2023年4月20日木曜日

20230419 朝日新聞出版刊 小川洋著「地方大学再生 生き残る大学の条件」pp.210-213より抜粋

朝日新聞出版刊 小川洋著「地方大学再生 生き残る大学の条件」pp.210-213より抜粋
ISBN-10 ‏ : ‎ 4022950137
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4022950130

定員管理厳格化の目的は、表面上は「地方創生」政策の一環とされ、大都市圏への学生の集中を防ぎ、地方に分散させることとされている。しかし「入学志望動向」を視る限り、上位大学から弾かれた受験生が地方まで流れている様子は見られない。地方の受験生が地元に留まる傾向と、大都市圏の受験生が通学可能範囲の中下位の私大に流れる傾向が見られる程度である。

 定員充足率を地域別に見ると、東北各県、関東周辺部(茨城・栃木群馬)、関西周辺部(滋賀・奈良・和歌山)のほか、四国の各地域で改善が見られた。関東圏と関西圏では、それぞれの都市の中心部にある有力私大を敬遠した受験生が地元に留まる傾向が生じたと考えられる。また四国では本四架橋が建設されてから関西圏や中国地方への進学者が増えていたが、難化した有力私大を敬遠して地元に留まる受験生が増えたと考えられる。

 逆に充足率が下がったのは、大規模大学が集中し定員管理厳格化の影響を真面に受けた東京都と京都府である。これらの周辺地域では定員未充足校が減った。経営破綻の危機に瀕していた弱小私大にとっては干天の慈雨になっている。

弱小私大の猶予期間
 文科省は16年4月、省内に「私立大学等の振興に関する検討会議」を設置し、翌18年に報告を受けた。そのなかで、「経営困難な状況に陥る学校法人が生ずることは避けられない」として、「合併や撤退」を促すことが必要になるとの認識を示し、いくつかの閉校のスキームも示した。その後、文科省は「教育の質」によって補助金を増減額する、あるいは地域社会と良好な関係を作っている大学に補助金を優遇するなどの方針を示し、残す大学と閉校やむなしの大学を選別する姿勢を示している。そのためには慎重かつ迅速な情報収集が必要だが、全国に500校以上ある中小規模私大の評価を1、2年で完了させることは不可能だ。定員管理厳格化は、そのための時間的猶予期間を与えることになっている。

 しかし相当数の弱小私大が破綻するのは時間の問題である。その場合、文科省が何よりも避けたいのは突然の閉校である。短大と異なり、四大の閉校には少なくとも四年かかる。それまでに運営資金が底をつけば、学生を抱えたまま閉校することになり、在学生の扱いについての厄介な問題が生ずる。卒業生の学籍簿の引き受け先も確保しなければならない。文科省としては、そのような混乱が各地で発生し、社会的な批判を受けることのない環境を用意する必要がある。

 大規模大学も含めて、いたずらに拡大を続けてきた大学の膨らみ過ぎた部分が整理されるのは、いずれにしても避けられない。では、どのように整理されていくのか、次章で検討する。

*ChatGPTによる要約に手を加えたものです☟
定員管理厳格化により、地方では受験生が地元に留まる傾向が生じたが、都市部の上位大学から弾かれた受験生が地方に流れる傾向は見られなかった。特に東京都、京都府の都市では、大規模大学が集中しており、定員管理厳格化の影響を真面に受けたが、その周辺地域では定員未充足校が減少した。これにより、地方の中小規模の私大に時間的猶予期間を与えることになった。しかし、これらはいずれ破綻するのは時間の問題であり、突然の閉校を避けるために、文科省は慎重かつ迅速な情報収集が必要だ。

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