2021年12月31日金曜日

20211231 筑摩書房刊 ちくま新書 坂井建雄著「医学全史」-西洋から東洋・日本まで

筑摩書房刊 ちくま新書 坂井建雄著「医学全史」-西洋から東洋・日本まで
pp.254-255より抜粋
ISBN-10 ‏ : ‎ 4480073612
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4480073617


人体が病原体の二度目の感染に対して強い抵抗力をもつこと、免疫が生じることはジェンナーの種痘や、パストゥールによるワクチンの有効性からも広く知られていた。そして病原体に対する免疫がどのような仕組みで生じるのか、注目されるようになった。

 ロシア出身のメチニコフはパリのパストゥール研究所で研究中に、免疫された動物に含まれる物質がマクロファージを活性化して病原微生物を食べるようになる食作用を発見し、「感染症の免疫」(1901年)を発表して免疫の食作用説を提唱した。ドイツのベーリングはマールブルク大学の衛生学教授を務め、血清中の抗体が毒素と特異的に結合して中和することを見出してジフテリアに対する血清療法を開発した。

 エールリヒはコッホの伝染病研究所を経てフランクフルト実験治療研究所所長になり、血清療法の研究を定量的に行った。抗体産生機構について、細胞表面の側鎖すなわち受容体があり、抗原がこれと結合することで多量の受容体が産生されて抗体になるという「側鎖説」を提唱した1908年にノーベル生理学医学賞を共同受賞した。それ以後、血清中の抗体が免疫の主役として注目されるようになった。

 さまざまな抗原に対して特異的な抗体がどのように産生されるかが、解決すべき問題として残されていた。メルボルン医学研究所のフランク・マクファーレン・バーネットはウィルス性疾患について研究を行い、1940年頃から抗体産生機構について文献的な調査と研究を行った。1949年には獲得免疫寛容を説明する理論を提唱し、これにより1960年にノーベル生理学医学賞を受賞した。

 さらに「クローン選択説」を発表し(1957年)、あらゆる抗原に対して特異的に反応する抗体を作るリンパ球が先天的に用意されていて、抗原が体内に侵入するとそのリンパ球のクローンが選択されて急激に増殖し、成熟して形質細胞となって抗体を大量を産生すると提唱した。さらに1959年には「獲得免疫のクローン選択説」を著している。彼が提唱した「クローン選択説」は現在でも基本的に正しいと認められている。

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