2021年6月27日日曜日

20210627 朝日新聞出版刊 松本仁一著「カラシニコフⅠ」 pp.132-134より抜粋

朝日新聞出版刊 松本仁一著「カラシニコフⅠ」

pp.132-134より抜粋

ISBN-10 ‏ : ‎ 4022615745
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4022615749

 武装勢力は「テクニカル」と呼ぶ武装車両を持っている。日本製の四輪駆動小型トラックの荷台に旧ソ連製「デシーカ」12.7ミリ重機関銃をすえつけてあり、ソマリア内戦独特のものだ。武装勢力の中では対戦車ロケット砲と並ぶ最強の兵器で、モガディシオの町をわが物顔で走り回っている。デシーカのかわりにロケット砲をすえつけたテクニカルもある。こんなもので攻撃されたら車など吹き飛んでしまう。

 ソマリアでは、テクニカルを何台持っているかが武装グループの戦力を測る基準になっている。冷戦時代の米ソのミサイル競争みたいなものだ。大きな武装グループは自前でテクニカルの製造工場を持っており、外国に「輸出」しているところもあるという。

 外国って、どこへ?ジャマルは「イエメンとコンゴだ」といった。紅海対岸のアラビア半島イエメンは、北部山岳地帯で部族同士の抗争が恒常的に続いており、人々はつねに銃を持ち歩いている。西アフリカのコンゴ[旧ザイール]はモブツ政権崩壊後、周辺諸国の支援を受けた武装勢力が力を競う状況が続いている。イエメンやコンゴに行くテクニカルは政府にではなく、そうした集団に売り渡されているらしい。

イエメンまでは海路100キロほどしかなく、小さな船で簡単に渡れる距離だが、コンゴは遠い。陸路だとケニア・ウガンダを通るか、エチオピア・スーダンを通るルートしかない。重機関銃がすえつけられて隠しようもない車を、どうやって国境を通過させるのか。「陸地で行くんじゃない。船で運ぶんだ。リビアの船が来て積んでいく」ジャマルが答えた。内戦のシエラリオネにAK47を密輸し、混乱に拍車をかけていたのはリビアだったが、ソマリアにもリビアの影があった。

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