2022年3月4日金曜日

20220304【架空の話】・其の86 【モザイクのピースとなるもの】【東京訪問篇⑥】

やがて我々は商店街の最後にまで至り、さらに、そこから続くアーケードがなくなった道をしばらく歩いてから左に曲がると、すぐに都営バスが走る比較的大きな通りに出た。

ここからさらに、道なり南方向へしばらく歩くと、目的地の医院に着くはずであるのだが、時刻の方は14:00まで未だ若干余裕があったことから、近くにあったコンビニエンス・ストアに入り、カップのホット・コーヒーを注文して店内のイート・イン・コーナーで飲むことにした。

E先生はコーヒーに対してもこだわりがあり、一人暮らしであった学生時代は、神田界隈のコーヒー専門店にて定期的に数種類の豆をローテーションで購入され、ご自宅で豆を挽き、淹れていたのことであった。それでも、こうしたコンビニエンス・ストアのコーヒーも特に文句も云わず普通に、いや、美味しそうに飲み、そしてカップを傍らに置いて「うう、少しはシャキッとしたかな・・。」と立ったままで伸びをした。

そうした様子を眺めていた私も荷物をイート・インの備え付けの椅子の上に置いて、両手を上げて伸びをした。そして、その時、偶然に目に入った壁掛け時計は丁度13:45を指していた。

また、その様子から、さきに伸びを終えていたE先生は気が付かれたのか「あ、45分か・・ここからだったら5分もかからないで医院に着くことが出来るから・・50分にここを出ましょうか、それと、他に買っておくものがなかれば、しばらくここにいて私の荷物を見ていてください。ちょっと水を買ってきます。」と言い残し、店舗のある階下に下りていった。

やがて「ああ、こっちでは「サン*リーの天然水」は南アルプスだったんだ。これも久しぶりだな・・」と云いながら、ペットボトルを片手に持って戻ってこられた。

これには私もすぐに理解出来て「ああ、そうですね。首都圏や関東地方では「南アルプスの天然水」が主流で、Kなどの九州では「阿蘇の天然水」が主流ですからね。」と返事をするとE先生は「そうそう、私も購入してから思い出しました・・。以前、こっちに住んでいた頃は、当り前に「南アルプス」でしたが・・。あと、これが関西や中四国の方に行くとまた別の水源で、たしか「六甲」の方だったかかな?」と云われたが、これは後日「奥大山」であったことが分かり、E先生に伝えると「奥大山・・ああ、鳥取の方でしたか・・。あっちの山陰の方にも、やはり良い水源があるのですね・・。」といった反応であり納得されたようであった。

さて、そうこうするうちに時刻は13:50となり、再び出立したが、今回は目的地のすぐそばということから、自然な流れで私が「かるかん」2袋を持つことになった。というのも、このような他組織への訪問の際は、若輩ながらもE先生はK医専大のいわば「正式な使節」ということになるため、その使節としての威儀を正すためであったと云えるが、こうしたことは、こちらの大学院に入学してからしばらく経って分かったが、たしかに、少なくとも、どうでもいいことではないと云えよう・・。

コンビニエンス・ストアを出てから、またしばらく通り沿いに歩くと、やがて医院名が書かれた看板が目に入り、医院前へと至った。前に立ってみると、そこは特に変わり映えのない雑居ビルのようであったが、その入っているテナントを郵便受けや掲示された看板から確認すると、そこには目的の歯科医院のほかに、1階に訪問診療も行う内科クリニックが入り、そして地下には訪問看護ステーション、そして何やらバイオ関連事業の会社が入っており、ここでも、さきの商店街にて感じた「凝集の具合」と何やら似たようなものが感じられたが、後になって思ったことは、こちら首都圏ではKと比べて、全般的に、その地価や賃料などの事情から、必然的に土地利用の仕方が効率的に、あるいは詰込むようになる傾向があるということだが、あるいは、こうしたところ(効率性の追求)にも、ある種のセンスのようなものがあり、そして、このセンスが半導体回路の設計などにおいては意外と重要であるのかもしれない・・。

ともあれ、ビル1階の正面出入口付近には、自転車で来院される患者さんのための駐輪スペースが設けられており、そこには少なくとも10台以上の自転車が停められていた。

やがて、その様子を眺めていた我々の側を、治療を終えたと見られる幼稚園児と思しき子供と、その母親がエレベーターから下りてきて、停めてあった電動アシスト自転車の後部座席に慣れた様子で子供を乗せて、通りを南方向へと去っていった。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
順天堂大学保健医療学部


一般社団法人大学支援機構


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ISBN978-4-263-46420-5

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