卓の数字を示した。その数字は当初よりも数千円程度下がり、またキリの良い金額になっていたことから、そこで同意して、契約をすることにした。割と早い部屋探しであるものの、後になり現在となっても、それは悪くない契約であったと思われた。

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2020年11月9日月曜日

20201109【架空の話】・其の42

しばらく走ると、左前方の視界に海が見えて来た。天気は良く、わずかに日光が首都圏より強いように感じられたが、気温は決して高いというわけでもなく、それは首都圏であっても冬と云える陽気であった。

Bは運転しながら「ほら、もうすぐ桜島が見えてくるよ。」と右手でそちらの方を示した。たしかにそちらの方角に、桜島と思しき煙をあげる山が見えた。そして車はk市内に近づいて行くと、左側に海を挟んで見える桜島も徐々に大きくなっていった。

以前の編入試験の際は、そうしたことをあまり気に留める余裕はなかったが、今回は部屋探しとはいえ、そこまで緊張する用向きではないことから、周囲の景色も落ち着いて眺めることが出来、他方で不思議に感じられたのは、普段、東京で会っているBが、ここKで落着いて車を運転していることであり、これはBに云ってみようかとも思ったが、それはBにしてみれば、まさに逆の感想を持つのだろうと思われ、わざわざ口に出すことは控えておいた・・。

そうすると、おもむろにBがまた「お昼はまだ食べてないよね?」と訊ねてきた。私は「うん、まだだけれど、何処か良いお店をしっているの?」と訊ね返してみた。すると「ああ、今から行く不動産屋さんの近くに昔よく行っていたお好み焼き屋さんがあって、久しぶりにそこに行こうと思っているんだけれど、良いかな?」と再び訪ねてきた。私は「九州のKで「お好み焼き」とは、変っているけれどBが行きたいのなら、全く問題はないよ。」と返事をした。すると「分かった。じゃあ、とりあえず、そこに向かおう。」と、わずかにシート背もたれから背中を反らして運転時のストレッチのようなしぐさをした。

さきほどから車は市内に入ったようで、市電が走っているのも目に入るようになってきたが、不機嫌な感じはないものの、Bはあまり自分からは話そうとはしない様子であった。あるいはkの男は無口な人が多いと、以前聞いたことがあったが、Bも故郷に帰ると、そのようなスタンスに戻るのかもしれない・・。

そこから、しばらく走り、JR線沿いの道を走っているとBが「はら、そこのお店だよ。いやあ、良かった営業しているよ。」と話しかけてきたので、前方を見ると、たしかに昭和な感じが強い、味のある佇まいのお店が見えてきた。店舗の駐車場も隣接してあり、そこに乗って来た軽のバンを停め、ドアを開け店内に入ってみると、案の定、こうしたお店にありがちといえる「チリンチリン」というドアベルの音がした。店内は熱した鉄板があるだけに暖かく、また、昼食時に近い時間であったことから、店内は混み合うほどではないが賑わっており、我々が入った直ぐ後に、食事を終えた背広を着た3人組の男性が店から出て行った。
Bは、控えめに、少し忙しそうに動いている50代半ば頃と見える店主に軽く会釈をして、空いているテーブル席に着いた。卓上にはお好み焼き屋での定番のものが置かれ、またラミネート加工されたメニューが置いてあったが、Bは慣れたもので、それを見ずに私の方に渡し「こっちはもう決まっているから、選んでね。」とのことであった。私は数秒間メニューを眺めた後「じゃあ、Bと一緒ので注文するかな。」と云うと、Bはおもむろに手を挙げ「すいません、こっちは豚玉大にライスと味噌汁を二つでお願いします。」と口頭でオーダーをした。すると、さきの店主が「あいよ、豚玉大の定食二つ!」と返事をすると、その傍らで、薄い紺色のエプロンを着けたアルバイトと思しき女の子がメモを取ってから、こちらにグラスの水を運んで来て、手際よくテーブルの鉄板に火を入れてから戻って行った。Bは「ここは、昔よく来たのだけれど、なかなか美味しいんだ。それと、店主の息子さんが同い年で、たしか今は薬学部に通っていると聞いていたんだけれども・・。」と話し始めた。どういった繋がりか分からないが、こうした地元の附き合いがあるのは、何だか羨ましく、私が住んでいる首都圏の住宅地では、こうしたものは希薄ではなかろうかと思われた・・。

ともあれ、もう一つ驚いたのは、お好み焼きとご飯と味噌汁で定食になるということであり、こうした食文化は首都圏では、あまり見られないのではないかと思われた。しかし、それは食べられないといったほどの違和感ではなく「まあ、食文化が少し違うと、こうしたこともあるのだろうな。」といった程度のことであったと云える。

店の床は基本コンクリートの打ちっぱなしであり、一部小上がりの座敷席もあったが、そちらは既に全て占拠されていた。店内にいる面々は、半分が周辺のサラリーマン、残り半分がこれまた周辺の学生さんであるように思われたが、こうした地元密着型の昭和感の強い飲食店に女子学生も当り前のように出入りしていることは、何だかとても新鮮な感じを受け、また、以前に観た映画「がんばっていきまっしょい」内の松山市のうどん屋さんで主人公と友人が高校入学後に再会したシーンを思い出させた。

さて、そうこうしているうちに、豚玉大がこちらに運ばれてくるのが見えてきたが、ここでは、大体焼き上がったものを、鉄板上で温めつつ食べるスタイルらしく、まあ、それが失敗もなく、安定しているのだと思われた。お店の方々は少し大変であるかもしれないが・・。

そして、続けて大きめの茶碗に盛られたご飯と味噌汁が運ばれてきたが、味噌汁も何だか具だくさんであり、それだけで一つのおかずのように感じられた・・。

こうして定食一人前が目の前に揃ってみると、その量には少し驚かされた。しかし、見ていても量は減らず、ともかく食べ始めてみると、意外と入るものであり、お好み焼きに麺が入っていたら、違っていたかもしれないが、とりあえずは完食することが出来た。またBの方も同様で、完食後も落ち着いた様子で、店内設置のテレビで番組を観たり、スマホを触ったりしていた。

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2020年11月8日日曜日

20201108 ブログ記事作成の方法の変遷と、今後の抱負

今後、新規にて20記事ほど作成・投稿しますと、年内の目標である総投稿記事数1430には達することから、本日は記事を作成しないで休み、読んでいる書籍の頁を更に先に進めようと思っていましたが、PCの前に座り、SNSでの作業を行っていますと、徐々に前のめりになり、収まりがつかなくなり、そしていよいよ記事作成を行うため、動画など周囲の音を静かにします。自身の場合、記事作成の際は静寂を好み、周囲に何らかの音があると、気が散ってしまい、身を入れての記事作成が困難になる傾向があります。

そうしたことから、自身は、どちらかと云えば、深夜など人の寝静まっている静かな時間帯での記事作成をやり易く感じるのだと思われます。とはいえ、以前、ほぼ毎日記事作成を行っていた頃(2016~2017頃)は、20時過ぎに会社から戻り、夕食を摂ってから、すぐに記事作成を始め、そして、どうにか記事投稿が出来た頃には大体23時は過ぎていました。そこからシャワーを浴びて就寝に至るまでがルーティンでした。その当時、何故、そこまで記事作成の継続に注力していたのか分かりませんが、しかし、それは同時に今現在に至るまで尾を引き、現在、この記事作成にも至っているのだとも云えます・・(苦笑)。

また「その間に何らかの有意な進歩はあったのか?」と考えてみますと、イマイチよく分からず、それは今後、継続的な記事作成を止めた後になって、はじめて体感できるようになるのではないかと考えています・・(笑)。

ただ、こうした雑文的なブログ記事であれば、割合早く書くことが出来るようになったことは事実であり、何か良い記事題材の着想を得ようとして頭を抱えることは以前と変わりませんが、しかし、何かしら得た着想をとりあえず、文章にしてみるという作業は、以前と比べいくらか早くなったと云えます・・。

当ブログを始めた2015年当初、喫茶店にてノートに記事を手書きにて作成し、後刻、その記事文章をPCにて入力・投稿し、ブログを作成していました。この方法での記事作成は2016年半ば頃まで続き、それからも作風について、多少の紆余曲折を経て現在に至っていると云えますが、現在、少し気になっていることは、以前に41話まで作成した【架空の話】であり、この続きを機を見て作成したいと考えていることです。

ここ最近は、半ば惰性のように【架空の話】から離れていますが、心機一転し、このモノガタリを先に進めるためにも、ここでそのことを記しておいた方が良いと考えました。

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2020年11月7日土曜日

20201107 最近、読書の傾向にて気が付いたこと・・記憶の種類

 先日1410記事に到達し、今年中に出来るだけ1440記事の投稿まで近づけたいと考えています。そして今月11月内では、15記事程追加更新すれば、来月師走は、いくらか楽になるのではないかと思われます・・。

ともあれ、そうしますと、今月は概ね2日に1記事の追加更新を要するということになり、それはそれで大変であるように感じられます・・。また、そのように考えてみますと、明らかに現在はブログ開始当初と比べ勢いが鈍化しているとは云えます・・。とはいえ、他方では、当ブログがどうにか5年以上にわたり続いていることの方が本来、強調しても良いと思われるところもありますが、やはり、目標や希望と云うものは、先を示している方が良いと思われますので、さきの記事作成の鈍化もまた、記事を作成する自身を鼓舞するためにも注意しておいた方が良いと思われるのです・・(笑)。

そういえば、先日来の宮地正人著「幕末維新変革史」上巻は、それ以降も読み進んで、また、読んでいてタイムリーであると感じさせられる箇所が随所にあり、あるいは遠からぬ先の我が国もまた再び、こうした変革期に至るのではなかろうかと考えさせられます・・。

また、他方で最近気が付いたことは、我が国の古代史について扱った書籍を以前ほど熱心に読むことが困難になっていることであり、以前であれば、古墳について扱った書籍を読み進めていますと、記述にもよりますが、記述古墳の様子を想像することも出来ていましたが、どうしたわけか、最近はそうした頭の働きもまた、さきと同様、鈍化しているように感じられ、これはおそらく近在に記憶を想起させる元となる古墳の存在がなく、実感として掴めなくなってきているのではないかと思われます・・。

その意味で、自身の初めての西日本在住の経験となった和歌山・南紀在住期では、地域に歴史の積層の様相が自然なカタチで残っており、自然にそれらに対する興味を惹起させ、そして保持するにおいては、大変に良い環境であったと云えます。

あるいは、もっと具体的に書きますと、そうした古墳などの記憶は、それがある自然環境全般や、近在にて祀られている寺社などと近い位置に、書籍での記述があり、評するならば、野趣溢れる、あるいは感性と接続された記憶であると云え、その感性の基礎となる古墳などの存在から長らく離れていると、さきに述べたように、それらについて書かれた書籍も、以前ほど身を入れて読むことが困難になってくると云えるのかもしれません・・。

自身の希望としては、今後、装飾古墳が比較的多く存在する九州地域に、週のうち何日かを滞在出来るようにすれば、またその記憶は新たな要素と結合し、更新されると思われるため、そのようになれば良いと考えています・・。

ともあれ、現在読み進めている書籍上下巻を読了することが出来ましたら、その次は我が国の古代史について書かれたある程度ハードな新たな著作を見つけ、身を入れて読んでみようと思います。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

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